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第7章 スキャンダルに悩む私と人気俳優の彼
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バレンタインデーは、まさに映画の公開日だったから、遼ちゃんはお仕事。当然、うちにも寄ることはない。密かに用意してたチョコレートは冷蔵庫にしまってある。すでに二週間を過ぎて、このまま、もう、来ないのかな、とか後ろ向きなことを考えてしまう。
しばらくは取材で立て込んでて、寄れないかもとは言ってたし、私も、彼のことばっかり考えてるわけにはいかない。仕事、がんばらなきゃ。短い期間だったけど、あんなに一緒にいてくれたんだから。
L〇NEは、マメにくるけど、彼に会えないのは、寂しい。「美輪」って電話で呼んでくれるけど。
――彼に会えないのは、寂しい。
頭ではわかっていても、やっぱり寂しい。
チョコレートの賞味期限はいつまでだったか。ふと、テレビで遼ちゃんの姿をみかけて、思い出した。
しばらく来れないなら食べてしまおうか。冷蔵庫とにらめっこしていた私。
「食べちゃお」
本命チョコと思って、前から気になってたメーカーのチョコレートを買ったけど、賞味期限が短めだったことに、買った後に気づいた。それでも期間内には渡せるんじゃないかって、思ってたんだけど、なんか、それも怪しい雲行き。
一人の夜は、甘い物に逃亡したくなる。太るかも、だけど。
コーヒーメーカーで、コーヒーをいれて、最近気になってる作家の本を用意して、冷蔵庫のチョコレートを取り出した。
五個入りのそれは、一つずつ色の違うコーティングされている。どの色から食べようか、悩んでいた時、玄関のチャイムが鳴った。
……こんな時間に、もしかして、と思って、確認もせずに、玄関をあけた。
「こんばんわ」
ニッと笑って挨拶する久しぶりの彼は、また少し大人になった気がする。
「……入っていい?」
「うん」
すれ違った時に、匂った香水が鼻につく。いつもの遼ちゃんの香りとは違う。
フローラルなそれは女性の香水?
「チョコレート?」
私の反応など気にせずに、テーブルの上に出していたそれに手を伸ばす遼ちゃん。
「タイミングいいというか……それ、バレンタインに買ってあったやつ。もう、賞味期限きれそうだったから、食べようと思って」
私の言葉に、ちょっと目を見張った遼ちゃん。
「じゃあ、僕、食べてもいいよね」
彼が手を伸ばしたのは、ピンクのフランボワーズ。コロンと口の中に入ってく。
「甘酸っぱいね」
優しく微笑む彼。久しぶりに会ったのに、これ以上、言葉が出てこない。顔が強張ってしまう。嬉しいはずなのに、あの匂いに、感情が揺さぶられる。
「美輪」
不思議そうな顔をして、遼ちゃんは手を伸ばして、私を捕まえようとするけど、思わず身をひいてしまう。無意識に身体が拒絶してる。
「遼ちゃん、ごめん」
「……どうして?」
悲しそうな顔をす遼ちゃんに、胸の奥がズキンッと痛む。
わかってる。私が、悪い。こんなことくらいで嫉妬をしてしまうなんて。
「ごめん、遼ちゃんの……その、香りがちょっと……」
「香り?」
自分の香りを確認して、顔をしかめる。
「ごめん。気付かなかった」
慌ててコートを脱ぐ。
「現場からそのまま来たから……たぶん、一緒にいた人の香水だと思う」
「ん、わかってる。わかってるんだけど……」
あ、やばい。目の前、ぼやけてきた。
「う、う、うぅうぅ」
「ごめん、ごめんよ」
ぎゅっと抱きしめてくれた彼の匂いは、いつもの匂い。
でも、私の涙を言葉も止められない。
「や、やだなぁ。こんな思いするの……」
「いいよ。我慢しないで」
「ご、ごめんね、ほんと、ごめん……」
「不安にさせてごめん」
私の首元に顔を近づけた遼ちゃんのひんやりとした鼻筋。確かめるようになぞられて、少しだけくすぐったさを感じる。彼の腕の中にいることで、少しずつ、私の醜い心のしこりも解けていった気がする。
そして私たちは、ひたすら抱きしめあいながら、お互いの存在を刻み込もうとしてた気がする。
しばらくは取材で立て込んでて、寄れないかもとは言ってたし、私も、彼のことばっかり考えてるわけにはいかない。仕事、がんばらなきゃ。短い期間だったけど、あんなに一緒にいてくれたんだから。
L〇NEは、マメにくるけど、彼に会えないのは、寂しい。「美輪」って電話で呼んでくれるけど。
――彼に会えないのは、寂しい。
頭ではわかっていても、やっぱり寂しい。
チョコレートの賞味期限はいつまでだったか。ふと、テレビで遼ちゃんの姿をみかけて、思い出した。
しばらく来れないなら食べてしまおうか。冷蔵庫とにらめっこしていた私。
「食べちゃお」
本命チョコと思って、前から気になってたメーカーのチョコレートを買ったけど、賞味期限が短めだったことに、買った後に気づいた。それでも期間内には渡せるんじゃないかって、思ってたんだけど、なんか、それも怪しい雲行き。
一人の夜は、甘い物に逃亡したくなる。太るかも、だけど。
コーヒーメーカーで、コーヒーをいれて、最近気になってる作家の本を用意して、冷蔵庫のチョコレートを取り出した。
五個入りのそれは、一つずつ色の違うコーティングされている。どの色から食べようか、悩んでいた時、玄関のチャイムが鳴った。
……こんな時間に、もしかして、と思って、確認もせずに、玄関をあけた。
「こんばんわ」
ニッと笑って挨拶する久しぶりの彼は、また少し大人になった気がする。
「……入っていい?」
「うん」
すれ違った時に、匂った香水が鼻につく。いつもの遼ちゃんの香りとは違う。
フローラルなそれは女性の香水?
「チョコレート?」
私の反応など気にせずに、テーブルの上に出していたそれに手を伸ばす遼ちゃん。
「タイミングいいというか……それ、バレンタインに買ってあったやつ。もう、賞味期限きれそうだったから、食べようと思って」
私の言葉に、ちょっと目を見張った遼ちゃん。
「じゃあ、僕、食べてもいいよね」
彼が手を伸ばしたのは、ピンクのフランボワーズ。コロンと口の中に入ってく。
「甘酸っぱいね」
優しく微笑む彼。久しぶりに会ったのに、これ以上、言葉が出てこない。顔が強張ってしまう。嬉しいはずなのに、あの匂いに、感情が揺さぶられる。
「美輪」
不思議そうな顔をして、遼ちゃんは手を伸ばして、私を捕まえようとするけど、思わず身をひいてしまう。無意識に身体が拒絶してる。
「遼ちゃん、ごめん」
「……どうして?」
悲しそうな顔をす遼ちゃんに、胸の奥がズキンッと痛む。
わかってる。私が、悪い。こんなことくらいで嫉妬をしてしまうなんて。
「ごめん、遼ちゃんの……その、香りがちょっと……」
「香り?」
自分の香りを確認して、顔をしかめる。
「ごめん。気付かなかった」
慌ててコートを脱ぐ。
「現場からそのまま来たから……たぶん、一緒にいた人の香水だと思う」
「ん、わかってる。わかってるんだけど……」
あ、やばい。目の前、ぼやけてきた。
「う、う、うぅうぅ」
「ごめん、ごめんよ」
ぎゅっと抱きしめてくれた彼の匂いは、いつもの匂い。
でも、私の涙を言葉も止められない。
「や、やだなぁ。こんな思いするの……」
「いいよ。我慢しないで」
「ご、ごめんね、ほんと、ごめん……」
「不安にさせてごめん」
私の首元に顔を近づけた遼ちゃんのひんやりとした鼻筋。確かめるようになぞられて、少しだけくすぐったさを感じる。彼の腕の中にいることで、少しずつ、私の醜い心のしこりも解けていった気がする。
そして私たちは、ひたすら抱きしめあいながら、お互いの存在を刻み込もうとしてた気がする。
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