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第5章 クリスマスの私と人気俳優の彼
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若干、目が座っているように見える、本城さん。もしかして、もう酔ってるあもしれない。
「あんたはどうなのよ。笠原」
「んあっ? まぁ、なんだ、ぼちぼちだよ」
目の前の干物を箸で崩しながら、本城さんの言葉を流すあたり、なんか、ありそうですね。思わず、チロリと目を向ける。
「初音さん、こっち戻ってくる気ないの?」
ほほー。本城さん、グッジョブ! そうか、笠原さんの彼女の名前は『初音さん』というのか。心の中でメモをする。大柄な笠原さんの隣に並ぶ、美女を勝手に想像する私。
「ないねぇ。あっちに腰、落ち着けるんじゃねーか。」
「そんじゃ、あんた、どうすんの? あっち行くの?」
あっちっていうのが、どこなのかは気になるけど、そこは二人の会話の邪魔をしてはいけない。耳をダンボにしながら、二人のやり取りに集中する。
「いや、今は無理。まだ、学ぶことが多すぎるし。こんな状態では、会いにも行けない」
美味しそうに解した身を頬張りながら、淡々と話す笠原さん。
いいな、いいなぁ。恋バナ。自分で話すより人の話を聞くのが楽しすぎる。
「で、神崎さんは、どうなのよ」
ニヤニヤ、ワクワクしながら二人の話を聞いてたのに、本城さんのその一言で、硬直してしまう私。
「ここ最近、首にしてるそれ、プレゼントかなんか?」
本城さんが、完全にイッてるモードになってる。こ、怖いですっ!
「おぉ? なんかつけてたのか? 気づかなかったよ」
笠原さんのとぼけた声に、強張ってた顔が、ゆるりと笑みに変わる。いいんです。気づかなくて。笠原さんの、その鈍感さに助けられてますから。
そもそも、本城さんも笠原さんも、普段の職場では、プライベートなことはほとんど話さない。こういうふうに飲みに行ったりしない限り。だから、話す機会もないし、話す必要もないから、気が楽でもあった。
「あ、兄に、もらいましたっ!」
か、彼氏のはずな遼ちゃんだけど、最近は、彼氏感がないし。きっと私なんかと付き合ってるなんてばれたらまずいだろうし。ていうか。私たち、本当につきあってるの?
再び、ブラックな弱虫な私が蠢きだしていた。
「へー。神崎って兄ちゃんいるんだ」
「あ、はい。一回り上なんですけど。」
「センスいいわね。お兄さん。彼女いるの?」
「いやぁ、大阪に転勤になってからは、よくわかりません。」
「あ、じゃあ、独身なのね。せっかくだから、私、彼女に立候補しちゃおうかしら。」
ダメですよ。坂本さんがいるじゃないですかっ! と内心叫びそうになる。
だけど、ちょっとだけ、本城さんを義姉だったらと、想像したのは、内緒だ。
「あんたはどうなのよ。笠原」
「んあっ? まぁ、なんだ、ぼちぼちだよ」
目の前の干物を箸で崩しながら、本城さんの言葉を流すあたり、なんか、ありそうですね。思わず、チロリと目を向ける。
「初音さん、こっち戻ってくる気ないの?」
ほほー。本城さん、グッジョブ! そうか、笠原さんの彼女の名前は『初音さん』というのか。心の中でメモをする。大柄な笠原さんの隣に並ぶ、美女を勝手に想像する私。
「ないねぇ。あっちに腰、落ち着けるんじゃねーか。」
「そんじゃ、あんた、どうすんの? あっち行くの?」
あっちっていうのが、どこなのかは気になるけど、そこは二人の会話の邪魔をしてはいけない。耳をダンボにしながら、二人のやり取りに集中する。
「いや、今は無理。まだ、学ぶことが多すぎるし。こんな状態では、会いにも行けない」
美味しそうに解した身を頬張りながら、淡々と話す笠原さん。
いいな、いいなぁ。恋バナ。自分で話すより人の話を聞くのが楽しすぎる。
「で、神崎さんは、どうなのよ」
ニヤニヤ、ワクワクしながら二人の話を聞いてたのに、本城さんのその一言で、硬直してしまう私。
「ここ最近、首にしてるそれ、プレゼントかなんか?」
本城さんが、完全にイッてるモードになってる。こ、怖いですっ!
「おぉ? なんかつけてたのか? 気づかなかったよ」
笠原さんのとぼけた声に、強張ってた顔が、ゆるりと笑みに変わる。いいんです。気づかなくて。笠原さんの、その鈍感さに助けられてますから。
そもそも、本城さんも笠原さんも、普段の職場では、プライベートなことはほとんど話さない。こういうふうに飲みに行ったりしない限り。だから、話す機会もないし、話す必要もないから、気が楽でもあった。
「あ、兄に、もらいましたっ!」
か、彼氏のはずな遼ちゃんだけど、最近は、彼氏感がないし。きっと私なんかと付き合ってるなんてばれたらまずいだろうし。ていうか。私たち、本当につきあってるの?
再び、ブラックな弱虫な私が蠢きだしていた。
「へー。神崎って兄ちゃんいるんだ」
「あ、はい。一回り上なんですけど。」
「センスいいわね。お兄さん。彼女いるの?」
「いやぁ、大阪に転勤になってからは、よくわかりません。」
「あ、じゃあ、独身なのね。せっかくだから、私、彼女に立候補しちゃおうかしら。」
ダメですよ。坂本さんがいるじゃないですかっ! と内心叫びそうになる。
だけど、ちょっとだけ、本城さんを義姉だったらと、想像したのは、内緒だ。
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