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第4章 日常の私と人気俳優の彼
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差し出されたそれに、目を丸くする。
「何?」
「遅くなったけど、誕生日プレゼント」
中には大き目のティアドロップ型の黄緑の石に、小さなダイアモンド? のついたネックレス。
「何がいいか迷ったんだけど……指輪はサイズがわからないし」
困った顔をしながら、私の首にかけてくれた。
「この黄緑色の石は、美輪さんの誕生石のペリドットっていうんだって。知ってた? ちゃんと僕のモノ、って首輪をつけとかなくちゃ。ふふ……うん、似合う! 僕ってセンスいいね!」
おどけた顔をしたかと思えば、悩ましげな顔。コロコロと表情が変わる。顔の筋肉、疲れないのかな、と心配になるくらい。
そして。初めて家族以外の男の人から、アクセサリーをもらった。すごくうれしいけど、なんだか、恥ずかしい。
「あ、ありがとう。」
照れくさくて、普段はしない上目遣いをしてしまった。
「……うぐっ!」
呻いたかと思ったら、再び抱き付いてくると、私の首元で小さく囁く。
「なんで、こんなにかわいいんだよ」
私の頭の中では『痘痕《あばた》も靨《えくぼ》』という言葉がかすめていく。
囁きが消えかける瞬間、遼ちゃんは優しく首にキスをした。
「り、遼ちゃん、くすぐったいよ」
身をよじって逃れようとする私。だけど、まるで蜘蛛の巣にかかった獲物のように身動きができない。甘美な匂いと、力強い腕が、離さない。
チクっと首に痛みが走る。
「い、痛っ」
「ふふ。キスマークの跡が消える前に、また会えるといいんだけどな。」
ジッと、私の首につけたキスマークを見つめながら、寂しそうにつぶやく。
「ねぇ。あいつが迎えに来るまで、抱きしめてて」
「あいつ? この前の黒い人?」
「ん、マネージャー」
「そっか」
「また、しばらく会えないから、パワー充電」
仕事がそんなに大変なんだろうか。
まるで子供のように抱き付いて離れない彼の背中を優しくポンポンとたたく。
「遼ちゃんなら、大丈夫。私、信じてるから」
遼ちゃんはビクっと肩を震わすと、また、強く抱きしめる。
「り、遼ちゃん、マジで、く、苦しい(本当に死んじゃうっ)」
「何があっても、僕だけを信じて待っててね」
サワサワと背中を摩っていた手が、徐々に下がり……私のお尻を撫で始めた。
「こ、こらっ!」
「えへへへ。いいじゃん、僕の彼女でしょ?」
「それ、理由になってないし!」
ピンポーン、という玄関のチャイムが鳴る。
「あっ」
ゆっくりと玄関のドアを開けると、ドラキュラ伯爵ならぬ遼ちゃんのマネージャーが立っていた。
「お二人とも、夜も遅いんですから、あんまり大きな声を出さないように。」
無表情に言う彼には、有無を言わせぬ空気。
「さぁ、遼くん」
「わかってる。美輪さん、またね」
彼の目つきは、先ほどの弱々しさはなく、ただ前だけを見ているように見えた。
「何?」
「遅くなったけど、誕生日プレゼント」
中には大き目のティアドロップ型の黄緑の石に、小さなダイアモンド? のついたネックレス。
「何がいいか迷ったんだけど……指輪はサイズがわからないし」
困った顔をしながら、私の首にかけてくれた。
「この黄緑色の石は、美輪さんの誕生石のペリドットっていうんだって。知ってた? ちゃんと僕のモノ、って首輪をつけとかなくちゃ。ふふ……うん、似合う! 僕ってセンスいいね!」
おどけた顔をしたかと思えば、悩ましげな顔。コロコロと表情が変わる。顔の筋肉、疲れないのかな、と心配になるくらい。
そして。初めて家族以外の男の人から、アクセサリーをもらった。すごくうれしいけど、なんだか、恥ずかしい。
「あ、ありがとう。」
照れくさくて、普段はしない上目遣いをしてしまった。
「……うぐっ!」
呻いたかと思ったら、再び抱き付いてくると、私の首元で小さく囁く。
「なんで、こんなにかわいいんだよ」
私の頭の中では『痘痕《あばた》も靨《えくぼ》』という言葉がかすめていく。
囁きが消えかける瞬間、遼ちゃんは優しく首にキスをした。
「り、遼ちゃん、くすぐったいよ」
身をよじって逃れようとする私。だけど、まるで蜘蛛の巣にかかった獲物のように身動きができない。甘美な匂いと、力強い腕が、離さない。
チクっと首に痛みが走る。
「い、痛っ」
「ふふ。キスマークの跡が消える前に、また会えるといいんだけどな。」
ジッと、私の首につけたキスマークを見つめながら、寂しそうにつぶやく。
「ねぇ。あいつが迎えに来るまで、抱きしめてて」
「あいつ? この前の黒い人?」
「ん、マネージャー」
「そっか」
「また、しばらく会えないから、パワー充電」
仕事がそんなに大変なんだろうか。
まるで子供のように抱き付いて離れない彼の背中を優しくポンポンとたたく。
「遼ちゃんなら、大丈夫。私、信じてるから」
遼ちゃんはビクっと肩を震わすと、また、強く抱きしめる。
「り、遼ちゃん、マジで、く、苦しい(本当に死んじゃうっ)」
「何があっても、僕だけを信じて待っててね」
サワサワと背中を摩っていた手が、徐々に下がり……私のお尻を撫で始めた。
「こ、こらっ!」
「えへへへ。いいじゃん、僕の彼女でしょ?」
「それ、理由になってないし!」
ピンポーン、という玄関のチャイムが鳴る。
「あっ」
ゆっくりと玄関のドアを開けると、ドラキュラ伯爵ならぬ遼ちゃんのマネージャーが立っていた。
「お二人とも、夜も遅いんですから、あんまり大きな声を出さないように。」
無表情に言う彼には、有無を言わせぬ空気。
「さぁ、遼くん」
「わかってる。美輪さん、またね」
彼の目つきは、先ほどの弱々しさはなく、ただ前だけを見ているように見えた。
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