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第3章 夏休みの私と人気俳優の彼
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思わず、お互いに飛ぶように離れた。
背後に黒々とたたずむ大きな影。兄ちゃん、怖いからっ。
その後ろには、ニヤニヤした一馬。
「に、兄ちゃんっ」
あたふたした私をよそに、遼ちゃんは颯爽と立ち上がった。
「は、はじめまして。坂本 遼です」
き、切り替え早くない?
「……ん? 坂本 遼?」
眉間にシワを寄せる兄ちゃん。怖いよ、怖い。でかいだけでも十分怖いのに。
「あああ、あのおデブちゃんかっ」
その一言は、意外にも遼ちゃんのプライドを傷つけた模様で、血の気のひいた顔してる。
「くくく、遼ちゃん、おデブちゃんだって」
一馬は、意地悪そうな顔して笑ってる。
「てか、全然別人、ん? でも、なんか、どっかで見たことある顔だなぁ」
「吾郎兄、俳優の相模 遼って知ってる?」
「ん、ああ、なんかCMかなんかで……って。んぐぁっ!? まさか?」
「そ。そのまさか。」
一馬はずーっとニヤニヤしっぱなし。
私は兄ちゃんの顔を見られず、下を向きっぱなし。
遼ちゃんは……遼ちゃんは、真っ青な顔してるけど、兄ちゃんに正面切って向かい合ってる。
「で、お前ら、つきあってんの?」
人気俳優の『相模 遼』という衝撃から、なんとか復活した兄ちゃん。
兄ちゃんは、私たちの会話は聞いてなかったみたい。
「今、了解もらったとこです」
「ふ……む」
腕組して、見下ろす兄ちゃん。
「ちょっと、あっちで話そう。」
ちらっと私を見た後に、顎だけで、場所を指示した兄ちゃんに、素直に従う遼ちゃん。
「こ、こえぇぇ。俺だったら、絶対嫌だ。」
お前が、連れてきたんじゃないかぁぁぁっ! という心の声はが届いたのか、睨みつける私に、
「だ、だって……面白そうじゃないっ?」
最後には、にへらにへらと笑う一馬。他人事だと思って。ため息しか出てこない。
ふと、離れていった二人の姿を目で追う。
まるで、悪いことが見つかった生徒と、それを注意してる先生、みたい。遼ちゃんは、けして、背が低いわけじゃないけど、兄ちゃんと比べると、ほっそりとして小さく見える。
ジリジリと、二人が話終わるのを待つ私たち。
「一馬、帰るぞっ!」
唐突に声をかけてきた兄ちゃんに、
「えぇ? もう終わり~? もうちょっと、ガッと殴るとか、そういう修羅場を期待してたのになぁ」
ぶつぶついいながら、一馬は兄ちゃんを追いかけていった。
そんな一馬とすれ違いながら戻ってきた遼ちゃんは、何も言わず、私の隣に座った。
「兄ちゃん、なんだって?」
顔を覗き込む。
「お前に、美輪が守れるのか?、て言われた。」
守る?
遼ちゃんの困ったような笑顔。
「僕は、俳優だから。いろいろ……ね。そういうのに、一般人の美輪さんが巻き込まれてしまうことが心配みたいだよ。」
「……」
「今までもそうだけど、実際、会える時間って少ないと思うんだ。残念ながら」
遠い眼差しで寂し気に前を見つめる遼ちゃん。
「それに。僕が何もやましいことしてなくても、美輪さんが誤解をするようなことがあって、傷つくかもしれない」
ふと、昼間の情報番組とかの芸能ニュースでの報道を思い出す。でも、今一つ、自分のことになるという現実味がまったくわかない。
「でもね。美輪さん」
隣にいる私の目を見る遼ちゃん。
「僕、美輪さんを諦めたくないんだ。やっと会えたんだもの」
彼の右手が、私の頬をなでる。こんなに暑いのに、指先はひどく冷たい。
「正直、守ってあげられる自信はない。今の僕には。それでも、僕のそばにいてほしいんだ」
「まるで、プロポーズみたいだね」
遼ちゃんがあまりに真剣すぎて、真剣になるべきなのだろうけど、なぜか笑ってしまう。
「そう思ってくれても構わない」
表情も変えずに応える遼ちゃん。私の方が、まさか、と思う。だって、結婚とか考えるような年でもないじゃない。
「何言ってるのよ。兄ちゃんに何か言われたから?」
「それもある。僕は、それぐらいの覚悟しなきゃいけないって思った」
「遼ちゃん、まだニ十一歳でしょ。早いって、そこまで考えるのは」
思わず、ため息。
「それに。私、今、仕事楽しいし。そして、これからどんな出会いがあるかわからない。私にも、遼ちゃんにも」
見上げた夜空は、住宅地の灯りで星も見えない。
「まずは、つきあうだけ、つきあってみようか……私、初彼氏が、遼ちゃんなのは、普通にうれしいし」
ニヤッと笑いながら言うと、嬉しそうな顔をする遼ちゃん。もう……どんどんはまっちゃうじゃない。遼ちゃんに。
遼ちゃんは優しく抱きしめてくれた。
そして、耳元で囁く。
「じゃあ、バージン、ちょうだっ……げふっ」
遼ちゃんのお腹にストライクっ!
せっかくのいい雰囲気に、何言ってくれてんのっ! ベンチに倒れ込んだ彼を置いて、家に戻る私なのであった。
背後に黒々とたたずむ大きな影。兄ちゃん、怖いからっ。
その後ろには、ニヤニヤした一馬。
「に、兄ちゃんっ」
あたふたした私をよそに、遼ちゃんは颯爽と立ち上がった。
「は、はじめまして。坂本 遼です」
き、切り替え早くない?
「……ん? 坂本 遼?」
眉間にシワを寄せる兄ちゃん。怖いよ、怖い。でかいだけでも十分怖いのに。
「あああ、あのおデブちゃんかっ」
その一言は、意外にも遼ちゃんのプライドを傷つけた模様で、血の気のひいた顔してる。
「くくく、遼ちゃん、おデブちゃんだって」
一馬は、意地悪そうな顔して笑ってる。
「てか、全然別人、ん? でも、なんか、どっかで見たことある顔だなぁ」
「吾郎兄、俳優の相模 遼って知ってる?」
「ん、ああ、なんかCMかなんかで……って。んぐぁっ!? まさか?」
「そ。そのまさか。」
一馬はずーっとニヤニヤしっぱなし。
私は兄ちゃんの顔を見られず、下を向きっぱなし。
遼ちゃんは……遼ちゃんは、真っ青な顔してるけど、兄ちゃんに正面切って向かい合ってる。
「で、お前ら、つきあってんの?」
人気俳優の『相模 遼』という衝撃から、なんとか復活した兄ちゃん。
兄ちゃんは、私たちの会話は聞いてなかったみたい。
「今、了解もらったとこです」
「ふ……む」
腕組して、見下ろす兄ちゃん。
「ちょっと、あっちで話そう。」
ちらっと私を見た後に、顎だけで、場所を指示した兄ちゃんに、素直に従う遼ちゃん。
「こ、こえぇぇ。俺だったら、絶対嫌だ。」
お前が、連れてきたんじゃないかぁぁぁっ! という心の声はが届いたのか、睨みつける私に、
「だ、だって……面白そうじゃないっ?」
最後には、にへらにへらと笑う一馬。他人事だと思って。ため息しか出てこない。
ふと、離れていった二人の姿を目で追う。
まるで、悪いことが見つかった生徒と、それを注意してる先生、みたい。遼ちゃんは、けして、背が低いわけじゃないけど、兄ちゃんと比べると、ほっそりとして小さく見える。
ジリジリと、二人が話終わるのを待つ私たち。
「一馬、帰るぞっ!」
唐突に声をかけてきた兄ちゃんに、
「えぇ? もう終わり~? もうちょっと、ガッと殴るとか、そういう修羅場を期待してたのになぁ」
ぶつぶついいながら、一馬は兄ちゃんを追いかけていった。
そんな一馬とすれ違いながら戻ってきた遼ちゃんは、何も言わず、私の隣に座った。
「兄ちゃん、なんだって?」
顔を覗き込む。
「お前に、美輪が守れるのか?、て言われた。」
守る?
遼ちゃんの困ったような笑顔。
「僕は、俳優だから。いろいろ……ね。そういうのに、一般人の美輪さんが巻き込まれてしまうことが心配みたいだよ。」
「……」
「今までもそうだけど、実際、会える時間って少ないと思うんだ。残念ながら」
遠い眼差しで寂し気に前を見つめる遼ちゃん。
「それに。僕が何もやましいことしてなくても、美輪さんが誤解をするようなことがあって、傷つくかもしれない」
ふと、昼間の情報番組とかの芸能ニュースでの報道を思い出す。でも、今一つ、自分のことになるという現実味がまったくわかない。
「でもね。美輪さん」
隣にいる私の目を見る遼ちゃん。
「僕、美輪さんを諦めたくないんだ。やっと会えたんだもの」
彼の右手が、私の頬をなでる。こんなに暑いのに、指先はひどく冷たい。
「正直、守ってあげられる自信はない。今の僕には。それでも、僕のそばにいてほしいんだ」
「まるで、プロポーズみたいだね」
遼ちゃんがあまりに真剣すぎて、真剣になるべきなのだろうけど、なぜか笑ってしまう。
「そう思ってくれても構わない」
表情も変えずに応える遼ちゃん。私の方が、まさか、と思う。だって、結婚とか考えるような年でもないじゃない。
「何言ってるのよ。兄ちゃんに何か言われたから?」
「それもある。僕は、それぐらいの覚悟しなきゃいけないって思った」
「遼ちゃん、まだニ十一歳でしょ。早いって、そこまで考えるのは」
思わず、ため息。
「それに。私、今、仕事楽しいし。そして、これからどんな出会いがあるかわからない。私にも、遼ちゃんにも」
見上げた夜空は、住宅地の灯りで星も見えない。
「まずは、つきあうだけ、つきあってみようか……私、初彼氏が、遼ちゃんなのは、普通にうれしいし」
ニヤッと笑いながら言うと、嬉しそうな顔をする遼ちゃん。もう……どんどんはまっちゃうじゃない。遼ちゃんに。
遼ちゃんは優しく抱きしめてくれた。
そして、耳元で囁く。
「じゃあ、バージン、ちょうだっ……げふっ」
遼ちゃんのお腹にストライクっ!
せっかくのいい雰囲気に、何言ってくれてんのっ! ベンチに倒れ込んだ彼を置いて、家に戻る私なのであった。
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