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第3章 夏休みの私と人気俳優の彼

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 大きく深呼吸してスマホの電源をいれる。
 L〇NEのマークにメッセージの着信があるのがわかる。

 ……なんで今日だけで二十通なんよ。いや、確かにほとんどあけなかったし、きっとオフィシャルアカウントがたくさんアップされたのかもしれない。

 ……って。八割が遼ちゃん。

 なんで今日に限って、と、ため息をつきながらチェックする。ほとんどが『どこにいる?』の居場所確認。で最後のメッセージが。

『今、美輪さんの実家の前』

 な、なんでっ!? って、もう一時間も前なんですけどっ。
 慌てて、スマホを握って外に飛び出した。

「あっ」

 慌てて声がしたほうに顔を向けると、ほっとしたような顔の遼ちゃんが立っていた。

「り、遼ちゃん。」

 極上の笑顔で近寄ってきた。

「ごめん、今さっき見た」
「ん、既読ついたの見た」
「てか、なんで、いんのよ」
「一馬くんから連絡きたから」

 あいつは、遼ちゃんのスパイか、と思ったらゲッソリする。

「だったら、チャイム鳴らせばいいじゃん。」
「えっと、僕、美輪さんの家にあがったことないし」

 あー。そういえば、子供のころ、よく一緒に遊んでたけど、いつも一馬の家か、近所の公園だった。

「んー、ごめん」
「ふふふ、いいよ」

なんだろうな、優しい笑顔が眩しい。もう夜なんだけど。

「今日は、仕事は?」
「ああ、昼間のうちに終わったよ。少し、話せる?」
「ここで?」
「あの公園まで行こうか」

 遼ちゃんが言っている公園は、家から歩いて五分程のところにある。

「ん。一馬にL〇NEしとく」

 メッセージを送り終えて、私たちは二人で公園へと向かう。手をつなぐでもなく。でも、のばせば届く距離。ずっとずっと、このままだといいな、と思った。
 公園の電灯の下のベンチは、すでに高校生くらいの先客がいたので、私たちは、少し薄暗い藤棚の下のベンチに座った。
 しばらく互いに無言のまま。

 すごくドキドキして、顔があげられない。何を言われるのか、わからなくて。
変なこと期待して、バカみたいって思ってる自分。

「美輪さん」
「なに?」

 遼ちゃんの優しい声に、やっぱり、顔があげられない。

「僕のことちゃんと見て。」

 ゆっくりと顔をあげてみると、ちょうど電灯の逆光で遼ちゃんの表情が見えない。
 遼ちゃん、今、どんな顔してる?
 私は、たぶん、顔が真っ赤だと思う。

「美輪さん、この前の返事、もらいたくて……ちゃんと、面と向かって言ってほしくて」

 腹をくくったような声。遼ちゃんでも、こんな声出すんだ。
 だめだな。私。押しまくられてる。初めて、ここまで言われたことが嬉しすぎて、浮足立ってる。冷静になれてないかも。
 でも、正直でありたい。

「り、遼ちゃん」

 熱い視線だけ感じて、ドキドキが止まらない。二人だけの世界って、こういうことをいうのかな。

「わ、私も遼ちゃん、好きだよ。で、でも」
「でも?」

 優しく問いかける王子様。

「私でいいの?」
「美輪さんがいいの」

 諭すようにそう言うと、遼ちゃんは私を優しく抱き寄せた。
 ……幸せすぎて、周りが見えてなかった。

「で、誰、こいつ」

 げっ。
 超不機嫌な兄の声が聞こえた。
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