上 下
18 / 95
第2章 新入社員の私に人気俳優の彼

18

しおりを挟む
 会社の近くにある稲庭うどんを食べさせてくれるお店。久しぶりにゆっくりお昼が食べられるとあって、いつもはなかなか行けないこの店に先輩二人が連れて来てくれた。



「本社のほうで、広報室の社内報の取材にわざわざ来てくれてたんだって」



 たまたま広報室に知り合いがいる本城さんが教えてくれた。



「へぇ。最近、うちだけじゃなくて、よく見るよな。CMとか。」



 ずるずるずる……。

 何も言えず、二人の会話に聞き耳をたてる。



「で、ついでにCMの撮影で面識のできた宣伝部の部長のところにも挨拶に来てくれたんだって。」

「暇なのかね?」



 ぶっ。

 思わず、吹き出してしまう。



「お、おい、大丈夫かよ?」

「そこ吹き出すとこ?」



 慌てて二人ともが紙ナプキンを取り合って、私に渡そうとする。



「す、すみません。」

「あはは。いやぁ、だってさ、わざわざ宣伝のとこまでCMの出演者が来るなんて、俺、ここの部署に来て初めて見たぜ?」

「まぁね。私も初めて見たけど。新創刊だったからかなぁ。一番最初のCMってインパクトあると、記憶に残るしね。」



 たぶん、そうだと思いたい。いや、きっとそうだ。

 私に会いに来たなんて、ありえない変な期待をしちゃいけない。

 バカを見るだけだ。



「神崎さん、食べないの?のびちゃうよ?」



 不思議そうな顔をして、私の顔をのぞきこむ本城さん。



「あ、すみません。さっきの彼を思い出してました。貴重な目の保養。」

「はっはっは。それじゃあ、ちゃんと見せてやればよかったなぁ。」

「そうですよ、あんなイケメン、めったに遭遇しないんですからっ!」



 軽く笠原さんの肩をたたく。

 そう、めったに会えないんだから。内心、そう思ったら、胸がチクリ小さく痛む。



「しばらくは、あの二人のカップルで表紙を飾るみたい。宣伝部情報だけど。CMも何パターンか作ってるから、そのうち、見られるんじゃない?」

「そうなんですか。綺麗でしたものね。兵頭乃蒼さん」



 そうは言ったものの、正直、嫌だな。何度もみたくない。

 でも、とっても綺麗だった。たぶん、目の前で見たほうが、もっと綺麗なんだろう。



「この前のはウェディングドレスだったけど、今度は白無垢とか着たの、見てみたいなぁ。あの子、絶対似合うと思うんだけどなぁ」



 私が想像するのは遼ちゃんの羽織袴。

 似合うだろうなぁ。



「ほら、箸止まってるぞ」

「あ、はい」



 ずるずるずるずる、と勢いよくうどんをすする。



「私も、いつか着られるのかなぁ、ウェディングドレス」



 ぼそっと本城さんがつぶやいた。

 本城さんの男性関係は、よくわからない。というか、仕事以外の話をしたことがない。仕事一筋なのかな、と、単純に思ってた。



「なんだよ、自信なさげだなぁ」

「自分に自信のない女子は、そんなもんなんです。ね、神崎さん」



 え、そこで私にふります?

 ってか、実際そうだけど。



「うぐっ、は、はい……」

「はっはっは。お前らなら大丈夫だよ、なんとかなるって」



 豪快に笑いとばす笠原さん。その自信はどこにあるんだろうか。

 私は、疑問に思いながらも、うどんの汁をすすった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...