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第1章 幼馴染が王子様になってました
08
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翌日の講義はまったく耳に入ってこなかった。ランチのこと考えたら、緊張しちゃって、先生の話に集中できなかったんだもの。
お店に着いてみると、ちょうどランチタイムのピークが過ぎたのか、空席が目立つ。
きょろきょろと店内を見渡していると、マナーモードのスマホが揺れた。
『奥の席にいるよ』
遼ちゃんからのメッセージ。
見上げると、奥のほうで片手をあげて、おいでおいでしてる遼ちゃんを発見。サングラスしかしてない。パスタが美味しいってクチコミで見てたけど、店内は女性客ばっかり。こんなところで、私なんかとランチして大丈夫? と思ったけど、私じゃ、逆に何とも思われないか、と苦笑いが浮かぶ。
「遅れてゴメン」
「いいよ、僕もついさっき来たところだから」
サングラスをはずし、台本らしきものを鞄にしまいながら、にっこり笑った。
ううう、ダメだよ、そういう王子様スマイル。
「ここ、パスタも美味しいんだけど、僕、ここのスイーツが好きでさ。」
キラキラした目でメニューをめくりながら、どれがおすすめか説明してくれた。こんなところで、美味しいものが大好きな昔の遼ちゃんを発見。思わず、笑みがこぼれる。
「ん? 何? 僕、なんか変?」
訝し気に私を見る。
「いやぁ、なんか、懐かしい遼ちゃんを思い出させてもらったんで」
「僕、基本、変わってないと思うけど。外見以外は。」
「そうだね。ほんと、王子様になっちゃったねぇ」
しみじみ言うと。
「ふふふ。がんばったもの。誰かさんが、王子様に迎えに来てもらうんだ! っていうから」
……はい?
「まぁ、迎えに行くのは、予定よりはちょっと早かったけど。」
……はい?
「……わかってる?」
完全に固まりました。御冗談でしょ、王子様?
「あ、これ、おすすめね。デザートは……これ。」
遼ちゃんがどんどんメニューを決めていくのに、呆然としてる私。何いってるの、この人。
「おーい。美輪さーん。生きてる?」
はっ、として気が付くと目の前には、クリームたっぷりのカルボナーラ。
「好きだったでしょ? カルボナーラ」
「……う、うん」
相変わらず呆然としてたけど、食い意地がまさって、自然と口に運んでしまってた。うん、美味しい。
それからは、黙々とパスタと格闘。美味しくてフォークが止まらない。美味しいものを食べると、ついつい、笑顔になってくる。
そんな私を、眩しげに見ている遼ちゃんに気付く。
「……美味しいよ?」
「うん。知ってる。」
ふいに、遼ちゃんが手を伸ばしてきた。
なに? と思って身をひこうとしたけど、遼ちゃんのほうが早かった。
口元についたクリームを親指でなぞり、クリームをなめた。
「ふふ。やっぱり、美輪さんの口元、美味しい」
……妖艶王子め。
「か、揶揄わないでよ。」
顔をひきつりながら、身をひくと、ニヤっと笑いながら、じっと口元を見る遼ちゃん。
「うううううう……あんまり意地悪言うと、一馬に言いつけるよ」
「うわ、それは勘弁」
普段の遼ちゃんが戻ってきた。こういうのを見ると、やっぱり役者さんなんだな、と思う。
「でも……『迎えにきた』のは本気」
目を大きく見開いて遼ちゃんを見た。これは、演技?
クスっと笑った遼ちゃん。
「ようやく会えたんだもの。時間はいくらでもあるし。美輪さん、僕のこと、考えて」
私、夢見てるの? 揶揄われてる? 全然わかんない。
呆然とする私を、遼ちゃんは相変わらず眩しげに見ている。
「覚悟してね」
ニヤリと笑うその顔は、意地悪にみえて、それでもやっぱり王子様なんだな、ってつくづく思った。
お店に着いてみると、ちょうどランチタイムのピークが過ぎたのか、空席が目立つ。
きょろきょろと店内を見渡していると、マナーモードのスマホが揺れた。
『奥の席にいるよ』
遼ちゃんからのメッセージ。
見上げると、奥のほうで片手をあげて、おいでおいでしてる遼ちゃんを発見。サングラスしかしてない。パスタが美味しいってクチコミで見てたけど、店内は女性客ばっかり。こんなところで、私なんかとランチして大丈夫? と思ったけど、私じゃ、逆に何とも思われないか、と苦笑いが浮かぶ。
「遅れてゴメン」
「いいよ、僕もついさっき来たところだから」
サングラスをはずし、台本らしきものを鞄にしまいながら、にっこり笑った。
ううう、ダメだよ、そういう王子様スマイル。
「ここ、パスタも美味しいんだけど、僕、ここのスイーツが好きでさ。」
キラキラした目でメニューをめくりながら、どれがおすすめか説明してくれた。こんなところで、美味しいものが大好きな昔の遼ちゃんを発見。思わず、笑みがこぼれる。
「ん? 何? 僕、なんか変?」
訝し気に私を見る。
「いやぁ、なんか、懐かしい遼ちゃんを思い出させてもらったんで」
「僕、基本、変わってないと思うけど。外見以外は。」
「そうだね。ほんと、王子様になっちゃったねぇ」
しみじみ言うと。
「ふふふ。がんばったもの。誰かさんが、王子様に迎えに来てもらうんだ! っていうから」
……はい?
「まぁ、迎えに行くのは、予定よりはちょっと早かったけど。」
……はい?
「……わかってる?」
完全に固まりました。御冗談でしょ、王子様?
「あ、これ、おすすめね。デザートは……これ。」
遼ちゃんがどんどんメニューを決めていくのに、呆然としてる私。何いってるの、この人。
「おーい。美輪さーん。生きてる?」
はっ、として気が付くと目の前には、クリームたっぷりのカルボナーラ。
「好きだったでしょ? カルボナーラ」
「……う、うん」
相変わらず呆然としてたけど、食い意地がまさって、自然と口に運んでしまってた。うん、美味しい。
それからは、黙々とパスタと格闘。美味しくてフォークが止まらない。美味しいものを食べると、ついつい、笑顔になってくる。
そんな私を、眩しげに見ている遼ちゃんに気付く。
「……美味しいよ?」
「うん。知ってる。」
ふいに、遼ちゃんが手を伸ばしてきた。
なに? と思って身をひこうとしたけど、遼ちゃんのほうが早かった。
口元についたクリームを親指でなぞり、クリームをなめた。
「ふふ。やっぱり、美輪さんの口元、美味しい」
……妖艶王子め。
「か、揶揄わないでよ。」
顔をひきつりながら、身をひくと、ニヤっと笑いながら、じっと口元を見る遼ちゃん。
「うううううう……あんまり意地悪言うと、一馬に言いつけるよ」
「うわ、それは勘弁」
普段の遼ちゃんが戻ってきた。こういうのを見ると、やっぱり役者さんなんだな、と思う。
「でも……『迎えにきた』のは本気」
目を大きく見開いて遼ちゃんを見た。これは、演技?
クスっと笑った遼ちゃん。
「ようやく会えたんだもの。時間はいくらでもあるし。美輪さん、僕のこと、考えて」
私、夢見てるの? 揶揄われてる? 全然わかんない。
呆然とする私を、遼ちゃんは相変わらず眩しげに見ている。
「覚悟してね」
ニヤリと笑うその顔は、意地悪にみえて、それでもやっぱり王子様なんだな、ってつくづく思った。
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