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第10章
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衛兵の反応を疑問に思いながら、俺は再びアーロンに抱えられて街の中に入っていく。
「どういうこと?」
こっそりと、アーロンに聞くと、しっ、と言われて大人しくする。
アーロンは、大きな商店みたいなところに入っていく。いきなり、なんで? と思ったら。
「アーロン様!?」
「久しぶりだな、ジョイソン」
どうもここはノドルドン商会の支店だったらしい。
人族っぽい中年男性が、アーロンの姿に驚いている。
「久しぶりも何も、もう何年ぶり、くらいじゃないですか……って、まさか、そのお子さんは、アーロン様のっ!?」
「違うっ!」
アーロン、そんなに大きな声で否定するな。
余計に視線が集まるじゃないかっ!
「ったく、ちょっと、奥の部屋を使わせてもらってもいいか?」
「はいはい、奥様の弟様ですから、ご遠慮なく」
「それが余計だっていうの」
ニヤニヤ笑っている中年男性をよそに、俺たちは応接室みたいな所に入っていく。アーロンは見知った場所なのだろう、迷いがない。
アーロンが俺をソファに座らせると、俺のフードをとった。
「うーん」
「どうしたんだ? そういや、あの衛兵の態度もおかしかったけど」
「うん、あのなぁ」
アーロンは、首を捻りながら、もう一度、ジッと俺の顔を見る。
「さっきフードを無理やりとられた時に見えた、ハルの顔なんだが……酷い火傷のような傷があったように見えたんだよ」
「え?」
「それに目立つはずの耳も、尖ってなくてだな……あ、今は問題ないんだが」
どういうことだ? と俺も考え込んでいると、ドアがノックされた。
慌ててフードを被った俺。それを確認したうえで、アーロンが「入っていいぞ」と声をかけた。
「すみませんね。お茶をお持ちしました」
先ほどの中年男性、ジョイソンさんがメイドさんを連れて入ってきた。
「いや、気にするな。こっちこそ、忙しい時に邪魔して申し訳ない」
「とんでもない。アーロン様でしたら、いつだって大歓迎です」
「そう言って、護衛の仕事でもさせようっていうんだろう?」
「あははは、バレましたか」
随分と気安い雰囲気に、俺は二人の顔を見比べてしまう。
そんな俺たちの前に、ティーカップが置かれる。
「ああ、用があれば呼ぶから、出てくれるか」
ジョイソンさんの言葉に、メイドさんはにこりと笑って出ていった。
「さてと……アーロン様」
「なんだ」
「奥様より伝言です」
「姉さんが? なんだっていうんだ」
「エルフの子供を、早く連れてこい、と」
そう言ってジョイソンさんは、先ほどまでとは別人のように、感情のない眼差しで俺を見てきた。俺は思わず、アーロンにしがみついてしまう。
「それは……本当に姉さんの言葉か」
アーロンじゃなくたって、疑問に思うだろう。
なんで、遠くカイドンにいるとかいうアーロンのお姉さんが、俺のこと、それもエルフだってこともわかるんだ。
「はい、アルム神様にかけて」
「……そいつは、ジョイソンにしては随分と本気だな」
「そもそも、奥様の言葉には、それだけの重みがありますから」
信じていいのか、俺には判断がつかないから、俺はアーロンを見上げるしかない。
「子供のエルフの探索依頼が、国内の冒険者ギルドに出されています。それと同時に、ヘリウス様がある冒険者ギルドで大暴れしたそうです」
「あ」
へリウスならやりそう。
しかし、随分と情報が早いな。
「その時預けていた子供が攫われたとのことで、それに連なっての、ギルドからの子供のエルフ捜索につながったのかと」
「なんで、俺がその子供を連れてると?」
「ウルトガ王家の『救援の玉』を受け取ったのですよね? そうなったら、考えずとも」
「あー、はいはい。わかった、わかった」
アーロンが参ったなっていう顔をして、俺の方を見た。
「ジョイソンだったら、大丈夫だ。こいつは、姉さんの腹心だからな」
「……アーロンが言うなら」
俺は自分のフードを外して、ジョイソンさんに顔を見せると、ジョイソンさんは、大きく目を見開いて、息まで止めてしまったようだ。
「……なるほど。これほど可愛らしいエルフのお子さんでしたら、狙われてもおかしくはないですね」
ジョイソンさんは、大きく息を吐き出して、困ったような顔でそう言った。
「どういうこと?」
こっそりと、アーロンに聞くと、しっ、と言われて大人しくする。
アーロンは、大きな商店みたいなところに入っていく。いきなり、なんで? と思ったら。
「アーロン様!?」
「久しぶりだな、ジョイソン」
どうもここはノドルドン商会の支店だったらしい。
人族っぽい中年男性が、アーロンの姿に驚いている。
「久しぶりも何も、もう何年ぶり、くらいじゃないですか……って、まさか、そのお子さんは、アーロン様のっ!?」
「違うっ!」
アーロン、そんなに大きな声で否定するな。
余計に視線が集まるじゃないかっ!
「ったく、ちょっと、奥の部屋を使わせてもらってもいいか?」
「はいはい、奥様の弟様ですから、ご遠慮なく」
「それが余計だっていうの」
ニヤニヤ笑っている中年男性をよそに、俺たちは応接室みたいな所に入っていく。アーロンは見知った場所なのだろう、迷いがない。
アーロンが俺をソファに座らせると、俺のフードをとった。
「うーん」
「どうしたんだ? そういや、あの衛兵の態度もおかしかったけど」
「うん、あのなぁ」
アーロンは、首を捻りながら、もう一度、ジッと俺の顔を見る。
「さっきフードを無理やりとられた時に見えた、ハルの顔なんだが……酷い火傷のような傷があったように見えたんだよ」
「え?」
「それに目立つはずの耳も、尖ってなくてだな……あ、今は問題ないんだが」
どういうことだ? と俺も考え込んでいると、ドアがノックされた。
慌ててフードを被った俺。それを確認したうえで、アーロンが「入っていいぞ」と声をかけた。
「すみませんね。お茶をお持ちしました」
先ほどの中年男性、ジョイソンさんがメイドさんを連れて入ってきた。
「いや、気にするな。こっちこそ、忙しい時に邪魔して申し訳ない」
「とんでもない。アーロン様でしたら、いつだって大歓迎です」
「そう言って、護衛の仕事でもさせようっていうんだろう?」
「あははは、バレましたか」
随分と気安い雰囲気に、俺は二人の顔を見比べてしまう。
そんな俺たちの前に、ティーカップが置かれる。
「ああ、用があれば呼ぶから、出てくれるか」
ジョイソンさんの言葉に、メイドさんはにこりと笑って出ていった。
「さてと……アーロン様」
「なんだ」
「奥様より伝言です」
「姉さんが? なんだっていうんだ」
「エルフの子供を、早く連れてこい、と」
そう言ってジョイソンさんは、先ほどまでとは別人のように、感情のない眼差しで俺を見てきた。俺は思わず、アーロンにしがみついてしまう。
「それは……本当に姉さんの言葉か」
アーロンじゃなくたって、疑問に思うだろう。
なんで、遠くカイドンにいるとかいうアーロンのお姉さんが、俺のこと、それもエルフだってこともわかるんだ。
「はい、アルム神様にかけて」
「……そいつは、ジョイソンにしては随分と本気だな」
「そもそも、奥様の言葉には、それだけの重みがありますから」
信じていいのか、俺には判断がつかないから、俺はアーロンを見上げるしかない。
「子供のエルフの探索依頼が、国内の冒険者ギルドに出されています。それと同時に、ヘリウス様がある冒険者ギルドで大暴れしたそうです」
「あ」
へリウスならやりそう。
しかし、随分と情報が早いな。
「その時預けていた子供が攫われたとのことで、それに連なっての、ギルドからの子供のエルフ捜索につながったのかと」
「なんで、俺がその子供を連れてると?」
「ウルトガ王家の『救援の玉』を受け取ったのですよね? そうなったら、考えずとも」
「あー、はいはい。わかった、わかった」
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「……アーロンが言うなら」
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「……なるほど。これほど可愛らしいエルフのお子さんでしたら、狙われてもおかしくはないですね」
ジョイソンさんは、大きく息を吐き出して、困ったような顔でそう言った。
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