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第10章

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 翌日には、再びアーロンに抱えられて旅の空、である。
 下手な乗合馬車なんかよりも早いのだから、当然か。若干、抱えられてるので、安定感はないんだけど。

「お、よし、街が見えてきたな」

 相変わらず余裕のアーロンに、俺のほうも慣れてきた。
 大きな街のせいもあって、中に入るのに並ぶ必要があるらしい。馬車の脇に、歩きの旅人たちが並ぶ。俺たちもその後ろに並んで待つ。さすがに、ここでは下ろしてもらう。

「なんか、ずいぶん時間かかってるな」
「どうもいつも以上に検問に時間かけてるようだぞ」
 
 アーロンの独り言に、先に前に並んでいたおじさんが答えてくれた。

「犯罪者でも探してるんですかね」
「かもなぁ」

 もしかして、例のエルフのことだろうか。
 冒険者ギルドだけではなく、国とか街単位でも捜索が始まったってことなのだろう。
 その後も30分近く待たされて、ようやく門までやってきた。
 今回もアーロンのギルドカードで入れるかと思ったのだけれど、若い衛兵に俺の方が止められた。

「そちらのお子さんは」
「知り合いから預かってるんだが」
「お知り合いですか……一応、そのフード、とってもらえるかな」

 最初はアーロンのAランクのギルドカードに目を輝かせてた衛兵だったけれど、俺の方に向けた目には、なんだか嫌な感じしかしない。
 俺はフードをぎゅっと手で押さえ込んで、アーロンの背後に隠れる。

「嫌がっているから、止めてやってくれないか」

 アーロンがなんでもないような感じで、注意するが、衛兵の方は「規則ですので」とか言いだした。

「は? 規則? こんな子供相手に?」
「ええ。今、どこの街でも、子供であっても顔の確認をさせてるんです」
「何のために」
「今、冒険者ギルドで探している子供がいるんですよ」

 その言葉にドキッとする。

「まさか、それを調べるために、こんな列になってるのか? それは冒険者ギルドの仕事だろう?」
「でも、見つけたなら誰でもが報奨金を貰えますからね」

 あっさりと言う若い衛兵に、アーロンも渋い顔になる。反対側の列の対応をしている中年の衛兵も同じなんだろう。じろじろと俺の方を見ている。

 ――最悪だ。

 アーロンの後ろに隠れていた俺を、また別の衛兵が脇から出てきて捕まえようとする。

「い、嫌だっ」

 掴まってたまるかっ!
 俺はフードを掴んだまま、クルクルとアーロンの足元を逃げ回る。

「おい、落ち着け。すぐに済むんだから」

 そう声をかけてくるのは追いかけまわしている衛兵だったが、なかなか俺を捕まえられない。そんな様子をアーロンはニヤニヤ笑いながら見ている。

「ア、アーロンさん、ちょっと、あなたの連れている子供なんですから、言ううこと聞かせてくださいっ」
「いやぁ、あいつは俺の言うこともまともにきかないからなぁ」

 何言ってるんだ、コイツ。
 ムカッとしながらも、あちこち逃げまくる。しかし、さすがに、俺だって疲れるわけで。

「くそっ、捕まえたぞっ! おらっ、フードを取れっ!」

 思い切りフードを取られてしまった。

「あ」
「おっ」

 衛兵たちは、がっかりした顔。アーロンは、ちょっと驚いている。周囲の他の旅人たちは、いい加減にしろって感じな顔になっている。

「す、すまんな」

 そして、そっとフードを戻してくれた。
 ……何が起こっている?
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