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第9章
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それからは早かった。
俺を腕に抱えたまま地面に着地したかと思ったら、気が付けば町の門まで来ていた。
たぶん宿屋にいた怪しい奴らは、気付いてもいないだろう。
「随分と、遅い時間だな」
「ああ、妙な奴らに追われてるんだ」
そう言って、ギルドカードを見せると、衛兵のおじさんが大きく目を見開く。
「あんたを襲おうなんて、どこの馬鹿だ?」
「ほんとだよ。さすがに、こんな夜遅くじゃ住人に迷惑だろう? だから相手にせずに、逃げることにしたのさ」
「そりゃぁ、正しい判断だ。やられた奴らの始末も面倒だしな。ほれ、こっちの通用口から出てくれ」
「悪いな。これで、仕事終わりにでも酒でも飲んでくれ」
チャリンと音をたてて、衛兵のおじさんの手に銀貨が何枚か渡される。
「おっと、いいのかい。ありがとさん」
「おじさん、ありがと!」
「お、おお!」
にっこり笑ってそう言ったら、衛兵のおじさんがだらしない顔になった。
「……お前、やるな」
「……」
とりあえず、俺は笑顔を貼りつけて無言を貫く。
自分らしくないことはわかってても、ちょっとした抑制力になったなら、何よりだ。
移動しながら、なんであんな深夜に門を出入りできたのか、アーロンに聞いた。
実際は、中に入ることはできないらしい。外に出ていくのは身分証明がはっきりしている相手であれば問題ないんだとか。ただし、あの小さい通用口だけなので、馬や大きな馬車だと外には出られないのだとか。
それを聞いて少しだけホッとする。
アーロンは、へリウス同様、狼獣人だけのことはある。へリウスの移動速度もかなりのもんだったと思うが、アーロンも早い。軍馬みたいなのでもなければ追いつかないだろう。
それに、街道沿いに魔物も多く出るらしいのだが、俺たちを襲うような魔物でアーロンのスピードについてこれるようなヤツがいない。狼系の魔物は、むしろ恐れてでもいるかのように、近寄っても来なかった。
「日が昇るころには、新しい町に着くはずだ。そこで一度、仮眠をとろう」
「うん……ありがとうな」
「何言ってやがる」
正直、俺みたいな足手まといがいなければ、もっと早くに移動できたはずだ。
いや、それ以前に俺がいなければ。
「おい、なんか変なこと考えてねーだろうな」
前を向いたまま、アーロンが強い声で言った。
「いいか。狼獣人は一度懐に入れた者は、必ず守り抜く。けして見捨てないんだ」
それが狼獣人の矜持でもあるのだという。
「大丈夫だ。俺が絶対、へリウス様に会える時まで、ちゃんと守ってやる」
アーロンの言葉に、なんか、ちょっとうるっときてしまう。
俺は誤魔化すようにアーロンの首にしがみついた。
俺を腕に抱えたまま地面に着地したかと思ったら、気が付けば町の門まで来ていた。
たぶん宿屋にいた怪しい奴らは、気付いてもいないだろう。
「随分と、遅い時間だな」
「ああ、妙な奴らに追われてるんだ」
そう言って、ギルドカードを見せると、衛兵のおじさんが大きく目を見開く。
「あんたを襲おうなんて、どこの馬鹿だ?」
「ほんとだよ。さすがに、こんな夜遅くじゃ住人に迷惑だろう? だから相手にせずに、逃げることにしたのさ」
「そりゃぁ、正しい判断だ。やられた奴らの始末も面倒だしな。ほれ、こっちの通用口から出てくれ」
「悪いな。これで、仕事終わりにでも酒でも飲んでくれ」
チャリンと音をたてて、衛兵のおじさんの手に銀貨が何枚か渡される。
「おっと、いいのかい。ありがとさん」
「おじさん、ありがと!」
「お、おお!」
にっこり笑ってそう言ったら、衛兵のおじさんがだらしない顔になった。
「……お前、やるな」
「……」
とりあえず、俺は笑顔を貼りつけて無言を貫く。
自分らしくないことはわかってても、ちょっとした抑制力になったなら、何よりだ。
移動しながら、なんであんな深夜に門を出入りできたのか、アーロンに聞いた。
実際は、中に入ることはできないらしい。外に出ていくのは身分証明がはっきりしている相手であれば問題ないんだとか。ただし、あの小さい通用口だけなので、馬や大きな馬車だと外には出られないのだとか。
それを聞いて少しだけホッとする。
アーロンは、へリウス同様、狼獣人だけのことはある。へリウスの移動速度もかなりのもんだったと思うが、アーロンも早い。軍馬みたいなのでもなければ追いつかないだろう。
それに、街道沿いに魔物も多く出るらしいのだが、俺たちを襲うような魔物でアーロンのスピードについてこれるようなヤツがいない。狼系の魔物は、むしろ恐れてでもいるかのように、近寄っても来なかった。
「日が昇るころには、新しい町に着くはずだ。そこで一度、仮眠をとろう」
「うん……ありがとうな」
「何言ってやがる」
正直、俺みたいな足手まといがいなければ、もっと早くに移動できたはずだ。
いや、それ以前に俺がいなければ。
「おい、なんか変なこと考えてねーだろうな」
前を向いたまま、アーロンが強い声で言った。
「いいか。狼獣人は一度懐に入れた者は、必ず守り抜く。けして見捨てないんだ」
それが狼獣人の矜持でもあるのだという。
「大丈夫だ。俺が絶対、へリウス様に会える時まで、ちゃんと守ってやる」
アーロンの言葉に、なんか、ちょっとうるっときてしまう。
俺は誤魔化すようにアーロンの首にしがみついた。
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