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第9章

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 夜にもう一度、アーロンはギルドに連絡が来ていないか確認をしにいった。しかし、予想通り、へリウスからの連絡はない。
 俺たちはそれを見越して、新たな伝言を残すことにした。

 ――港町カイドンに向かう。連絡先は、ノドルドン商会まで。

 このノドルドン商会というのは、この大陸でも有名な商家らしく、アーロンの姉が嫁に入っているところだ。アーロンとその姉の間では連絡がついているらしく、むしろギルドなんかよりも、よっぽど信用があるらしい。そして、ノドルドン商会を敵に回すと、ヤバいらしい。

「そんじゃ、明日はさっさとこの町を出るぞ」
「おー」

 すでに眠い俺は、ふにゃふにゃとなりながらも、手をあげて返事をした。

「フフッ、まったく、小生意気なこと言うくせに、ほんとちびっ子だよなぁ」

 なんかアーロンが言ってた気がしたけれど、ちゃんと聞き取れないうちに眠りに落ちた。



「ふがっ!?」
「悪いっ」

 突然、誰かに抱きかかえられた。

「な、なんだ!?」

 寝ぼけている俺は、ジタバタとする。

「俺だ、俺」
「オレオレオ詐欺かっ!?」
「なんだそりゃ、アーロンだってば」
「……は?」

 こそこそと声を抑えて話してくるのは、やっぱりアーロン。なぜか、すでに着替えも終えてバッグも背負っている。
 落ち着いて、周囲を見れば、泊っている宿の部屋だ。びっくりした。

「どうしたんだ」
「なんか、下の階に嫌な気配のする奴らが来ている」

 俺には全然わかんないんだけど、アーロンが言うのならそうなのかもしれない。フッと視線を感じて見回すと、エアーが渋い顔で頷いている。もう、確定だ。

「俺が何度かギルドに行ってへリウス様に伝言を頼んでたのと、子連れだったってのが伝わったのかもな」
「え、これ、ギルドの奴らなの?」
「いや、ギルド職員の中にこいつらと繋がっているヤツらがいるんだろ」

 どこにでも癒着とかっていうのはあるんだな。なんだか、嫌になる。

「この程度の人数だったら、俺でもなんとかなるだろうが、魔術師がいたらやべえ」
「そうなの?」
「ああ、俺たち獣人は、あんまり得意じゃねぇんだよ。その魔術絡みでの攻撃も防御も」

 そうなのか?
 へリウスのことを思い返すと、確かに、生活魔法の類はあっても、戦闘中に魔術を使っている姿を見た記憶はない。

「てことで、逃げるに限る」
「お、おお」

 宿泊費は前払いしているので、さっさと部屋を出る。ドアではなく、窓から。

「おっと。今日は月が隠れてたか。助かった」

 すでに深夜も遅い。町の灯りはほとんどない。
 宿の前の通りには、当然、人通りもない。

「よし、声出すなよ」

 アーロンの言葉に、俺は素直に頷く。
 ニヤリと笑ったアーロンは、俺を抱きかかえたまま、3階の窓から飛び降りたのだった。
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