73 / 95
第9章
68
しおりを挟む
夜にもう一度、アーロンはギルドに連絡が来ていないか確認をしにいった。しかし、予想通り、へリウスからの連絡はない。
俺たちはそれを見越して、新たな伝言を残すことにした。
――港町カイドンに向かう。連絡先は、ノドルドン商会まで。
このノドルドン商会というのは、この大陸でも有名な商家らしく、アーロンの姉が嫁に入っているところだ。アーロンとその姉の間では連絡がついているらしく、むしろギルドなんかよりも、よっぽど信用があるらしい。そして、ノドルドン商会を敵に回すと、ヤバいらしい。
「そんじゃ、明日はさっさとこの町を出るぞ」
「おー」
すでに眠い俺は、ふにゃふにゃとなりながらも、手をあげて返事をした。
「フフッ、まったく、小生意気なこと言うくせに、ほんとちびっ子だよなぁ」
なんかアーロンが言ってた気がしたけれど、ちゃんと聞き取れないうちに眠りに落ちた。
「ふがっ!?」
「悪いっ」
突然、誰かに抱きかかえられた。
「な、なんだ!?」
寝ぼけている俺は、ジタバタとする。
「俺だ、俺」
「オレオレオ詐欺かっ!?」
「なんだそりゃ、アーロンだってば」
「……は?」
こそこそと声を抑えて話してくるのは、やっぱりアーロン。なぜか、すでに着替えも終えてバッグも背負っている。
落ち着いて、周囲を見れば、泊っている宿の部屋だ。びっくりした。
「どうしたんだ」
「なんか、下の階に嫌な気配のする奴らが来ている」
俺には全然わかんないんだけど、アーロンが言うのならそうなのかもしれない。フッと視線を感じて見回すと、エアーが渋い顔で頷いている。もう、確定だ。
「俺が何度かギルドに行ってへリウス様に伝言を頼んでたのと、子連れだったってのが伝わったのかもな」
「え、これ、ギルドの奴らなの?」
「いや、ギルド職員の中にこいつらと繋がっているヤツらがいるんだろ」
どこにでも癒着とかっていうのはあるんだな。なんだか、嫌になる。
「この程度の人数だったら、俺でもなんとかなるだろうが、魔術師がいたらやべえ」
「そうなの?」
「ああ、俺たち獣人は、あんまり得意じゃねぇんだよ。その魔術絡みでの攻撃も防御も」
そうなのか?
へリウスのことを思い返すと、確かに、生活魔法の類はあっても、戦闘中に魔術を使っている姿を見た記憶はない。
「てことで、逃げるに限る」
「お、おお」
宿泊費は前払いしているので、さっさと部屋を出る。ドアではなく、窓から。
「おっと。今日は月が隠れてたか。助かった」
すでに深夜も遅い。町の灯りはほとんどない。
宿の前の通りには、当然、人通りもない。
「よし、声出すなよ」
アーロンの言葉に、俺は素直に頷く。
ニヤリと笑ったアーロンは、俺を抱きかかえたまま、3階の窓から飛び降りたのだった。
俺たちはそれを見越して、新たな伝言を残すことにした。
――港町カイドンに向かう。連絡先は、ノドルドン商会まで。
このノドルドン商会というのは、この大陸でも有名な商家らしく、アーロンの姉が嫁に入っているところだ。アーロンとその姉の間では連絡がついているらしく、むしろギルドなんかよりも、よっぽど信用があるらしい。そして、ノドルドン商会を敵に回すと、ヤバいらしい。
「そんじゃ、明日はさっさとこの町を出るぞ」
「おー」
すでに眠い俺は、ふにゃふにゃとなりながらも、手をあげて返事をした。
「フフッ、まったく、小生意気なこと言うくせに、ほんとちびっ子だよなぁ」
なんかアーロンが言ってた気がしたけれど、ちゃんと聞き取れないうちに眠りに落ちた。
「ふがっ!?」
「悪いっ」
突然、誰かに抱きかかえられた。
「な、なんだ!?」
寝ぼけている俺は、ジタバタとする。
「俺だ、俺」
「オレオレオ詐欺かっ!?」
「なんだそりゃ、アーロンだってば」
「……は?」
こそこそと声を抑えて話してくるのは、やっぱりアーロン。なぜか、すでに着替えも終えてバッグも背負っている。
落ち着いて、周囲を見れば、泊っている宿の部屋だ。びっくりした。
「どうしたんだ」
「なんか、下の階に嫌な気配のする奴らが来ている」
俺には全然わかんないんだけど、アーロンが言うのならそうなのかもしれない。フッと視線を感じて見回すと、エアーが渋い顔で頷いている。もう、確定だ。
「俺が何度かギルドに行ってへリウス様に伝言を頼んでたのと、子連れだったってのが伝わったのかもな」
「え、これ、ギルドの奴らなの?」
「いや、ギルド職員の中にこいつらと繋がっているヤツらがいるんだろ」
どこにでも癒着とかっていうのはあるんだな。なんだか、嫌になる。
「この程度の人数だったら、俺でもなんとかなるだろうが、魔術師がいたらやべえ」
「そうなの?」
「ああ、俺たち獣人は、あんまり得意じゃねぇんだよ。その魔術絡みでの攻撃も防御も」
そうなのか?
へリウスのことを思い返すと、確かに、生活魔法の類はあっても、戦闘中に魔術を使っている姿を見た記憶はない。
「てことで、逃げるに限る」
「お、おお」
宿泊費は前払いしているので、さっさと部屋を出る。ドアではなく、窓から。
「おっと。今日は月が隠れてたか。助かった」
すでに深夜も遅い。町の灯りはほとんどない。
宿の前の通りには、当然、人通りもない。
「よし、声出すなよ」
アーロンの言葉に、俺は素直に頷く。
ニヤリと笑ったアーロンは、俺を抱きかかえたまま、3階の窓から飛び降りたのだった。
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。
karashima_s
ファンタジー
地球にダンジョンが出来て10年。
その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。
ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。
ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。
当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。
運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。
新田 蓮(あらた れん)もその一人である。
高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。
そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。
ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。
必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。
落ちた。
落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。
落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。
「XXXサバイバルセットが使用されました…。」
そして落ちた所が…。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる