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第9章

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 俺が目を覚ました時、アーロンはまだ戻ってきていなかった。
 ぐりぐりと瞼をこする。
 
『起きたか』
「うん。アーロンは?」
『一度戻ってきて、また出てったぞ』
「そっか」

 ベッドから下りて、椅子をズルズルと引っ張って窓際へと持っていく。俺の背丈じゃ、窓の外が見えないからだ。
 なんとか椅子にのぼって、ようやっと外の景色が見える。すっかり日が落ちているにも関わらず、街灯のせいか、思ったよりも明るい。

「……けっこう人通りが多いんだな」

 俺たちの部屋は、だいぶ高いところにあったらしい。日本でいう3階くらいだろうか。

「さすがにここから逃げるとなると、難しいな」
『逃げるの?』
「いや、まずはアーロンの話を聞いてからかな」
「そりゃいい判断だ」

 いきなり部屋のドアが開いて、アーロンが会話に参加してきた。
  獣人の聴力、ハンパねえな。

「……おかえり」
「おう。一応、飯貰ってきたぞ」

 彼の手には大きな木の皿に、パンと肉の塊とふかした芋のようなものが載っていた。ちょっと、見た目5才児の俺には量が多すぎる気がするんだけど。
 椅子から下りて、その椅子を引きずろうとしたら、先にテーブルに皿を置いたアーロンが持ってくれた。

「ありがと」
「さぁ、食え。食いながら聞け」

 アーロンはもう下で食べてきたらしい。
 肉が硬い。かぶりついても嚙み切れない。そんな俺を見かねたのか、アーロンが自分のナイフで細かい塊にしてくれた。

「どうも」
「おう……さてと」

 アーロンが長い足を組みなおし、見下ろしてくる。
 くそっ、でけーな、コイツ、羨ましいぞ。

「ギルドには一応、頼んできたぞ。すぐに伝わるかどうかは、わからんがな」
「……なんて伝言したの」
「ハルを預かっているってことと、今いる町に明後日まで滞在することかな」
「……明後日」
「ああ。お前を探している連中が、ここまで来れるとして、それぐらいがギリギリだろう」

 俺が隠れている間に見つけられたのはアーロンだけ。ということは、あいつらの仲間には獣人が含まれていないのだろう。
 アーロンが俺を抱えて走ってくれたものの、奴らのアジトからどれくらい離れたのかわからないからな。

「その後は、港町のカイドンに向かうことにする」
「うん。あっちの大陸に向かうって話だったからね」
「だったら、向かう方向は一緒のはずだからな」

 明後日までにヘリウスと合流できればいいけれど、その可能性は低い。それでも、港町まで行って、そこで待っていれば出会える可能性は増えるはずだ。

「へリウス様のことだ、なんとか合流してくれるだろ」
「……そう願うよ」

 アーロンは俺の頭をぐりぐりっと撫でると、食べ物がきれいになくなった皿を手に、部屋を出ていった。

           + + + + + + + +

更新再開します。
不定期更新になりますので、のんびりお待ちいただければ、と思います ^^;;;
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