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第8章

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「お、おいっ!?」

 目が覚めると、そう叫びながら俺は天井の方へと手を伸ばしていた。

「……なんだったんだ、アレは……そもそも、出戻りって何だよ、それに、ミサエって誰だよ?」

 ゆっくりと身体を起こしてみるが、なんだかフラフラする。
 落ち着いて周りに目を向けると、ここはギルマスの部屋ではないようだ。どこかの薄暗い小部屋……いや、倉庫みたいな所か。古びた木箱がいくつか積み上げられている。少し埃っぽい。おかげで、服は埃まみれ。
 そんな場所で、床に直置きとか、子供にすることじゃないだろう。ちょっとだけ、ムカッとする。この状況は誘拐されたのだろうか。

 ――紐で縛られてないだけ、マシか。

 外からの音は聞こえてこない。いったい、ここはどこなんだ。
 俺は立ち上がると、周りを確認していく。窓は高いところにしかな。その窓から入ってくる光からも、まだ、外は明るい時間なのだろう。木の箱を登って、どうこうできる感じでもない。

「まいったな」
『マイッタナ?』
「え」

 いきなり聞こえてきたのは、子供みたいな声。

「誰かいるのか?」
『ダレカイルノカ?』
「……真似するな」
『マネスルナ』

 そう答えてから、クスクスと笑う声が聞こえて、俺は幽霊か、とビビっていると、目の前に、野球ボールくらいの大きさの緑色の光の玉が現れた。それがふよふよと浮かんでいる。

「……なんじゃこりゃ」
『ナンンジャコリャ』

 こいつがしゃべってたのか!
 それから、夢の中であのオネエが言ってた言葉を思い出した。

「もしかして……これが精霊?」

 俺の言葉に、今度は何も言わずに、勢いよく上下に動き出した。

「お、おお……なるほど……って、お前、何か出来るのかよ」

 どうみてもただの光の玉にしか見えず、話せても、俺の言葉を繰り返すだけ。下手な家庭用のAIロボットよりも会話が成り立ってない。意味あるのか? なんて思ってたら。

 ズドーンッ

 光の玉から、いきなり何かがドアに向かって発射したかと思ったら、思い切り破壊されてた。びっくりして、俺は固まった。
 そんな俺の目の前で、緑の玉は、嬉しそうに? ぴょこぴょこ動いている。

「なんだっ! 何が起こった!」

 どこからか男の怒鳴り声が聞こえてきたことで、ハッとした。慌ててローブのフードをかぶり、木箱と木箱の間に出来た小さな隙間に隠れる。光の玉は、もれなく俺の頭の上だ。

「うお、なんだ、これ。ちょ……おいっ! チビが逃げたっ!」

 知らない男が、廊下の先に怒鳴っている。慌てているせいか、中をまともに探すこともしない。結構、お馬鹿か。後からやってきた男も同様だったようだ。

「くそっ、チビでもエルフはエルフってことかっ」
「何やってんだよっ、せっかくギルドからかっぱらってきたのにっ」
「そんなことより、さっさと探せっ」

 そう言うと男たちは部屋から離れていく。

「……なるほど」

 ギルド主体でやりやがったか、と思ってたんだけど。俺が意識を失っている間に、連れ去られたってことなんだろうか。どれくらい時間が経っているのかがわからないし、へリウスは気付いているんだろうか。

「くそっ、こういう時に、救援に来てくれる封筒があればよかったのに」

 そうは言っても、未だに、それに反応した者が現れたわけではない。近くに助けてくれる者がいなければ無意味だ。

「透明にでもなれれば、奴らに見つからないんだろうけど」

 そうポツリと呟いたら、頭上にいたはずの緑の光の玉が、目の前に降りてきた。

「そうは言っても、無理なものは無理か。とにかく、ここから逃げ出さないと」

 隙間からずるずると抜け出して見ると。

「……おいおいおい。なんだよ、この数は」

 いつの間にか、部屋の上の方に、すごい数の光の玉が浮かんでいた。
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