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第7章
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ズン、ズ……ズン、ズン
頭を抱えながら、体育座りしている俺の身体に伝わる振動。
――絶対、大きい魔物だ。
音がまったく聞こえないかわりに、地面を通じて、激しい戦いが行われているのが伝わってくる。無音なのに、この振動が俺に恐怖を植え付ける。
今までで見た魔物の中で一番大きいのは、ワイバーンだった。
自分に襲い掛かってきたわけではなかったけれど、あれは、恐かった。
今、へリウスが戦っている相手が、どんな相手なのか、恐くてテントから出て見る勇気がない。
ズズンッ
地震に似た揺れに、身体が強張る。
ズン、ズン
それが、何度も、何度も繰り返され……どれだけ経ったかわからない。
ズズズンッ
ひときわ大きな振動が伝わり、揺れが止まった。
俺は一人、へリウスが戻ってくるのを待っている。
でも、いつまで経っても戻ってこない。
すっかりテントの中は真っ暗。
まだ、テントから出ては駄目なのか?
早く、早く、戻って来てくれっ!
涙をこらえながら、グッと両手で身体を抱きしめる。
まだ?
まだ?
ポロリと涙が零れた瞬間。
「ハルッ、無事か……」
テントの入口に、青い何かの体液まみれになったへリウスが、頭をのぞかせた。
「へ、へリウスッ!」
俺は泣きながら、へリウスに抱きつく。びちゃびちゃに汚れるのも気にせず、しがみつく。俺の体も、青くなってるのも気にする余裕もない。
「へリウス、へリウス、よ、よかった、よかったよぉっ」
「クッ、ハ、ハル、ちょっと、離れろっ」
「えっ……あ、ああっ!」
必死過ぎて、気づかなかった。
へリウスの脇腹から、彼の赤い血が流れていた。すでに、足元にも血だまりができている。
「ご、ごめんっ、薬、薬はっ」
「鞄の、中……」
「へリウスッ!? うわっ」
そのまま倒れこんでしまって、俺は彼の下敷きになる。
「悪い……ちょっと、休むわ……」
「むぅ……ふんっ」
なんとか抜け出して見れば、肝心のへリウスは足先だけ外に出した状態のまま。
「いや、ちょっと、駄目だよ、まずいって!」
俺は慌てて肩を揺らすけど、目を閉じたまま。
テントの外へと顔を出してみると、外は、すっかり真っ暗だ。
「結界は、まだ生きてるね。足は、ギリギリ入ってる」
へリウスの言っていた鞄はテントの奥に置いてある。俺は暗がりの中、鞄を漁ってポーションを探す。へリウスの持ってるマジックバックの中じゃなくて、よかった。へリウスのは、本人しか取り出せないようになってる高級品だって、聞いてたのだ。
とりあえず、傷周辺を水筒の水で流す。痛みで目を覚ますかと思ったけど反応はない。息はしてるから、大丈夫か。タオル替わりの布切れで傷口を抑えるけど、血が滲むのは止まらない。
「もう、このままぶっかけるか」
仕方なしにポーションをかけると、じゅわじゅわと泡立ちながら白い煙があがる。飲む時には気付かなかったけど、傷にかけるとツンッと鼻につく臭いがする。でも、見事に傷が塞がっていく不思議。
「くそっ、本当は、俺がクリーンが使えればいいんだろうけど」
キレイな布はもうない。生臭いのを我慢しながら、血で汚れた布で、できるだけ青い体液を拭う。中途半端にしか拭えないのは、もう諦めるしかない。
でも、このままの状態でいいわけがない。
「これ使えば、誰か助けに来てくれるか……ダメ元でやるっきゃないか」
へリウスに渡された小さな封筒。
俺は、その封筒の封を開けた。
頭を抱えながら、体育座りしている俺の身体に伝わる振動。
――絶対、大きい魔物だ。
音がまったく聞こえないかわりに、地面を通じて、激しい戦いが行われているのが伝わってくる。無音なのに、この振動が俺に恐怖を植え付ける。
今までで見た魔物の中で一番大きいのは、ワイバーンだった。
自分に襲い掛かってきたわけではなかったけれど、あれは、恐かった。
今、へリウスが戦っている相手が、どんな相手なのか、恐くてテントから出て見る勇気がない。
ズズンッ
地震に似た揺れに、身体が強張る。
ズン、ズン
それが、何度も、何度も繰り返され……どれだけ経ったかわからない。
ズズズンッ
ひときわ大きな振動が伝わり、揺れが止まった。
俺は一人、へリウスが戻ってくるのを待っている。
でも、いつまで経っても戻ってこない。
すっかりテントの中は真っ暗。
まだ、テントから出ては駄目なのか?
早く、早く、戻って来てくれっ!
涙をこらえながら、グッと両手で身体を抱きしめる。
まだ?
まだ?
ポロリと涙が零れた瞬間。
「ハルッ、無事か……」
テントの入口に、青い何かの体液まみれになったへリウスが、頭をのぞかせた。
「へ、へリウスッ!」
俺は泣きながら、へリウスに抱きつく。びちゃびちゃに汚れるのも気にせず、しがみつく。俺の体も、青くなってるのも気にする余裕もない。
「へリウス、へリウス、よ、よかった、よかったよぉっ」
「クッ、ハ、ハル、ちょっと、離れろっ」
「えっ……あ、ああっ!」
必死過ぎて、気づかなかった。
へリウスの脇腹から、彼の赤い血が流れていた。すでに、足元にも血だまりができている。
「ご、ごめんっ、薬、薬はっ」
「鞄の、中……」
「へリウスッ!? うわっ」
そのまま倒れこんでしまって、俺は彼の下敷きになる。
「悪い……ちょっと、休むわ……」
「むぅ……ふんっ」
なんとか抜け出して見れば、肝心のへリウスは足先だけ外に出した状態のまま。
「いや、ちょっと、駄目だよ、まずいって!」
俺は慌てて肩を揺らすけど、目を閉じたまま。
テントの外へと顔を出してみると、外は、すっかり真っ暗だ。
「結界は、まだ生きてるね。足は、ギリギリ入ってる」
へリウスの言っていた鞄はテントの奥に置いてある。俺は暗がりの中、鞄を漁ってポーションを探す。へリウスの持ってるマジックバックの中じゃなくて、よかった。へリウスのは、本人しか取り出せないようになってる高級品だって、聞いてたのだ。
とりあえず、傷周辺を水筒の水で流す。痛みで目を覚ますかと思ったけど反応はない。息はしてるから、大丈夫か。タオル替わりの布切れで傷口を抑えるけど、血が滲むのは止まらない。
「もう、このままぶっかけるか」
仕方なしにポーションをかけると、じゅわじゅわと泡立ちながら白い煙があがる。飲む時には気付かなかったけど、傷にかけるとツンッと鼻につく臭いがする。でも、見事に傷が塞がっていく不思議。
「くそっ、本当は、俺がクリーンが使えればいいんだろうけど」
キレイな布はもうない。生臭いのを我慢しながら、血で汚れた布で、できるだけ青い体液を拭う。中途半端にしか拭えないのは、もう諦めるしかない。
でも、このままの状態でいいわけがない。
「これ使えば、誰か助けに来てくれるか……ダメ元でやるっきゃないか」
へリウスに渡された小さな封筒。
俺は、その封筒の封を開けた。
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