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第6章

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 へリウスの鋭い眼差しに、ガクガクと震えだすおばさん。
 周囲にいた一般人も顔が青ざめている。

「悪いが、うちの子に触れないでもらえるか」
「は、はひっ!」

 返事の声が裏返ってるし。怖すぎて、後ろのおじさんに倒れこんでるし。
 まぁ、ちょっと本気で殺気を飛ばしたら、一般人なら腰を抜かしてもおかしくはない。というか、それ以前なのに、室内全員固まってる。俺? 俺はもう慣れた。

「悪いが、下がらせてもらうぞ」

 へリウスの言葉に誰も反応しないのをいいことに、俺たちはその場を離れた。
 建物から出て、さっさと外壁にあるテントへと向かう。もう夜も遅くなってしまったせいか、町の中は真っ暗だ。そんな中を迷いなく進むへリウス。外に出る大きな門はすでに閉じられている。

「わ、悪いが門は開けられんぞ」

 門番のおっさんが、びくびくしながら言ってきた。ワイバーンを瞬殺したへリウス相手に、頑張ったな。

「あぁ? ……まぁ、いいか」

 そう言うと、よいしょっ、という掛け声とともに……外壁を飛び越えた。けして低くはない外壁なのに、さすがだね。
 おっさんの驚きの声を後に、俺たちはさっさとテントの方へと向かう。
 結界を張ったままだったからか、持ち去られることもなく残っていた。周囲を見渡すと、まだ、いくつかのテントはあるようだが、テントの中の灯りはほとんど落ちている。その代わりに、入口付近で焚火をしながら見張りについている姿が何人か見受けられた。町の傍であっても、また魔物が出てこないとも限らないからだろう。

 俺たちは、そのままテントの中へ入った。

「あ゛あぁぁぁ~、めんどくせぇぇぇぇ」

 へリウスの心底嫌そうな声が響く。この結界付きテント、防音効果もあるらしく、思い切り、愚痴モードになるへリウス。

「お疲れ、お疲れ」
「んとによぉ、ハルのおかげで、出てこられたがよぉ。なんで、俺たちがBランクの奴らの尻ぬぐいせにゃ、ならんのよ」
「そうだよねぇ」

 結局は、『剛腕の獅子』を助けに、じゃなく、ワイバーンの取りこぼしを、押し付けたいだけに決まっているのだ。その上、ブラックヴァイパーがいるわけで、それをわかった上で、押し付けに来ている。
 本当に質が悪い。

「……そういえば、魔法使いのお友達は、どうなったの?」
「あ、忘れてた……けど、返事は来てないな」
「そっかぁ」

 さっさとこの町から逃げてしまいたいところなんだけど、そうもいかないか。
 荷物に身体を傾けると、眠気が襲い掛かってきた。

「とりあえず、ハルは寝ておけ」
「うん、ごめん」

 実は、すでに身体がふらふらと揺れてて、倒れそうだったのだ。
 子供の身体は、なかなか厳しい。

「大丈夫だ。ゆっくり寝とけ」

 目を閉じて意識が落ちる瞬間、へリウスの優しい声が聞こえた。
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