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第6章

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 討伐に行ったのは確か、Bランクの冒険者パーティだったはず。まさか、あんな少年たちが?

「おいっ、お前ら、どうしたんだっ!」

 町に向かうのに少し出遅れた冒険者の一人が気が付いたのか、少年たちに声をかけた。

「ご、剛腕についてったんだっ、にも、荷物持ちでっ」
「あの、あの人たちが逃げろってっ」

 ポーターで雇われてた少年たちなのだろう、リュックを背負った二人、そのうち一人が足を引きずりながら町へと向かってくる。

「くそっ、お前らが連れてきやがったのかっ」

 そんな声とともに、どこからか誰かが彼らに矢を放った。

「えっ」

 ストッ

「ギャッ」

 少年の一人の太腿に矢が刺さり、倒れこむ。

「な、何するんだよっ」

 矢を射られた少年が叫ぶ。

「お前らが連れてきたんだっ、お前らが責任もって、時間稼ぎしろっ!」
「そ、そんなっ」

 絶望した顔で叫ぶ少年。
 先を走っていた少年が、仲間を見捨てられずに、涙ながらに戻っていく。

『GYAOOOO!』

 上空に大きな黒い影が浮かぶ。一体だけかと思ったら、二体。

 ――ヤバい。

 単純にそう思った。

「走れっ!」

 そう叫んだのは、へリウスだった。
 少年たちはその声で、我に返ったように、駆け出す。傷を負った少年も必死だ。

「ハルッ、お前はこのテントから出るな」

 このテント、へリウスがダンジョン用に使ってたヤツで、防御の結界付き。滅多なこと、例えばドラゴンとかでない限り、破られないと、自慢げに言っていた。そもそもドラゴンの強さがどれくらいなのか、俺にはわからないんだが。
 俺がテントに入ると、へリウスがテントの上に付いていたボタンのようなモノを押した。すると、一気に薄い膜のようなものがテントを中心に半円形に浮かび上がる。

「下手に町に入るよりも安全だ。とにかく、何が起きても、ここから出てくるなよ」
「ちょ、ちょっと、へリウスッ」
「大丈夫だ、あの程度のワイバーン、俺一人で十分だ」

 ……いや、Bランクの冒険者パーティがダメだったのに、へリウス一人でイケるわけないじゃないかっ!
 だけど、今の俺には何の力もなくて、へリウスの言う通りにテントに隠れるしかない。

「くそっ、神様っ! へリウスに力を貸して!」

 俺にできるのは、いるのかわからない神に願うだけだ。
 必死に両手を合わせるようにして握りしめながら、神に祈る。

 ……しかし。俺の祈りは必要なかった模様。

 少年たちの方へ駆け出してまもなく、ワイバーンたちがへリウスの方へと急降下してきたんだが……へリウスの剣の一振りで、一匹のワイバーンの首が飛び、もう一振りで、羽が落ちた。

「え」

 ……いや、今までも散々魔物退治をしている姿を見てはいた。
 そうは言っても、相手はウルフやボアなどの獣系の魔物。普通に剣でぶったぎってはいたが、今回のそれは、剣が届くような相手ではなくて。
 あれは波動か何かなのか。獣人は魔法が使えないって話だったので、あれは魔法とは違うモノのはず。それも、たった二振りで斃してしまうとか。

「あんな死ぬかもしれないフラグ立てといて、あっさり片づけるとか、へリウス、おかしいだろ」

 思わず、ぽつりと呟いてしまった。
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