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第4章
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やっぱり、この小さい身体だと、どうしても小走りになる。というか、完全に置いていかれてる!
「へ、へリウス!」
俺の甲高い怒鳴り声に、へリウスが振り向くが、人込みに完全に埋没してるせいか、見つけられずに、キョロキョロしている。うん、焦ってるね。
「ま、待って、待って!」
なんとか追いついた俺に、へリウスも、ホッとした顔になる。
「悪い、悪い。つい、自分のペースで歩いちまった。ほれ、肩車してやる」
「うん、お願いします」
お互いに苦笑いして、俺は素直にへリウスの肩に乗る。うほほ、やっぱりよく、見える!
早朝に比べると、だいぶ人が多い。こんなんじゃ、置いて行かれるはずだ。特に、もう昼近いせいか、いい匂いをさせた屋台なんかも、あちこちにあるようで、そんな店には人だかりも出来ている。
「う、うまそうな匂い」
「おう、そうだな、朝飯が早かったし、なんか食うか」
「食う!」
俺の食事を求める声に、へリウスは大笑いしながら、串焼きの屋台に並んだ。
俺たちは、食べ歩きを楽しみつつ、いくつかの店を覗いては、買い物をしていく。軍資金はへリウスが出してくれたけれど、一応、出世払いってことにしてもらった。へリウスは期待などしていないだろうけど、いつか、ちゃんと返せるくらいになりたいもんだ。
* * *
一通りの装備や荷物を揃えて、再び、ボブさんたちの元へ戻る。
「あんれまぁ、随分といいもん買ってもらっただなぁ?」
メアリーさんがニコニコしながら、俺の周りをウロウロ見て回る。
「へへへ、似合う?」
「おうとも、さすが、ハルだぁ。何を着ても似合うだよぉ」
ホビット用のではなく、ちゃんと人族用の子供サイズの胸当てがあるとは思いもしなかった。素材もやっぱり、お下がりよりも、しっかりしている。表は金属だけど裏側には皮が張ってあって、衝撃を軽減させてくれるようだ。
それに、腰に下げている小さな剣のようなものは、実は大人が使うようなサバイバルナイフのようなもの。ちゃんと鞘まであってカッコいい。
「へリウス、いいもんをハルにありがとなぁ」
「ボブ、いいってことよ。俺もさんざん、あんたに世話になったんだしよ」
「んだどもよぉ」
俺が、メアリーさんに防具やナイフを見せている間に、ボブさんはへリウスに小さな麻袋を渡していた。
「これ、使ってくれや」
「おいおい、こんな大金は」
「いざっていう時に、な」
「ボブ……わかったよ」
二人は、ガシッと握手をすると、今度は俺の方へと目を向けた。
「さぁ、ハル。もう少ししたら、乗合馬車が出る時間だ。ボブたちに挨拶しろ」
「……うん」
俺が、この世界に来てから、とてもよくしてくれた二人。短期間とはいえ、何も知らない俺のことを、本当の子供みたいに可愛がってくれた。あちらの世界と合わせたって、一番の家族みたいな存在だった。その二人と離れるなんて、今更ながらに思ったら、涙が溢れてきた。
「ボブさん、メアリーさん、色々とお世話になりましたっ」
思い切り頭を下げた俺は、鼻水をすする。
くそっ、俺はこんなに涙もろかっただろうか。
「大きくなったら、遊びにおいでな」
「待ってるだよ」
二人が俺を優しく抱きしめてくれる。
本当は、ずっと一緒にいたい。このまま、ずっと。でも、きっとそれだと迷惑がかかるのは、わかっている。
「うん……うん、大きくなって強くなったら、また来る!」
俺は流れる涙をそのままに、ぎゅっと二人を抱きしめ返す。
「ハル」
「……わかってる」
へリウスの声に、俺は二人から離れ、グイッと涙を拭う。そして、二人には、満面の笑みを向ける。泣き顔でさよならをしたら、その顔で覚えられてしまうから。
「じゃあ、またね!」
俺は、ぶんぶんと手を振りながら、ボブさんたちの姿が見えなくなるまで、何度も振り返るのだった。
「へ、へリウス!」
俺の甲高い怒鳴り声に、へリウスが振り向くが、人込みに完全に埋没してるせいか、見つけられずに、キョロキョロしている。うん、焦ってるね。
「ま、待って、待って!」
なんとか追いついた俺に、へリウスも、ホッとした顔になる。
「悪い、悪い。つい、自分のペースで歩いちまった。ほれ、肩車してやる」
「うん、お願いします」
お互いに苦笑いして、俺は素直にへリウスの肩に乗る。うほほ、やっぱりよく、見える!
早朝に比べると、だいぶ人が多い。こんなんじゃ、置いて行かれるはずだ。特に、もう昼近いせいか、いい匂いをさせた屋台なんかも、あちこちにあるようで、そんな店には人だかりも出来ている。
「う、うまそうな匂い」
「おう、そうだな、朝飯が早かったし、なんか食うか」
「食う!」
俺の食事を求める声に、へリウスは大笑いしながら、串焼きの屋台に並んだ。
俺たちは、食べ歩きを楽しみつつ、いくつかの店を覗いては、買い物をしていく。軍資金はへリウスが出してくれたけれど、一応、出世払いってことにしてもらった。へリウスは期待などしていないだろうけど、いつか、ちゃんと返せるくらいになりたいもんだ。
* * *
一通りの装備や荷物を揃えて、再び、ボブさんたちの元へ戻る。
「あんれまぁ、随分といいもん買ってもらっただなぁ?」
メアリーさんがニコニコしながら、俺の周りをウロウロ見て回る。
「へへへ、似合う?」
「おうとも、さすが、ハルだぁ。何を着ても似合うだよぉ」
ホビット用のではなく、ちゃんと人族用の子供サイズの胸当てがあるとは思いもしなかった。素材もやっぱり、お下がりよりも、しっかりしている。表は金属だけど裏側には皮が張ってあって、衝撃を軽減させてくれるようだ。
それに、腰に下げている小さな剣のようなものは、実は大人が使うようなサバイバルナイフのようなもの。ちゃんと鞘まであってカッコいい。
「へリウス、いいもんをハルにありがとなぁ」
「ボブ、いいってことよ。俺もさんざん、あんたに世話になったんだしよ」
「んだどもよぉ」
俺が、メアリーさんに防具やナイフを見せている間に、ボブさんはへリウスに小さな麻袋を渡していた。
「これ、使ってくれや」
「おいおい、こんな大金は」
「いざっていう時に、な」
「ボブ……わかったよ」
二人は、ガシッと握手をすると、今度は俺の方へと目を向けた。
「さぁ、ハル。もう少ししたら、乗合馬車が出る時間だ。ボブたちに挨拶しろ」
「……うん」
俺が、この世界に来てから、とてもよくしてくれた二人。短期間とはいえ、何も知らない俺のことを、本当の子供みたいに可愛がってくれた。あちらの世界と合わせたって、一番の家族みたいな存在だった。その二人と離れるなんて、今更ながらに思ったら、涙が溢れてきた。
「ボブさん、メアリーさん、色々とお世話になりましたっ」
思い切り頭を下げた俺は、鼻水をすする。
くそっ、俺はこんなに涙もろかっただろうか。
「大きくなったら、遊びにおいでな」
「待ってるだよ」
二人が俺を優しく抱きしめてくれる。
本当は、ずっと一緒にいたい。このまま、ずっと。でも、きっとそれだと迷惑がかかるのは、わかっている。
「うん……うん、大きくなって強くなったら、また来る!」
俺は流れる涙をそのままに、ぎゅっと二人を抱きしめ返す。
「ハル」
「……わかってる」
へリウスの声に、俺は二人から離れ、グイッと涙を拭う。そして、二人には、満面の笑みを向ける。泣き顔でさよならをしたら、その顔で覚えられてしまうから。
「じゃあ、またね!」
俺は、ぶんぶんと手を振りながら、ボブさんたちの姿が見えなくなるまで、何度も振り返るのだった。
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