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第4章

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 それから二日後、俺は村を出ることになった。
 一人ではない。なんとボブとメアリーさんも、途中まで一緒に行ってくれるというのだ。

「ちーとばかり昔の知り合いに連絡とれたんでな。久しぶりに、会いに行くついでじゃぁ」

 そんな呑気に言ってるけれど、ボブさんたちはしっかり長期に旅に出る、というか、ここに二度と戻って来ない気なのは、見てればわかる。
 だって……家の中の家具とか、食材とかまで、近所に配ってるんだもの。

「いいの?」
「ん~?」

 俺は心配になってボブさんに聞いた。

「大丈夫だぁ。ハルさ、送り届けたらぁ、息子んとこさ、行くからよぉ」
「そうなの!?」

 聞いてないよぉ、と恨めし気に見ると、いつものような朗らかな笑い声をあげるボブさん。

「前から言われてたんだぁ。一緒に暮らすべ、とな」

 まだまだ夫婦水入らずでもいいと思ってたんだけれど、三人目の孫が生まれるらしい。お嫁さんの実家は、長男夫婦のところの子供の世話で手伝いを断られたとか。そうなると、頼れるのがボブさんたちしかいない、となったそうだ。嫁姑問題、勃発しなきゃいいけどな、と、内心思った俺。メアリーさんだったら、大丈夫かな?

「んだば、行ぐかぁ」

 大きなリュックを背負ったボブさんと、メアリーさん。俺は彼らの後をついていく。
 二人の格好は、ちょっとそこまで薬草を取りに行ってくる、ってな感じに身軽なんだけど、俺の方は、メアリーさんお手製の皮のフード付きのマントに、しっかりした皮でできた靴を履いている。靴といっても袋状になっているのを、足首を革ひもで結んでいるタイプだ。メアリーさん悲願の薄布の服は、残念ながら諦めてもらって、息子さんのお古のシャツに革製のベストを着ている。長旅にそれは向いてないだろ、と俺とボブさんの説得した結果だ。それに小さな弓と矢筒を背中に背負っている。遠目から見たら、ホビットだと思われるはずだ。
 ちなみに、フード付きマントは俺のお気に入りだ。内側にはウサギの毛皮が貼ってあって、なかなか暖かい。メアリーさんからは、尖った耳が見えないように深くかぶるように言われてる。

「気ぃつけてなぁ」
「また、戻って来い~」
「ほれ、これ、餞別だぁ」

 村の出口につくまでに、村人たちから声をかけられ、色んな荷物を持たされる。そのたびに、ありがとう、ありがとう、と返しては、ウェストポーチの中に、どんどんと詰め込んでいく。
 そう、ウェストポーチなのだ。まさに、夢のマジックバッグだ。これ、ボブさんの冒険者時代に使ってたヤツ。どれくらい入るのか、ボブさんもわからないらしい。念のためにと、メアリーさんの一回り小さいのも貰った。これはそのままウェストポーチの中に仕舞ってある。二人とも、もう長旅にも冒険にも行かないから、というので貰ってしまったのだ。
 だったら、二人の荷物も俺が預かるよ、と言ったのだけれど、万が一、急に別行動をとることになったら困るから、と断られてしまった。きっと、その可能性もある、ということなんだろう。それを聞いて、身が引き締まった。


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