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第4章

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 行商人たちが帰って行ってから、二週間が経った。俺は相変わらず、居心地のいいボブさんたちの家に厄介になっていたのだが。

「……ハル、そろそろ、ここを出ていくかぁ」
「へ?」

 ボブさんと一緒にウサギの皮を剥いでいる時に、そう声をかけられた。
 一瞬、何を言われていたのか、わからなくて、固まってしまう。それから、じわじわと理解していく。

「え、あの」
「本当は、このまま、いてもらいたかったんだけんどよぉ」

 ボブさんの寂しそうな声に、何かあったんだろうか、と続きを待つ。

「あの馬鹿どもがぁ、やっぱり、漏らしやがったんだと」
「馬鹿ども? ……ああ、あのモブたちか」
「もぶ?」
「あ、うん、この前来てた人たちってことだよね」
「んだぁ。ヘンリーにも注意しとけって言ったんだがなぁ」

 ヘンリーは、ボブさんの冒険者時代に出会った頃は、駆け出し冒険者だったらしい。
 その当時、よくポーター(いわゆる、荷物持ちってやつだな)として、同じパーティにいたことがあったんだとか。今回の再会で、今ではAランクの冒険者になってたことに驚いたそうだ。
 でも、正直、身内とかを安易に信じちゃうとことか、ちょっと迂闊だとは思う。それで、Aランクになれるって、冒険者ギルドの審査って甘くない? そういうところまでは見ないってことかなぁ。

 モブたちは、ヘンリーと一緒に同じ町に戻っていったらしいけど、その戻った先ですぐに愚痴ったらしい。冒険者ギルドの中にある酒場で。森の中に子供のエルフがいた、そいつを連れて帰ったら儲けになったかもしれない、と。ヘンリーいるのに、気を抜き過ぎだ。すぐにヘンリーからの教育的指導が行われたらしい。

「馬鹿だね、そいつ」
「ああ、馬鹿だぁ。だがなぁ、そいつのせいで、もっと馬鹿な奴らが動き出したらしいだ」

 この前言ってた人攫いみたいなことだろうか。考えただけで、身震いがする。

「……でも、なんで、そんな情報がここでわかるんだい?」

 この村からヘンリーたちの町まで、順調に進めば馬車で一週間ほどなのだという。あまりの情報伝達の早さに、ちょっと驚く。
 この村には電話みたいな通信できるものなどない。どうやって、離れたところの情報がわかるというんだろう?

「うん? ヘンリーから手紙がきただよ」
「手紙って……でも、誰も配達には来てないよね?」
「あ? 手紙は、鷹便で届くだよぉ」
「た、鷹便?!」

 俺は知らなかった。ここでは、人の手で運んでもらう物のほうが多いけれど、急ぎの連絡手段として、魔道具というものを付けた鷹が、手紙を運ぶこともあるそうだ。
 世の中の魔力のある人たちの間では、伝達の魔法陣なるものを使って、連絡をとりあうこともあるらしい。しかし、ホビットのように魔力のない者たちの間では、動物や鳥を使って手紙を送り合うこともあるそうなのだ。
 ヘンリーは金がかかっても、ボブさんに急いで知らせるべきだと思ったということだろう。

 ――それって、ちょっとどころじゃなく、ヤバイ状況ってことなんじゃない?
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