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第9章
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多少の波乱はあったものの、学校生活はそこそこ順調に過ぎていく。
嫌がらせは、男子生徒からの襲撃事件以来、ぱったりとなくなった。何せ、問題を起こした生徒は全員退学になったのだ。その上、それぞれの家にも通達がされ、罰が下されたという。
「レイ、お昼に行きましょう?」
「あ、はい!」
最近はすっかりエリザベス様たちと昼食をとるようになった。学食への通り道だからとはいえ、わざわざ迎えに来て下さるのだから、ありがたい。
「そういえば、聞きました?」
学食へ向かう道すがら、エリザベス様が少し不機嫌そうな様子で、話しかけてきた。
「来月の頭に、隣国のイドリス王国の第四王女殿下が、学校の視察にいらっしゃるんですって」
「視察、ですか? 留学ではなく?」
「ええ」
なんでも、すでに第四王女殿下は、去年、母国で学校を卒業しているそうだ。今回の来訪では、母国の学校の運営の参考の為にということらしい。
「でも、それも実は口実なんじゃないかっていう噂があるのよ」
私たちは学食のカウンターで、それぞれに食事をトレーに乗せたものを受け取り、空いている席へと向かう。
「その噂って、何ですか」
パンにバターを塗りながら、エリザベス様へと問いかける。高位貴族の子女が多いせいか、学食の食事はなかなかだ。
「王太子殿下との縁談よ」
その言葉に、固まる私。
「私も母から、そんな話を聞きましたわ」
「まぁ……随分と厚かましい話では、ございませんか」
「私もそう思いますわ」
突如、同席していた他のご令嬢たちの言葉が忌々し気なものに変わる。
なんでだろう、と思っていたら、私が理解していないことに気付いたエリザベス様が、こっそりと教えてくれた。
カイルの前の奥さんというのが、そのイドリス王国の第三王女だったというのだ。
それも、母国の元恋人とともに駆け落ちをして、その途中で事故で亡くなったのだとか。それだけで十分に悲劇のヒロインとして同情を買いそうな話ではあったのだけれど、元々、隣国から押し付けられた結婚とも言われていたので、王太子殿下であるカイルの方に同情が集まったらしい。
奥さんがもういないのは、何度も王城に行ってたのでわかっていたけれど、誰も詳しくは話すこともなかったから、単純に病気か何かで亡くなられていたのかと思っていた。
「まだ亡くなられて3年ほどですわよね。あまりにも……ではなくて?」
「そんなにしてまで、婚姻を結ぶ必要性があるのでしょうか」
まるで自分のことのように喧々諤々と言い募るご令嬢たち。
私もその中に入って会話をすべきなのだろうけれど、自分が思いのほかショックを受けていることに気付いて、言葉にならない。
「もしかしたら、グライス伯爵令嬢との戦いが始まるかもしれませんわね」
「そういえば、あの方も、王太子殿下への執着がねぇ」
「きっと王太子殿下は、お相手にはなさらないと思いますけど」
ねぇ? という声とともに、私へと視線が向く。
「大丈夫ですわ。私たち、レイの味方ですから」
何やら気合の入ったエリザベス様たちだったけれど、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
嫌がらせは、男子生徒からの襲撃事件以来、ぱったりとなくなった。何せ、問題を起こした生徒は全員退学になったのだ。その上、それぞれの家にも通達がされ、罰が下されたという。
「レイ、お昼に行きましょう?」
「あ、はい!」
最近はすっかりエリザベス様たちと昼食をとるようになった。学食への通り道だからとはいえ、わざわざ迎えに来て下さるのだから、ありがたい。
「そういえば、聞きました?」
学食へ向かう道すがら、エリザベス様が少し不機嫌そうな様子で、話しかけてきた。
「来月の頭に、隣国のイドリス王国の第四王女殿下が、学校の視察にいらっしゃるんですって」
「視察、ですか? 留学ではなく?」
「ええ」
なんでも、すでに第四王女殿下は、去年、母国で学校を卒業しているそうだ。今回の来訪では、母国の学校の運営の参考の為にということらしい。
「でも、それも実は口実なんじゃないかっていう噂があるのよ」
私たちは学食のカウンターで、それぞれに食事をトレーに乗せたものを受け取り、空いている席へと向かう。
「その噂って、何ですか」
パンにバターを塗りながら、エリザベス様へと問いかける。高位貴族の子女が多いせいか、学食の食事はなかなかだ。
「王太子殿下との縁談よ」
その言葉に、固まる私。
「私も母から、そんな話を聞きましたわ」
「まぁ……随分と厚かましい話では、ございませんか」
「私もそう思いますわ」
突如、同席していた他のご令嬢たちの言葉が忌々し気なものに変わる。
なんでだろう、と思っていたら、私が理解していないことに気付いたエリザベス様が、こっそりと教えてくれた。
カイルの前の奥さんというのが、そのイドリス王国の第三王女だったというのだ。
それも、母国の元恋人とともに駆け落ちをして、その途中で事故で亡くなったのだとか。それだけで十分に悲劇のヒロインとして同情を買いそうな話ではあったのだけれど、元々、隣国から押し付けられた結婚とも言われていたので、王太子殿下であるカイルの方に同情が集まったらしい。
奥さんがもういないのは、何度も王城に行ってたのでわかっていたけれど、誰も詳しくは話すこともなかったから、単純に病気か何かで亡くなられていたのかと思っていた。
「まだ亡くなられて3年ほどですわよね。あまりにも……ではなくて?」
「そんなにしてまで、婚姻を結ぶ必要性があるのでしょうか」
まるで自分のことのように喧々諤々と言い募るご令嬢たち。
私もその中に入って会話をすべきなのだろうけれど、自分が思いのほかショックを受けていることに気付いて、言葉にならない。
「もしかしたら、グライス伯爵令嬢との戦いが始まるかもしれませんわね」
「そういえば、あの方も、王太子殿下への執着がねぇ」
「きっと王太子殿下は、お相手にはなさらないと思いますけど」
ねぇ? という声とともに、私へと視線が向く。
「大丈夫ですわ。私たち、レイの味方ですから」
何やら気合の入ったエリザベス様たちだったけれど、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
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