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第9章

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 学校での環境は、エリカ・グライス伯爵令嬢と遭遇してから、若干変わった。
 彼女はすでに卒業していて学校にはいないのに、どうも彼女の友人の妹や弟といった世代がいるらしい。派閥がどれだけなのかまで把握はしていなかったけれど、思った以上に多いのか、そんな彼らの視線が、非常にウザい。
 視線だけでも嫌なのに、質が悪いのだと、足を引っかけて来たり、荷物を隠されたり。
 さすがにオルドン王国の学校で、そんなことをされたことがなかっただけに驚いた。もしかして、私が知らないだけで、貴族の女子の間ではあったのだろうか。ヴェリーニ侯爵令嬢あたりにでも聞けば知っていそう……いや、やっていそう、かな。
 これが大人しい性格の女の子とかだったら、泣き寝入りするのだろうけれど、私は違う。
 使える力は、使うに限る。
 元平民、なめんなよ。

「馬鹿ですね。私が1人でいるからって、護衛がついてないとでも思ってらっしゃる?」

 授業の教室移動からたまたま1人で戻っているところで、3人の男子生徒に連れ込まれかけた私。
 その3人は、あっという間に制圧されてる。たった1人の影護衛によって。

「苛められたからって、大人しくしてるとでも思ってるのでしょうか……あなた方の家にはすぐに連絡がいくでしょうね。お疲れ様でした」

 にっこり笑って部屋を後にする。
 お義母様にお茶会の話をして早々、すぐに影護衛がついた。それも、王家直轄の。もう、エルドおじさんのところまで話がいっちゃってるっていう。

『彼女のことだから、何かしかけてきてもおかしくない』

 というのが、義母様の考え。
 さすがに、子供の間でのこと、ここは断るべきなのか、と思ったけれど、あのエリカ嬢の目つきを思ったら、素直に頼るべきだと思った。
 結局、その判断は間違いではなかったわけだが。

「……自業自得だけど、ちょっとばかり、お気の毒かしら」

 そう呟いて、肩をすくめる。
 彼らのことよりも、自分のことだ。
 少し遅れて教室に戻ったら、なぜか驚き青ざめる数人の女子たち。

 ――あー、この人達も、そうなのか。

 思わず、にっこり笑ってあげたら、そそくさと自分の席に戻っていく。
 正直、このクラスにそんなに仲のいい友達がいるわけでもない。むしろ、エリザベス様たちとのほうが仲がいいくらいだ。
 時々、ベイスがクラスに来ることもあって、私が『バーンズ伯爵』の家、ひいては王妃殿下と繋がりがあるというのを知っているはず。
 なのにこれって、彼らはエリカ嬢の家に弱みでも握られているのかしら、とか思ってしまう。
 
「早く学校終わらないかなぁ」

 自分の席について窓の外を見ながら、そう呟いた私なのであった。
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