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第8章
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無事に卒業式を終えた3日後、エルドおじさんたちとともに、アストリアに旅立つことになった。まさか、こうもすぐに旅立つことになるとは思っていなかった。
ファルネーゼ子爵邸の前には、3台の馬車が並んでいる。
「気を付けて言ってくるのよ」
そう言って私を抱きしめてくれたのは、ファルネーゼ子爵夫人。うっすら涙を浮かべている姿に、私ももらい泣きしそう。
「まったく、何もこんなに早く連れて行かなくてもよかろうに」
サカエラのおじさんが、エルドおじさんに文句を言う。
私にはいつもの二人のやり取りではあるものの、王妃殿下もいらっしゃるし、護衛の人もいる状態でのあまりの気安さに、周囲を見てしまう。
「レイ、気にしないでいいのよ」
そう優しく声をかけてくれたのは、王妃殿下。
結局、二人はお忍びでやってきていたそうで、下位貴族が乗るような馬車でやってきたらしい。二人の格好も、顔を知らなければ……いや、知っていても気が付かないような格好だ。実際、エルドおじさんは何度も来ていたわけだし。
「では、ファルネーゼ子爵夫人、短い間ではあったが世話になった。レイのことも含め、感謝する」
「勿体ないお言葉です」
子爵夫人は、エルドおじさんたちの正体を知っていても、堂々としている。さすが、元侯爵令嬢でもあり、王族も宿泊するような宿屋のオーナーだけのことはある。
「さぁ、早く戻らねば、カイルだけではなく、テオドアにまで叱られるぞ」
「そうね。テオドアには、レイを連れて帰ると約束してきたのよ」
「えっ?」
うん?
この後は、バーンズ伯爵家に入るという話だったような。ただの言葉の綾だよね?
「さぁさぁさぁ」
「では、サカエラ、また、アストリアで会おう」
「ああ。気をつけてな! ……レイも気を付けて!」
満面の笑みを浮かべているように見えるけれど、目が少し寂しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
私は馬車の中から、彼らの姿が見えなくなるまで、窓際に張り付き、手を振り続けた。
馬車はオルドン王国の王都を出て、街道を物凄いスピードで駆け抜けていく。少し前を走っていた乗合馬車なんて、あっという間に後方に消えていく。
「は、早い」
「フフフ、こう見えても、王家専用の馬車だからね」
「見た目は少し地味ですけれどね」
「そ、そうだったのですか」
この速さの割に、車内の揺れがほとんど感じないとは、凄すぎる。
前にサージェント様と乗らせていただいた馬車も、かなり立派で揺れが少なかった記憶があるが、それよりも、である。
「……前は気付かなかったけれど、やはり、バーンズ家の血を引いているのね」
「はい?」
突然、しみじみと王妃殿下が言うので、私の方は首を傾げる。
「いえね……先日、久しぶりに王宮で実兄と話をする機会があったのだけれど……」
王妃殿下は、その日のことを話してくださった。
ファルネーゼ子爵邸の前には、3台の馬車が並んでいる。
「気を付けて言ってくるのよ」
そう言って私を抱きしめてくれたのは、ファルネーゼ子爵夫人。うっすら涙を浮かべている姿に、私ももらい泣きしそう。
「まったく、何もこんなに早く連れて行かなくてもよかろうに」
サカエラのおじさんが、エルドおじさんに文句を言う。
私にはいつもの二人のやり取りではあるものの、王妃殿下もいらっしゃるし、護衛の人もいる状態でのあまりの気安さに、周囲を見てしまう。
「レイ、気にしないでいいのよ」
そう優しく声をかけてくれたのは、王妃殿下。
結局、二人はお忍びでやってきていたそうで、下位貴族が乗るような馬車でやってきたらしい。二人の格好も、顔を知らなければ……いや、知っていても気が付かないような格好だ。実際、エルドおじさんは何度も来ていたわけだし。
「では、ファルネーゼ子爵夫人、短い間ではあったが世話になった。レイのことも含め、感謝する」
「勿体ないお言葉です」
子爵夫人は、エルドおじさんたちの正体を知っていても、堂々としている。さすが、元侯爵令嬢でもあり、王族も宿泊するような宿屋のオーナーだけのことはある。
「さぁ、早く戻らねば、カイルだけではなく、テオドアにまで叱られるぞ」
「そうね。テオドアには、レイを連れて帰ると約束してきたのよ」
「えっ?」
うん?
この後は、バーンズ伯爵家に入るという話だったような。ただの言葉の綾だよね?
「さぁさぁさぁ」
「では、サカエラ、また、アストリアで会おう」
「ああ。気をつけてな! ……レイも気を付けて!」
満面の笑みを浮かべているように見えるけれど、目が少し寂しそうに見えたのは気のせいではないだろう。
私は馬車の中から、彼らの姿が見えなくなるまで、窓際に張り付き、手を振り続けた。
馬車はオルドン王国の王都を出て、街道を物凄いスピードで駆け抜けていく。少し前を走っていた乗合馬車なんて、あっという間に後方に消えていく。
「は、早い」
「フフフ、こう見えても、王家専用の馬車だからね」
「見た目は少し地味ですけれどね」
「そ、そうだったのですか」
この速さの割に、車内の揺れがほとんど感じないとは、凄すぎる。
前にサージェント様と乗らせていただいた馬車も、かなり立派で揺れが少なかった記憶があるが、それよりも、である。
「……前は気付かなかったけれど、やはり、バーンズ家の血を引いているのね」
「はい?」
突然、しみじみと王妃殿下が言うので、私の方は首を傾げる。
「いえね……先日、久しぶりに王宮で実兄と話をする機会があったのだけれど……」
王妃殿下は、その日のことを話してくださった。
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