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第5章

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 今日も玄関先には、にこやかに待ち構えているエルドおじさんと、すでにそれを見慣れたマリエッタさんが待っていた。

「ただいま帰りました」
「おかえり! 今日の学校はどうだったかい?」

 ギューッと抱きしめられて死にそうになっている私を、マリエッタさんは生温い目で見つめている。いや、見ているだけではなく、助けて欲しい。
 私はなんとかエルドおじさんから逃れると、自分の部屋へと向かい、制服から、いつものワンピース姿になった。
 そして、制服のジャケットから、さっき先生から渡されたメモを取りだす。

「こういうのは、ちゃんとおじさんに調べてもらったほうがいいのかな」

 なにせ今は、エルドおじさんも一緒にいるんだし。変な人がうちに来ても困る。

 階段を降りて厨房に行くと、楽しそうに会話をしているエルドおじさんとマリエッタさん、料理長のホッズさんがいる。そして、なぜか護衛で着ている騎士様二人までいた。
 さすがに、ガチガチに騎士の格好はしていないから、他の人が見たら、ただの平民の若者二人、って感じなんだろうけど、けして、厨房にいるタイプの人ではない。完全に浮いている。
 
「なんで、ここに?」

 チロリと護衛の二人に目を向ける。比較的広い厨房に、ガタイのいい男がいるのだ。狭く感じてもおかしくはないと思う。

「コレガシゴトデース」
「ソウデース」

 マリエッタさんたちがいる手前、頑張ってオルドン語で話そうとしてくれる騎士様たち。笑っちゃいけないけど、ついつい笑ってしまう。

「マリエッタさん、サカエラのおじさんは、今日は戻られますよね?」
「どうでしょう。遠出をされるという話は聞いていないので、いつも通りに、お夕食は準備するつもりですよ? ねぇ? ホッズ」
「はい」

 ホッズさんは、芋を剥きながらそう答える。その隣で、なぜかカットル(にんじん)を刻んでるエルドおじさん。もう慣れたものだ。護衛の二人に目を向けると、『自分は何も見ていない』、そう言っているように見える。
 まぁ、いい。それよりも、だ。

「エルドおじさん、ちょっと相談してもいい?」

 今の私に、相談にのってくれる大人は、サカエラのおじさんか、エルドおじさんしかいない。もし、カイルがいてくれたら、彼に相談したかもしれないけど。

 ――カイルは元気にしているだろうか。

 そんなことが、チラリと頭をよぎったけれど、私はそれを胸の奥へと押し込める。

「これなんだけど」

 私はエルドおじさんに、先生から渡されたメモを差し出す。

「ん? こいつは何者だ?」
「私もよくわからないんだけど……」

 とりあえず、学校に連絡をいれてきた母方の関係者らしいという話をすると、なんだか訝しい顔をする。そうよね。私ですら変だって思うもの。

「なんで今頃なんだろうね?」
「さぁ……」
「嫌な予感しかしないが。サカエラに聞いてみよう。念のため、うちの者にも調べてもらおうか」
「……うん」

 エルドおじさんは難しい顔をして、騎士様達を引きつれて、厨房から出ていった。
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