38 / 81
第4章
37
しおりを挟む
あんなことがあったせいで少し遅くなったけれど、お昼の準備をすることができた。
リシャールさんやサージェント様が無理しなくても、とおっしゃっていたけれど、何かしてた方が気がまぎれると思ったのだ。
今日は、エルドおじさんの希望にそって、卵のフッカ焼き(キッシュ)を用意した。まだ、ベッドから出られる状況ではないようで、私はその脇で、おじさんが美味しそうに食べている姿を見つめてる。そういえば、うちに遊びに来ていた時も、こんな風に美味しそうに食べてくれた姿を思い出す。
寝室の片隅では、王妃様とカイル、そのうえテオドア王子まで、カフェにでもあるようなテーブルで、私の作ったフッカ焼きを食べている。その上、テオドア王子はフォークでフッカ焼きを突き刺して、振り回してる。
こういうお城みたいなところは、ながーいテーブルで、食事をするものだと思っていた。今、目の前で起こってるのは、普通のことなんだろうか?
『オイシーイ!』
急に、テオドア王子が、フッカ焼きを私に見せながらオルドン語で叫んだ。
「私が教えたんだよ」
ニコリと優しく笑うカイルに、私は一瞬、ドキリとしてしまう。まったく、美男子は罪作りだ。
「お食事中すみません……」
サージェント様が、静かに現れ、カイルの耳元で何か話している。きっとお仕事の話なのだろう。
私は、フッカ焼きと格闘しているテオドア王子から、フォークをとりあげて小さく切り分けた。小さくした切ったフッカ焼きを、テオドア王子の口元にもっていくと、嬉しそうに大きくあける。
……さすがカイルの息子。凄いカワイイ。
「陛下」
「……どうした?」
「……しばらく、レイ様と一緒にオルドンに行かれませんか』
部屋の音が、テオドア王子が動かすフォークの音だけになった。
私、アストリア王国に来たばっかりで、たいした観光もしていないんだけど、と少し思ったんだけれど。
「……いいね」
おじさんは、躊躇なく、カイルの言葉に頷いた。
なんだか、いつものおじさんよりも、顔つきが鋭い気がする。
「おじさん、サカエラおじさんのうちに来るの?」
「ああ、しばらくのんびりするのもいいだろう。オルドンに行くのも久しぶりだしね」
「え、でも」
カイルを見ると、優しく微笑んでる。
「さっそくですが、明日からで、よろしいですか」
「明日!?」
サージェント様が、当然のことのように言うのに、私もびっくりして、思わず、大きな声が出た。だって、一国の王様が、そう簡単に他国にいっていいの!?
……あ、普通にうちに来てたっけ。
「まぁ……私、レイをお茶会に誘いたかったのに」
「王妃様、それは」
「もう……わかってるわ。レイ、次に来た時には、ぜひお茶会に出てほしいわ」
「え、え、え?」
「貴女の義理の叔母様と、お約束してたのだけれど」
……義理の叔母?
王妃様と父がいとこ同士だったとは聞いたから、親戚がいてもおかしくはなかった。でも、それ以上の詳しい話を母からも聞いていなかった。
当然、王妃様は高位貴族のはず。父は貴族だたってこと……
というか、高位貴族や王族とのお茶会とか、無理だしっ!
「そんなことより、もっとレイの料理が食べられないのが残念だなぁ」
エルドおじさんが心底残念そうな顔で言うから、思わず私も笑ってしまう。
「うちに来たら、ホッズさんが作ってくれるよ?」
「私は、レイの料理が食べたかったのだ!」
まるで、子供みたいなことを言うおじさんに、テオドア王子まで、「たべたい! たべたい!」だなんて言い出す。
「おじさんがそんなのじゃ、テオドア王子がワガママになっちゃいますよ?」
ダメですよ? と注意すると、カイルと王妃様が、クスクス笑ってる。
ここに、国王一家がいるなんてことを忘れるくらい、ほのぼのとした空気に、私は幸せな気分になった。
リシャールさんやサージェント様が無理しなくても、とおっしゃっていたけれど、何かしてた方が気がまぎれると思ったのだ。
今日は、エルドおじさんの希望にそって、卵のフッカ焼き(キッシュ)を用意した。まだ、ベッドから出られる状況ではないようで、私はその脇で、おじさんが美味しそうに食べている姿を見つめてる。そういえば、うちに遊びに来ていた時も、こんな風に美味しそうに食べてくれた姿を思い出す。
寝室の片隅では、王妃様とカイル、そのうえテオドア王子まで、カフェにでもあるようなテーブルで、私の作ったフッカ焼きを食べている。その上、テオドア王子はフォークでフッカ焼きを突き刺して、振り回してる。
こういうお城みたいなところは、ながーいテーブルで、食事をするものだと思っていた。今、目の前で起こってるのは、普通のことなんだろうか?
『オイシーイ!』
急に、テオドア王子が、フッカ焼きを私に見せながらオルドン語で叫んだ。
「私が教えたんだよ」
ニコリと優しく笑うカイルに、私は一瞬、ドキリとしてしまう。まったく、美男子は罪作りだ。
「お食事中すみません……」
サージェント様が、静かに現れ、カイルの耳元で何か話している。きっとお仕事の話なのだろう。
私は、フッカ焼きと格闘しているテオドア王子から、フォークをとりあげて小さく切り分けた。小さくした切ったフッカ焼きを、テオドア王子の口元にもっていくと、嬉しそうに大きくあける。
……さすがカイルの息子。凄いカワイイ。
「陛下」
「……どうした?」
「……しばらく、レイ様と一緒にオルドンに行かれませんか』
部屋の音が、テオドア王子が動かすフォークの音だけになった。
私、アストリア王国に来たばっかりで、たいした観光もしていないんだけど、と少し思ったんだけれど。
「……いいね」
おじさんは、躊躇なく、カイルの言葉に頷いた。
なんだか、いつものおじさんよりも、顔つきが鋭い気がする。
「おじさん、サカエラおじさんのうちに来るの?」
「ああ、しばらくのんびりするのもいいだろう。オルドンに行くのも久しぶりだしね」
「え、でも」
カイルを見ると、優しく微笑んでる。
「さっそくですが、明日からで、よろしいですか」
「明日!?」
サージェント様が、当然のことのように言うのに、私もびっくりして、思わず、大きな声が出た。だって、一国の王様が、そう簡単に他国にいっていいの!?
……あ、普通にうちに来てたっけ。
「まぁ……私、レイをお茶会に誘いたかったのに」
「王妃様、それは」
「もう……わかってるわ。レイ、次に来た時には、ぜひお茶会に出てほしいわ」
「え、え、え?」
「貴女の義理の叔母様と、お約束してたのだけれど」
……義理の叔母?
王妃様と父がいとこ同士だったとは聞いたから、親戚がいてもおかしくはなかった。でも、それ以上の詳しい話を母からも聞いていなかった。
当然、王妃様は高位貴族のはず。父は貴族だたってこと……
というか、高位貴族や王族とのお茶会とか、無理だしっ!
「そんなことより、もっとレイの料理が食べられないのが残念だなぁ」
エルドおじさんが心底残念そうな顔で言うから、思わず私も笑ってしまう。
「うちに来たら、ホッズさんが作ってくれるよ?」
「私は、レイの料理が食べたかったのだ!」
まるで、子供みたいなことを言うおじさんに、テオドア王子まで、「たべたい! たべたい!」だなんて言い出す。
「おじさんがそんなのじゃ、テオドア王子がワガママになっちゃいますよ?」
ダメですよ? と注意すると、カイルと王妃様が、クスクス笑ってる。
ここに、国王一家がいるなんてことを忘れるくらい、ほのぼのとした空気に、私は幸せな気分になった。
0
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる