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第2章
013
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ちょっと呆然としながら見送っていた私。
「来たかと思ったら、あっという間に帰っちゃいましたね」
サカエラおじさんは、ポンポンと私の頭を軽くたたいた。
「カイルは忙しいからなぁ」
「おじさんだって、忙しいでしょ?」
「ん? そうだな。でも、私の仕事よりも、彼のほうがもっと大変だからなぁ」
どんな仕事なんだろう?
少し考えたけれど、あの美形がどんな仕事をしているのかなんて、まったく想像がつかない。
おじさんが私の肩を押しながら、食事をする部屋に向かおうとしたとき、静かに玄関のドアが開く音がした。
「……ただいま」
聞きなれない男性の声が、玄関の方から聞こえた。
「ショーン!」
その声に振り返ったサカエラのおじさんは、嬉しそうに足早に玄関に向かう。
玄関先にいたのは、 サカエラおじさんの一人息子、ショーンさんだった。
茶髪でサラサラの髪に、おじさんとは対照的にスラッと背が高い人。カイルは絶世の美女ならぬ美男子だったけど、ショーンさんも、そこそこカッコいい。町中で見かけたたら、何人かの女の人が振り返るかもしれない。
そのショーンさんは、とっても優秀だからって、国から学資を出してもらって、今は隣国の大学校に留学中だったはず。先行投資、というヤツだ。
この国では、普通は二十歳を過ぎていれば世の中に出て仕事を持っているものだけれど、ショーンさんは平民でも上級職に就くこともできるくらい優秀なのだそうだ。
それなのに急に帰国して……どうしたんだろう?
私の姿を見ると、急に不機嫌そうな顔をして、おじさんに話しかけもせずに階段を勢いよく上がっていく。
……あ、まずい。
そのままショーンさんが自分の部屋と思っているところに入ったら。
「……んだよっ!どういうことだよっ!」
……怒ると思った。私の姿を見ただけで、あんな顔をするんだもの。
今では私の部屋になっているのを知ったら、余計に頭にくるのは、当然かもしれない。階段を駆け下りてきたかと思ったら、サカエラおじさんにくってかかって来た。
「父さん、どういうことだよっ」
「仕方ないだろう、お前はまったく帰ってこないんだし。せっかく空いてた部屋だから、レイに使ってもらったんだ」
宥めるように話してたおじさん。
「なんだよ、いつも、いつも、レイ、レイって」
それなのに、その言葉を聞こうともしないショーンさん。二十歳とは思えないくらい……ガキっぽい。見かけはすっかり大人なのに。
「いつもって、お前と会えたのだって、一年ぶりくらいだろう。私が隣国に商売で行っても、会う時間すらないというお前と話す時間など、あるわけなかろうが!」
なんだか、どんどんヒートアップしていきそうな親子喧嘩に、私の方が怖くなってきてしまった。
「お、おじさん、私、別の部屋でいいです」
恐々とおじさんの腕に手をやると、それを見たショーンさんが私をいきなり突き飛ばした。
「レイっ!?」
ショーンさんの振る舞いに、驚くおじさん。
勢いがありすぎて、見事に尻もちをついてしまう。私のメガネはどこかに飛んでいってしまった。参った。世界がぼやける。
「だいたい、お前がいるから、父さんたちは離婚したんじゃないかっ!」
「……はぁ?」
唐突に出た、ショーンさんの言葉に、私はあっけにとられてしまった。
「来たかと思ったら、あっという間に帰っちゃいましたね」
サカエラおじさんは、ポンポンと私の頭を軽くたたいた。
「カイルは忙しいからなぁ」
「おじさんだって、忙しいでしょ?」
「ん? そうだな。でも、私の仕事よりも、彼のほうがもっと大変だからなぁ」
どんな仕事なんだろう?
少し考えたけれど、あの美形がどんな仕事をしているのかなんて、まったく想像がつかない。
おじさんが私の肩を押しながら、食事をする部屋に向かおうとしたとき、静かに玄関のドアが開く音がした。
「……ただいま」
聞きなれない男性の声が、玄関の方から聞こえた。
「ショーン!」
その声に振り返ったサカエラのおじさんは、嬉しそうに足早に玄関に向かう。
玄関先にいたのは、 サカエラおじさんの一人息子、ショーンさんだった。
茶髪でサラサラの髪に、おじさんとは対照的にスラッと背が高い人。カイルは絶世の美女ならぬ美男子だったけど、ショーンさんも、そこそこカッコいい。町中で見かけたたら、何人かの女の人が振り返るかもしれない。
そのショーンさんは、とっても優秀だからって、国から学資を出してもらって、今は隣国の大学校に留学中だったはず。先行投資、というヤツだ。
この国では、普通は二十歳を過ぎていれば世の中に出て仕事を持っているものだけれど、ショーンさんは平民でも上級職に就くこともできるくらい優秀なのだそうだ。
それなのに急に帰国して……どうしたんだろう?
私の姿を見ると、急に不機嫌そうな顔をして、おじさんに話しかけもせずに階段を勢いよく上がっていく。
……あ、まずい。
そのままショーンさんが自分の部屋と思っているところに入ったら。
「……んだよっ!どういうことだよっ!」
……怒ると思った。私の姿を見ただけで、あんな顔をするんだもの。
今では私の部屋になっているのを知ったら、余計に頭にくるのは、当然かもしれない。階段を駆け下りてきたかと思ったら、サカエラおじさんにくってかかって来た。
「父さん、どういうことだよっ」
「仕方ないだろう、お前はまったく帰ってこないんだし。せっかく空いてた部屋だから、レイに使ってもらったんだ」
宥めるように話してたおじさん。
「なんだよ、いつも、いつも、レイ、レイって」
それなのに、その言葉を聞こうともしないショーンさん。二十歳とは思えないくらい……ガキっぽい。見かけはすっかり大人なのに。
「いつもって、お前と会えたのだって、一年ぶりくらいだろう。私が隣国に商売で行っても、会う時間すらないというお前と話す時間など、あるわけなかろうが!」
なんだか、どんどんヒートアップしていきそうな親子喧嘩に、私の方が怖くなってきてしまった。
「お、おじさん、私、別の部屋でいいです」
恐々とおじさんの腕に手をやると、それを見たショーンさんが私をいきなり突き飛ばした。
「レイっ!?」
ショーンさんの振る舞いに、驚くおじさん。
勢いがありすぎて、見事に尻もちをついてしまう。私のメガネはどこかに飛んでいってしまった。参った。世界がぼやける。
「だいたい、お前がいるから、父さんたちは離婚したんじゃないかっ!」
「……はぁ?」
唐突に出た、ショーンさんの言葉に、私はあっけにとられてしまった。
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