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能力発現

梅雨入り Ⅵ

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 雨は、ザアザアと降る。
 シャワーの水は、ザーーーと出る。
 いくら雨が強く降りつけようと、シャワーの水流の強さを上回ることはないだろう。

 直線的で激しいシャワーから出るお湯は、けれど外の冷たい雨より落ち着く。シャワーの流水は、シャンプーを洗い流すと同時に、途方に暮れていた私に冷静さを運んできてくれた。

 家屋全体が、古き良き日本の風情を残した造りになっている城ケ崎邸であるが、浴室は清潔感のある最新式のものだ。シャワーを浴び終えた私は、身体がまだ少し冷えるので、湯舟に浸かることにした。かなり大きめの浴槽いっぱいにお湯が張られていた。使わなかったらもったいない。右足をお湯に入れてみると、まさに適温。熱すぎず、しかしぬるさは感じさせない。お風呂まで洗練されている? 流石は、城ケ崎家。

 あの奇妙な体験のあと、自暴自棄になった私は、短くない時間公園のベンチで、痛いほど降る雨に打たれていた。そんな私を、クラスメートの城ケ崎直子が偶然に見つけた。直子は、無言で私を彼女の家――今では珍しい本格的な日本様式の屋敷まで連れてくる(びしょ濡れの私を、電車の乗客たちは好奇の目で見ていた)と、躊躇いなく制服と下着を脱がせ、風呂場に押し込んできたのだ。
 普段は落ち着き払っていて、物腰柔らかな彼女だけど、さっきの目は有無を言わさぬ迫力があった。知識豊富で、頭の良い私の頼れる友人は、少し面倒見がよすぎるきらいがある。

 そんな彼女に心配をかけぬよう、いつもの自分らしく振舞えるよう気合を入れなおした。
「よっし、大丈夫」

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