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真梅雨
殺人世界 2019/6/21
しおりを挟む2019 6月21日。梅雨。
一日の授業が終わり、済栄マリア学院高等部は放課後をむかえた。運動部の存在しないこの学園では、部活で学校に残る者は必然的に少なくなる。例によって、二年一組の面々も帰りの支度を進めていた。
「バイバイ、真梅雨ちゃん!」
「さよなら、小崎さん。確か、今日は少し学校に残られるのでしたよね」
二人の女生徒が、教室を出ていく際、廊下側の一番後ろの席に座っていた小崎真梅雨に声をかける。
「ええ、少し。じゃあね。京香、直子」
小崎真梅雨は、二人の方へと、首だけを向けて、愛想のいい笑顔を浮かべた。愛姫県きってのお嬢様学校である済栄マリア学園。その中でも、特進クラスである二年一組は、良家の出身の者ばかりだ。先ほど、小崎真梅雨と言葉を交わした二人にしてもそうだ。御手洗京香は、愛姫の中堅企業の社長の一人娘。城ケ崎直子は、古くからこの愛姫で権力を持ってきた地主の家の跡取りだ。
ただ、出自で言えば、恐らくこの学園でも、真梅雨に勝る者はいない。東証一部上場企業をいくつも抱える、小崎ホールディングス。その財を一代で築いた天才、小崎征四郎の娘が、小崎真梅雨だ。親譲りか、容姿も運動能力も学校で一番での真梅雨は、学力においても特進クラスで一番。済栄マリアの特進は、愛姫を二分し、県立松川東と進学実績を競い合い、かなりの偏差値を誇っているのだが、その中でも真梅雨は他の追随を許さなかった。もっとも、ここ数日、松川東高校は臨時休業になっているのだが。
外を見やると、今日も雨。おそらく、教室の電気を消せば、かなり暗くなるだろう。真梅雨は、その藍と濃紺が混ざったような暗さが嫌いじゃないし、それを照らす古びた蛍光灯の光も嫌いじゃない。完全下校までは、まだ時間がある。真梅雨は、予定通り読書をしようと、学校指定のスクールバックから読みかけの文庫本を取り出す。
一日の授業が終わり、済栄マリア学院高等部は放課後をむかえた。運動部の存在しないこの学園では、部活で学校に残る者は必然的に少なくなる。例によって、二年一組の面々も帰りの支度を進めていた。
「バイバイ、真梅雨ちゃん!」
「さよなら、小崎さん。確か、今日は少し学校に残られるのでしたよね」
二人の女生徒が、教室を出ていく際、廊下側の一番後ろの席に座っていた小崎真梅雨に声をかける。
「ええ、少し。じゃあね。京香、直子」
小崎真梅雨は、二人の方へと、首だけを向けて、愛想のいい笑顔を浮かべた。愛姫県きってのお嬢様学校である済栄マリア学園。その中でも、特進クラスである二年一組は、良家の出身の者ばかりだ。先ほど、小崎真梅雨と言葉を交わした二人にしてもそうだ。御手洗京香は、愛姫の中堅企業の社長の一人娘。城ケ崎直子は、古くからこの愛姫で権力を持ってきた地主の家の跡取りだ。
ただ、出自で言えば、恐らくこの学園でも、真梅雨に勝る者はいない。東証一部上場企業をいくつも抱える、小崎ホールディングス。その財を一代で築いた天才、小崎征四郎の娘が、小崎真梅雨だ。親譲りか、容姿も運動能力も学校で一番での真梅雨は、学力においても特進クラスで一番。済栄マリアの特進は、愛姫を二分し、県立松川東と進学実績を競い合い、かなりの偏差値を誇っているのだが、その中でも真梅雨は他の追随を許さなかった。もっとも、ここ数日、松川東高校は臨時休業になっているのだが。
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