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しおりを挟むフワリとなんともいえない浮遊感に見舞われる。決して怖いわけではないけど、俺は眩しさに耐え切れず目を閉じて、兄ちゃんの手をギュッと握った。
「着きましたよ」
「……え?」
想像していた以上に“それ”はすぐだった。
アニさんの言葉を聞いて閉じていた目をゆっくりと開けると、もう先程の自然溢れる光景はそこにはなかった。俺が一瞬だけ目を閉じていた間に、なんと本当に瞬間移動をしていたのだ。今現在俺の視界に映っているのは、高級そうな赤い絨毯と、キラキラして派手なシャンデリアと、これまた高級そうなダイニングテーブルがある広く綺麗な部屋の中だった。
「すっごい!兄ちゃん、兄ちゃん!マジで瞬間移動しちゃったよ俺たち!」
「…………みたいだな」
「俺眩しくて思わず目を閉じちゃったよ!くそー、勿体ないことしちゃったなぁ。兄ちゃんはちゃんと見てた?」
「……ああ」
「本当?ねえねえ、どんな感じだった!?」
「……べつに。なにもない」
「え?」
「ただの無だ」
「……んー?そうなんだ」
兄ちゃんの言っていることは上手く俺には伝わらなかった。だけどもしかしたら本当にその通りなのかもしれない。もしまたこのような経験があれば絶対に目を閉じないでおこう。そうすれば兄ちゃんの言っていることが分かるはずだ。
「―――それで、俺たちに話すこととはなんだ?」
そんなことを思っている内に、兄ちゃんは早速アニさんに突っかかっていた。初対面の相手だというのに本当に失礼過ぎる。いつもよりも刺々しい兄ちゃんの対応に相変わらず冷や冷やさせられていると、アニさんは気にした様子一つ見せず、二つ分の椅子を引いて俺たちに座るように促してくれた。
断ることもできず、俺は「ありがとうございます」と言って椅子に座る。俺たち二人が椅子に座ったのを確認して、アニさんはゆっくりと話し始めた。
「あまり長々と説明するのはよろしくないと思いますので、それでは端的に話をさせていただきます」
「……お、お願いします」
「貴方達お二人がこの場にいらっしゃるのは、間違いなく私たちが呼び寄せたからです」
「呼び寄せた、ですか?」
「はい。……と言いましても、ゆずる様までもがこの場に来てしまったのは全くの予想外でした。恐らく召喚の際になんらかの問題が起こってしまったのでしょう。本当にゆずる様には申し訳ないと思っております」
つまりは俺は間違って呼ばれた存在ということなのだろう。アニさん達の目的は兄ちゃんを呼び寄せることのようだ。……もちろん悪意はないと思うけれど、それでもなんか少しだけ悲しい。だって俺はどこに居ても、役には立たないっていうことなのだ。
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