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俺のヒーロー

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「随分と呼吸が荒いな。何をされた?」
「…………そ……れは……」

胸を触られて、下半身を触られて、媚薬を飲まされた――、なんて子供が……アレスが居る前で言えるわけがない。
そう思ってアレスの方をチラリと向ければ、泣きそうな表情をしてこちらをジッと見ているアレスと目が合った。つい先程まで、男たちに切り掛かっていた同一人物とは思えないほど弱々しくて、おもわず守ってあげたくなるほどか弱い姿だ。

……気絶をしているだけなのか、それとも死んでしまったのか分からないが、全く動かなくなった男たちの姿をこれ以上見ないようにしながら、俺はアレスに向かってゆっくりと手を差し伸ばした。

「……おいで、アレス」
「っ、お姉さま……ですが、わたくし……」
「情けないことに震えが止まらないんだ。だからアレスにギュッてしてもらいたい。……ダメ、かな?」

媚薬の効果のせいなのか息が苦しくて仕方がない。だけどアレスを心配させないように、乱れそうになる呼吸を必死に整えてそう言えば、アレスは持っていた長刀を地面に落として、俺に泣きながら駆け寄ってきてくれた。

「……お姉さま!お姉さま……っ、わたし、わたし……っ!」

本来の男の姿であればこんなこと頼むことすら犯罪に近かったかもしれないけれど、今の女の姿であれば変に思われることもなくアレスの小さい身体を抱き締めてあげることができる。俺はアレスの温かい体温にホッとしながら、ヨシヨシと背中を撫でてあげた。

「……き、嫌いにならないでくださいっ」
「なんで?なるわけないだろ?」
「で、ですが、わたくし……!」
「アレスは俺のことを守ってくれたんだ。俺からしてみれば、アレスはヒーローだよ」

――――正直に言おう。本当はあの時のアレスは怖かった。屈強な男たちを躊躇もなく、いとも簡単に切り付けているあの様はどう考えても普通の女の子ではなかった。
だけど、それでも今の俺の胸の中に居るアレスはいつものアレスだ。それにアレスのお蔭で事なき済んだのは本当のことだ。あのままアレスが来なかったら俺は男たちに…………、そう考えるだけで、収まっていた震えがまたもや全身を襲ってきそうになる。

「本当に、ありがとう」
「……お姉さま……!!」
「レオさんも、ありがとうございます」
「……俺は特に何もしていない」
「そんなことありません。感謝してます」

俺だけではきっとアレスを止めることはできなかったと思う。だからレオさんがこの場に居てくれて助かった。

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