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記憶喪失
しおりを挟む確かに散々殴られ蹴られた結果、頭も打ったかもしれないけれど、だからといって記憶が混同してしまったなんてことは絶対にない。だから自分の性別を間違えるだなんてあるわけがないのだ。
「お姉さまのお名前と出身地を教えてくれませんか?」
「名前は星崎歩。産まれも育ちも日本の東京だ」
自信満々に言いきれば、目の前に居る女の子と男の人は無言で目を見合わせていた。
…………な、なんだよ。なんなんだよ、その反応は。何か問題でもあるのか?俺はきちんと答えきれたぞ。何もおかしなことは言ってないだろ。
「…………お姉さま……」
「……な、なに?」
俺の方を向き直すと、困ったような表情を浮かべる女の子。今から何かを言うであろう女の子の言葉を早く聞きたいはずなのに、どこかそれを聞くのを怖いと感じてしまっている自分も居る。だけど俺が何を思おうと、女の子はそのまま口を開く。
「私たちの知識不足なだけかもしれませんが、そのような国は聞いたことがありません」
「それに聞き慣れない名前をしているな」
「………………は……?」
聞いたことがない国ってなんだよ。聞き慣れない名前ってなんだよ。そんなの絶対におかしいだろ。
おかしいのは俺じゃなくて目の前の二人なんじゃないか?そう思うものの、恰好や立ち振る舞いから気品も常識も持ち合わせていそうな二人がおかしいとは到底思えない。…………ということは、つまり……。
「お姉さまだけにお名前を名乗ってもらうのは失礼でしたね。申し遅れました、わたくしアレス・スタンレーと申します」
「…………あれす、すたんれー……」
「俺はレオ・スタンレーだ」
「…………れお、すたんれー……」
全く聞き慣れない二人の名前に俺は放心してしまう。まるで外国人のような名前だ。映画や異世界物のアニメなどでしか聞いたことがない。確かに二人は目の色も髪の色も黒色ではないし、日本人離れをした顔立ちをしているけれど、それはコスプレをしているだけだと思い込むようにしていた。異国の人だとは思いたくなかったのだ。
だが、二人の名前を聞いて改めてそれを実感させられる。彼らは俺とは全く違う生き物なのだと。
「ち、ちなみに此処の国の名前はなんですか?」
「サドバルトだ」
「……さどばると……」
「……お前、大丈夫か?」
「…………あの……、俺……」
「どうした?」
「……その……もしかしたら、記憶が曖昧なのかもしれません……」
本当は記憶はハッキリとしているけれど、もうそういうことにしておこう。つまり、俺は深く考えるのを諦めたのである。
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