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暴行を受けた結果

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「………………、ん……」

額に何か冷たいものがあてがわれた。それが何なのかは分からない。……分からないけれどそのヒヤリとした感覚は、熱を持った身体にはとても心地良い。目を開けて確認するのは億劫ながらも頬が緩みそうなほど気持ちが良くて、そのまま蹲るように体勢を変えれば、頭上から聞き覚えのある男の人の声と、聞き覚えがない女の子の声が聞こえてきた。

「あら、どうしましょう」
「どうかしたか?」
「いえ、大したことではないのですが……この体勢ではタオルで冷やすことはできなくなってしまったのでどうしたものかと……」
「そのままでいいんじゃないか?」
「ですが、額に濡れタオルを置いた瞬間とても気持ち良さそうな表情をされたものですから」
「…………そうか」

どうやら俺はあの男の人に運んでもらっている最中に眠ってしまったようだ。つまりは俺はあの人の家に居るということだろうか。随分と世話になってしまっているようだ。
…………ということは、もしかしなくても、彼らの話の中心人物は俺なのだろうか。そうだとしたら、俺なんかの行動でそこまで悩んで欲しくない。悲しいことに乱暴に扱われるのさえ慣れてきたくらいなんだ。適当なくらいで大丈夫なほどだ。そんなことを考えていると、ふと大きく熱い手の平で額に触れられて、俺は反射的に閉じていた目を開けてしまった。

「………………あ……、」

そうすれば、俺の額に触れていた手の主とバチリと視線がぶつかった。その人物はやはりというべきか、先程の軍服を着ていた男の人で、明かりのある場所で見る彼の姿は暗闇の中で見た時の二倍以上男前だと感じてしまった。

「……悪い。起こしてしまったな」
「い、いえ。丁度目が覚めたので……」

まあ、嘘ではないと思う。このまま重症人のように手厚く看病し続けてもらうのは気が引けて、ベッドに横にしていた身体を起こそうと力を入れれば、それよりも先に男の人に止められてしまった。

「待て、起きるな」
「…………で、ですが……、」
「先程医者に診てもらったが骨が数本折れていた。それに腹部は酷く腫れ上がっているようだ」
「…………まじですか……」
「……ああ」

そりゃあ、痛むはずだ。何も悪いことしていないのにどんだけ俺は理不尽な目に遭ったんだよ、ちくしょー。流石にそれを聞いてなお、身体を起こそうとは思えず、俺は素直にベッドに横になっておくことにした。
そうすれば横になった瞬間に、再び冷たいタオルを額に置かれた。それを丁寧に置いてくれた人を見るように顔だけを動かしてそちら向ければ、まだ幼なさが残る可愛らしい少女と目が合った。
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