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わたし、勇気を出します
しおりを挟む抱いてしまった疑問を深く考えずに口に出して投げ掛ければ、逢坂さんはすぐさま返答をしてくれました。
「彼女が女性ではなく男性だというのならまた少し話は変わるかもしれないな」
「……え?」
「つまりは、脈が全くないのにそういう素振りを見せるのは相手にも失礼だということだ」
「…………脈……」
ということは、少なからず逢坂さんは、明美さんに恋愛感情は抱いていないということでいいのでしょうか……?それを聞いて勝手ながら心から安堵をしてしまう自分が居ます。逢坂さんに好意を抱いている明美さんには大変失礼なのかもしれませんが、とてもホッとしているんです。だって明美さんは容姿も性格もなにもかも私より秀でており、もし逢坂さんがそんな彼女に心を揺らめかせているのなら勝てる要素が一つもないですから……。
「明美さんも気を付けるといい」
「……?」
「君はとても良い人で、どんな人にも公平に優しさを与えているのだろうが、男というのはとても単純な生き物だ。きっと誤解をする奴も出てくるだろう」
「……そ、そんなことは……、」
「きちんと断る勇気も必要だぞ」
「……逢坂さん」
「分かったか?」
「……は、はい」
私は逢坂さんが思っているような良い人ではないですし、そもそも私なんかを好きになってくれる物好きなんてそうそう居ないと思います。だから、『そんなことはないです』と否定をしたかったのですが、逢坂さんはそんな隙すら与えてくれませんでした。ですから私は、ここは素直に頷いておくことにしておきました。
すると逢坂さんは私の心の籠っていない返事に気付いたのか、更に言葉を続けてきます。
「人見さん」
「……はい?」
「今週の日曜日一緒に出掛けないか?」
「…………、え?」
「勿論仕事ではない。これは個人的な誘いだ」
「…………、」
…………多分、だと思いますが。話の流れ的にも、逢坂さんは先程言っていたように私に“断る勇気”を与える切っ掛けを与えてくれているんだと思います。……ですが、ですがそれは今の私には到底無理な話です。
だって私はあなたのことを好きですし、そんな好きな相手からお誘いをいただけて断るだなんてできません。それに逢坂さんは冗談めかして言っているつもりなのでしょうが、あなたの纏うオーラが全く嘘を吐けていないのです。
「どうした?断らないのか?」
「………………は、はい……」
「…………人見、さん?」
「勿論考えなしで言っているわけじゃないですよ……?」
「…………それは……、」
「逢坂さんが相手だから、断らないんです」
『この意味分かってくれますか?』と恐る恐る付け足した後、彼を見て私はハッとしてしまいました。
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