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わたし、後退します

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「あ、あの方は彼氏とかそういうのではありません……」
「あら?そうなんだ?」
「は、はい」
「へー。親密そうに見えたから、てっきりそう思っちゃった」
「…………」

……私は気付いてしまいました。いえ、嫌でも分かってしまいましたというべきなのでしょうか。
明美さんが纏っているオーラは赤紫色とオレンジ色とピンク色が入り混じっていて、独特な色合いを見せています。つまりは、『嫉妬と喜びと恋心』を抱いているということです。こんなオーラを見せられてしまったら分かってしまいます。

明美さんは逢坂さんのことが好きで、私に嫉妬しているということに……

「彼、随分とイケメンだよね」
「……そうですかね?」
「えー、そうだよ!私あんなに格好いい人を今まで見たことないもん!」

そうなのですか、それを聞いて少し驚きました。申し訳ないことに、纏っているオーラの方ばかりに目が行ってしまいますので、あまり人の顔は見ておらず、ぼやけて見えています。

「あの人の名前教えてもらえないかな?」

私には断る理由なんてありません。……それに断れる状況でもないようです。
彼女のオーラが有無を言わさぬ色を発しているので、私は恐怖でおもわず一歩後退ってしまいました。

「あ、あの方のお名前は、逢坂陽平さんです」
「逢坂陽平さん、ね。教えてくれて、ありがとう」
「……はい」
「二人が付き合ってないなら、私が狙っちゃってもいいよね?」
「…………」
「おーい?聞いてるー?」
「……私にはなにも口出しする権利などありませんので」
「あははっ、なぁに?それじゃあ、まるで私が脅してるみたいじゃん」
「…………」

……人にここまで負の感情を抱かれたのは久し振りのことですので戸惑ってしまいます。
それに、私は逢坂さんに雇っていただいているだけの存在です。明美さんが逢坂さんに一目惚れをしてしまい、お付き合いされたいと言うのでしたら、私には口出しする権利や止める権利なんてもちろんありません。

「…………」

…………だけど、なぜでしょうか。

『(……胸の奥がチクチク痛む気がします)』





ーーーーーーーーーーーーー




「……人見さん?」
「…………」
「人見さん?」
「…………、え?」
「随分と深く考え事をしているようだが、大丈夫か?」
「す、すみません」

作業の途中だというのに、考え事をし過ぎて手が止まっていました。
……ですが逢坂さんを見ていると、嫌でも昨日の明美さんとのやり取りを思い出してしまい、複雑な気持ちになってしまいます。『協力をして欲しい』という類のことは言われませんでしたが、あの様子でしたらなんらかのアクションを起こしてくるかと思います。

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