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わたし、嬉しくなります

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「とても美味しかったよ、ご馳走様」
「お粗末様です」
「久しぶりに家庭料理を食べた気がするよ。ありがとう」

片付けられる範囲で掃除をし終えた後、私は夕食を作りました。とはいいましても、本当に簡単なものです。玉ねぎとわかめのお味噌汁にサラダに生姜焼き、それだけです。ですが逢坂さんがとても嬉しそうに食べてくれて、綺麗に完食してくれました。それが私にとっても、すごく嬉しいことです。
逢坂さんの家庭環境は分かりませんし……それについて私から不躾に訊くことはしませんが、私なんかの手料理で喜んでくれるのならば、これからも精一杯真心込めて作りたいと思います。……それが私のお仕事ですから。

「今後何かリクエストがあれば言ってください。私が作れるものであれば何でも作りますので」
「そうか、ありがとう。こんな毎日が続くのなら、これから仕事が終わって帰って来るのが楽しみだよ」
「あんまり期待し過ぎないでくださいね」
「ははっ。まあ、俺は君と話せるだけで十分なんだけどな」
「……そ、そうですか?」
「ああ」

少し緊張はしますが、嬉しそうな逢坂さんを見ていると心がポカポカします。人に求めてもらうのって、自分の行動で喜んでもらうのって、すごく嬉しいのですね。こんな気持ち、久し振りに感じました。

「色々と働いて疲れただろう。後はゆっくり休んでくれ」
「いえ、就業時間までまだやれることはいっぱいあるので」
「人見さんが真面目で優秀なのは分かっているが、そう頑張り過ぎるな」
「……で、ですが」
「働く上で息抜きするのも大事だ。それともなんだ?俺の話し相手になるより、仕事をする方が楽か?」
「い、いえ!そんなわけでは……」
「ふっ、冗談だよ。ほら、座ってくれ」
「は、はい」

相変わらず逢坂さんは、説得をさせるのがお上手です。この人が職業柄とても口達者で優秀なのか、それとも私が言い包められやすいのか……おそらく両方でしょう。楽しそうに微笑む逢坂さんに促されるまま、私は逢坂さんの座っている隣に腰を下ろしました。……勿論少し距離を置いてです。

「お疲れ様。色々家のことを良くしてくれてありがとう」
「こちらこそ本当にありがとうございます。こんなにも良くしてもらえて感謝しかありません」
「そうか。少し無理やり事を運んでしまったが、君にそう思ってもらえているなら良かった」

オレンジ色とピンク色が入り混じっている逢坂さん。こんな近い距離でその温かいオーラを浴びていると、私の心までその感情に染まってしまいそうです。少しずつ自分の体温が高くなってくるのを感じていると、逢坂さんは胸ポケットからスマホを取り出しました。

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