20 / 41
わたし、苦しくなります
しおりを挟む「ふっ」
「な、なぜ笑うのですか?」
「いや、すまない。君の反応が面白くて、ついな」
「……?」
馬鹿にされているのではないと思うのですが、いったいそれはどういう意味でしょうか。如何せん、逢坂さんの纏っているオーラはピンク色ばかりなのでどうも分かりません。
瞬きを何度も繰り返し目をパチパチとさせながら、私は首を傾げました。
「まさか自分にこういう気質があるとは思っていなかった」
「……?」
「俺の言動に逐一良い反応してくれるから、つい苛めてしまったよ」
「……そ、それって」
つまりは、私が過剰なまでに反応をしていたから、余計に困らせていたということでしょうか?
「……っ、」
まるで『好きな子を苛める子供』のようなことを言う逢坂さんに、私は思わず言葉を失ってしまいました。
「(……逢坂さんは、私を試しているのでしょうか?)」
それとも私に抱いてくださる好意を隠す気など逢坂さんにはないのでしょうか。これでは私が人のオーラを見えない普通の人間だとしても、逢坂さんの気持ちに気付いてしまうのではないでしょうか。
再度体温が上昇していくのを感じながら、私は冷静になるために熱くなった息を吐きました。
「(……いえ、それはないでしょうね)」
これだけのことで逢坂さんが私のことを好いてくださるという考えには至らないでしょう。やっぱりこれは私が『逢坂さんのオーラ』を見て感情が分かっているからこそのことだと思います。
つまりは私は、なるべく平然とした態度をしなければいけないということです。どれだけ逢坂さんの言動に心を揺さぶられようともです。それが普通の人の取る行動でしょうから。
「すまない。なるべくこういうことは控えるよ」
「……そうしてくださると、助かります」
そうしてくだされば、私の心臓も保つことでしょう。私は左胸の辺りを軽く押さえながらそう思いました。
「ふっ。やっぱり君は変わった人だ」
「え?」
「ああ、いや。変な意味ではないよ。むしろいい意味だ」
「そうですか?」
「ああ。君と居ると楽しいよ」
「……ありがとうございます」
……おかしいですね。平然とした態度を取りたいはずなのに、やっぱり逢坂さんと話していると心臓が痛みます。
「これ以上は本格的に邪魔にならないように、俺は自室に居るよ」
「は、はい。分かりました」
「なにかあったらすぐに言ってくれ」
「はい」
……まるでキュウッと締め付けられるようなんです。
私はそれを不思議に思いながらも、なるべく気にしないように仕事に取り掛かりました。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる