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わたし、片付けます

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「……ごほっ。あー……」

彼にはサイズが少しきついことを告げる気はなかったのですが、職業柄人間観察に秀でている逢坂さんは、私の行動を見てすぐに気付いてしまったのでしょう。わざとらしく咳払いをした後、大袈裟なほどに私から視線を逸らしました。

「……後で他のサイズがないかどうか、念のために探しておくよ」

そう言った逢坂さんの纏っているオーラは、相変わらずキラキラした桃色で。……だけどそんな彼の頬の色は、纏っているオーラとは少し違って赤色に染まっていました。

「……あ、ありがとうございます」

そんな彼の姿を見てしまうと、感情がひしひしと伝わってきて、私までとても恥ずかしくなってきます。

「(彼の想いが伝染してしまいそうです……っ)」

なんでこんなにも私のことを好いてくれているのでしょう。ここまで逢坂さんに好意を抱いてもらえるほど特別な何かをした記憶は私にはありません。『人が恋に落ちるのは一瞬』というのをよく聞きますが、それが私なんかが対象になるとは到底思えません。
こんな状況がこれからもあるかと思うと、心臓が保つかどうか不安になってきます。
私は軽く頭がクラクラするのを感じながら、気持ちを落ち着けるために深く息を吸い込みました。

「……それに、あれだ」
「……?」
「もし嫌になったり動き難かったら、自由な服装で過ごしてくれ」
「は、はい。分かりました」

ひとまずこの話は一段落ついたようです。
私はそのことに少し安堵しながら、深く吸った息を吐き出しました。

「そうだ。これを君に渡しておかないといけなかったな」
「なんでしょうか?」
「この家の鍵だ」

そう言われて私は手渡された鍵を受け取りました。

「俺は朝が早いから、君がこの時間帯に出勤してくれた時は勿論居ないだろう。だから好きに入ってくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
「帰りは大体18時半くらいになると思う」
「了解です。それでは逢坂さんがご帰宅されるまでに、夕ご飯をお作りしておきますね」
「ああ、助かるよ。ありがとう」

キーホルダーも何一つ付いていない鍵。その大切な鍵を私は鞄にしまいました。

「本日はまずは何をすればいいでしょうか?」
「……そうだな。とりあえずこの散らかっている部屋をどうにかしないといけないな」
「はい、分かりました」

まずは読まれたまま直さずに放置されている本の整理から始めましょう。そう思って、乱雑に積み上げられた本の山に手を掛けた時でした。

「逢坂さん?」

なぜか逢坂さんまでもが本の山を持ち上げたのです。

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