16 / 41
わたし、片付けます
しおりを挟む「……ごほっ。あー……」
彼にはサイズが少しきついことを告げる気はなかったのですが、職業柄人間観察に秀でている逢坂さんは、私の行動を見てすぐに気付いてしまったのでしょう。わざとらしく咳払いをした後、大袈裟なほどに私から視線を逸らしました。
「……後で他のサイズがないかどうか、念のために探しておくよ」
そう言った逢坂さんの纏っているオーラは、相変わらずキラキラした桃色で。……だけどそんな彼の頬の色は、纏っているオーラとは少し違って赤色に染まっていました。
「……あ、ありがとうございます」
そんな彼の姿を見てしまうと、感情がひしひしと伝わってきて、私までとても恥ずかしくなってきます。
「(彼の想いが伝染してしまいそうです……っ)」
なんでこんなにも私のことを好いてくれているのでしょう。ここまで逢坂さんに好意を抱いてもらえるほど特別な何かをした記憶は私にはありません。『人が恋に落ちるのは一瞬』というのをよく聞きますが、それが私なんかが対象になるとは到底思えません。
こんな状況がこれからもあるかと思うと、心臓が保つかどうか不安になってきます。
私は軽く頭がクラクラするのを感じながら、気持ちを落ち着けるために深く息を吸い込みました。
「……それに、あれだ」
「……?」
「もし嫌になったり動き難かったら、自由な服装で過ごしてくれ」
「は、はい。分かりました」
ひとまずこの話は一段落ついたようです。
私はそのことに少し安堵しながら、深く吸った息を吐き出しました。
「そうだ。これを君に渡しておかないといけなかったな」
「なんでしょうか?」
「この家の鍵だ」
そう言われて私は手渡された鍵を受け取りました。
「俺は朝が早いから、君がこの時間帯に出勤してくれた時は勿論居ないだろう。だから好きに入ってくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
「帰りは大体18時半くらいになると思う」
「了解です。それでは逢坂さんがご帰宅されるまでに、夕ご飯をお作りしておきますね」
「ああ、助かるよ。ありがとう」
キーホルダーも何一つ付いていない鍵。その大切な鍵を私は鞄にしまいました。
「本日はまずは何をすればいいでしょうか?」
「……そうだな。とりあえずこの散らかっている部屋をどうにかしないといけないな」
「はい、分かりました」
まずは読まれたまま直さずに放置されている本の整理から始めましょう。そう思って、乱雑に積み上げられた本の山に手を掛けた時でした。
「逢坂さん?」
なぜか逢坂さんまでもが本の山を持ち上げたのです。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる