わたしオーラが見えるんです！

わたし、メイドになります

「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「改めまして、今日からよろしくお願いします」
「こちらこそお世話になるよ」

現在15時です。おはようという挨拶はそぐわない感じがしますが、今日初めて顔を合わすのですから問題はないでしょう。
それになんと今日は、私のお仕事開始日なのです。初めての職場に緊張と高揚感が高まってきました。

「…………」

しかし、緊張する私とは真逆に、逢坂さんのオーラは桃色にキラキラと輝いております。

「……逢坂さん？」
「っ、いや、随分と似合っているなと思ってな」
「あ、ありがとうございます」

『似合っている』というのは、私の今の恰好のことを見て言ってくださったのでしょう。
……なんと私、お貸し頂いたメイド服を着ているんです。

「だが、大丈夫か？無理しなくてもいいんだぞ」
「いえ、折角お貸し頂いたのですから、有難く着させていただきます」
「そうか。しかしいくら新品だからといっても、祖父の代に購入していたものだからな。汚れとかはなかったか？」
「はい、袋に入っていたので大丈夫そうです」

どうやら逢坂さんのお祖父さんの頃のメイドさんが着用していた時の制服のようです。丈も長く本格的なメイド服を着れて、少し感動している自分が居ます。

「（なかなかこういう機会ないですからね）」

私にも女の子らしい感性があったようで、こういう可愛いらしい服を着てみたいという欲が勝ってしまいました。それになにより、お仕事をする時の制服があると気合が入る気がします。紺色の長いスカートの丈を軽く掴み持ち上げて、内心浮かれていると逢坂さんが軽く笑ったことに気が付きました。

「とても似合っているし、君が気に入ってくれたのならなによりだ」
「……っ、」

逢坂さんの言っていることがお世辞ではないことは、彼の纏っているオーラの色で一目瞭然です。
……それに気付いてしまうと、嬉しいけれど、余計に照れてしまいます。

「……ありがとう、ございます」

私は恥ずかしいという感情を隠しながら、小さな声で再度お礼を述べました。

「しかし、サイズの方は大丈夫だろうか？」
「……サイズ、ですか」

逢坂さんのその言葉に私は『はい、大丈夫です』とすぐに答えることができませんでした。
なぜなら少し胸部の辺りがきついと思っていたからです。ですが苦しいほどでも不快なほどではないので、言う必要はないと思います。……それに箇所が箇所なだけに、それを男の人である逢坂さんに伝えるのはとても恥ずかしいですし。

……しかし、確認するように胸の辺りを手で押さえて、恥ずかしそうに俯く私を見て、彼はどう思ったでしょう。