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わたし、気付きます
しおりを挟む「そこで本題なのだが、」
「はい」
「……もしよければなのだが、人見さんにはこの家のハウスキーパーとして働いて欲しいと俺は思っている」
「……ハウスキーパー」
「ああ」
その言葉を聞いて、ようやく私は全てのことを理解できました。
『……君は最低限の家事ができるか?』とあの日訊ねてきたのは、こういうことだったんですね。
「どうだろうか?」
「……私で勤まるんでしょうか?」
確かに最低限の家事はできると思います。父子家庭で育ってきて物心付いた時から二人の弟の世話をしてきましたから。ですが専門的な知識を持つ方には手も足も出ないでしょうし、なによりこのような立派な豪邸の家事をこなせる自信は、悲しいことに今の私にはありません。
…………だけど。逢坂さんが私を必要としてくれるのでしたら、その言葉に甘えてもいいのでしょうか?
「……逢坂さんは、」
「ん?」
「逢坂さんは、私なんかでよろしいのですか?」
「なにを言う。君だからいいんだ」
「……私だから?」
「ああ。他の人を雇う気なんて更々ない。それならこのまま一生散らかった家で過ごす気だ」
「…………」
逢坂さんは、そう自信満々に言い放ちました。
私に気を遣って言ってくれた言葉なのかもしれませんが、すごく嬉しく感じました。
「…………」
…………ですが、私は気付いてしまったんです。
普通の人ならば、……私のこの気持ちの悪い能力がなければ気付かなかったでしょうが、私は嫌でも見えてしまうので気付いてしまったのです。
「それに言っただろ。俺は人見さんと居ると落ち着くんだ」
「……逢坂さん」
「だから、引き受けてくれないだろうか?」
「…………」
そう言って逢坂さんは労働契約書を手渡してくれました。……だけど今の私にはそれに目を通す余裕などなかったのです。
…………なぜなら。
「(……ピンク色)」
逢坂さんが纏っているオーラが、あまりにも濃いピンク色をしていましたから。
以前彼から一瞬だけ見えた薄いピンク色とはレベルが違います。もう勘違いや気のせいとか見間違いという次元ではありません。
「(なんで、見えてしまうんでしょう……)」
……彼は。逢坂さんは。
私に好意を抱いてくれているのです。勿論恋愛的な意味でです。
「人見さん?」
「…………」
こんな時どうしたらいいのでしょうか。誰でもいいから教えて欲しいです。
逢坂さんは私に色々な初めて与えてくるのです。どれも嬉しいものでしたが、このように異性から恋愛感情を向けられたことも初めてなものですから、どうすればいいのか分かりません。
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