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わたし、照れます

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「……え?えっ?私変なこと言ってしまいましたか?」

それともおかしな行動でも取ってしまったのでしょうか。隣で笑う逢坂さんを見て、私はあたふたと戸惑います。
しかし困惑する私とは逆に、逢坂さんは更に笑みを深くして、こう言いました。

「いや、すまない。目を輝かせて周りを見渡す人見さんが可愛くて、ついな」
「……か、可愛い!?」
「ああ。あとここの家の所有権は今俺にあるから、他は誰も来ないよ」
「ええっ!?」
「ふっ。君は本当に新鮮な反応をしてみせるな」

だって、驚きの連発です。
こんな豪邸に住んでいるのが目の前に居る逢坂さんで、しかもそんな逢坂さんに可愛いと言われたのですから……。

「(男の人にそんなことを言われたのは初めてです……)」

私は自分の頬が徐々に熱くなるのを感じ、それを隠すように頬を手で覆いました。

「……私、てっきりすごいお方と面接をするのかと思って緊張していました……」
「そうか。だからそんな恰好をしていたのか」
「……は、はい」

『そんな恰好』というのは、私のスーツ姿のことでしょう。

「面接なんて今更しないさ」
「そ、そうだったんですか」

“君のことを欲しがっている職場がある”といっていたので、気合を入れて面接の予行練習をしてきたのですが、どうやらその必要はなかったようです。おもわず私はそのことにホッと安心してしまいました。
……面接は本当に苦手でしたから、一気に気が楽になりました。

「……ところで、逢坂さんは私をどういう意味で雇ってくれるんですか?」

先日は詳しいことは聞けずに居たので、とても気になります。

「そのことなんだが、……人見さんはこの光景を見てどう思う?」
「……えっと、とても広いお部屋で高級そうな物があるなぁと思います」
「それだけか?」
「……あとは……、」

周りを見渡せば、先程も思った通り高級そうな装飾が目に入ります。
……そして次は。ソファに乱雑に脱ぎ捨てられた服と、高く積み上げられた本の山が目につきました。
正直なところ、綺麗に片づけられたお部屋ではありません。ですがそれをこの家の持ち主である逢坂さんに素直に告げられず戸惑っていれば、逢坂さんは苦笑いを浮かべました。

「そうなんだ、俺は家事全般が苦手なんだ」
「……そうなんですか」
「人見さんが来てくれると分かって、これでも頑張って片づけたつもりだったのだが……、全く駄目だな」

とても思いやりのある良い方で、素晴らしいご職業に就いている方にでも、苦手なところがあるのだと知って、勝手ながら少し親近感が湧きました。

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