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本編

王として守るべきもの

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 それは陽が傾き始めた頃。
 東の街に差し掛かろうとしてた時、6人ほどのエプトの小軍隊と遭遇した。

 正直かなり動揺した。
 ナジュムの温かな背中から伝わる彼の笑顔が幸せだと思えた日の――翌日のことだったからだ。

 突然全身を突き刺されたような絶望が心を叩いたが、今まで都合が良すぎただけで、これが本来のあるべき道だとも思った。


「東の街にシェバの"元"女王と王子が逃げてくるという情報が入ったが、何か知らないか」
 武装したエプト軍は嫌味たらしくイフラスに話しかける。
「知りませんわ。それ、誰からの情報ですの?」
 流石イフラス。動揺する素振りは一切見せずに噂話に食いつく平民を見事に演じてみせた。
「首都からの有力な情報だ」
 首都から。漏れるとしたらヤーコプの店だろうか。
 と私は僅かに俯く。

「……見たところ、貴族のようだが。……主は誰だ?」
 疑われるような視線に、緊迫した空気感が一気になだれ込んできた。

 ナジュムが「わたし」と言いかけ、その姿に焦った私は咄嗟にその手を制した。
「――っ。何かあったら女官たちを連れて逃げろ」
 早口でそう耳打ちすると、ナジュムはこの世の終わりを見たかのように顔を真っ青にさせる。

 そして意を決して私が踏み出そうとすると、声なき声で「おやめ下さい! どうか!」と懇願するようにナジュムは私の腕を強く掴んだ。
 これほどまでに必死な彼の姿は初めてのことで、私の表情も歪み始める。
 込み上がる感情を押し殺して、その手を振り払おうとした時

「私です」

「え――」
 その声に、呼吸を忘れた。

 私とすれ違う時に「お逃げ下さい。ナジュム殿を離してはなりませんよ」といつもの様に穏やかに告げるアビドが、エプト軍の前へと進んでいく。

 幸せを感じていた日々の終わりを告げる音が聞こえた気がした。
 その予想外の光景に熱を振り払う事を忘れてもなお、ナジュムは私の腕を強く掴んだまま離さなかった。

 するとエプト軍の1人がアビドの前にシェバ国の王家の紋章を取り出し、それを地面に投げ置く。
「これを踏めないのなら、全員斬る」
 アビドは平然を装い、その紋章を見つめてとぼける。
「果たして、これは本物の紋章でしょうかね」
「何を言っている! 早くしろ!」
 苛立つエプト軍。
 先代の頃からシェバ国に長く仕えてくれたアビドに、紋章を踏ませる訳にはいかない。
 生き延びて欲しいといえど、アビドにも王家に長く仕えた誇りがあるだろう。
 私は焦りながらも考えた。
 今、女王として守るべきものは、ユリウス。
 そして――。

 エプト軍が6人。
 もし、ここで全滅する事が出来たなら……と、とある作戦を思い付いた。

 多少強引ではあるが、次わざとエプト軍に出くわしてしまえば、この者たちがユリウスを殺したと言うことが出来る。
 そうすれば、ユリウスを追う事を諦めさせる時間を稼げるだろうと。

 ――やれるのか?
 そう自問自答した。

 砂漠でナジュムとの日々に幸せを感じてしまった代償は、女王としての責任を果たすことで償えるのだろうか。

 私の腕を絶対に離さまいと強く掴む熱が、その決心を鈍らせる。
 心のどこかで、生きることを諦めながらも、それでも生きていられると思っていたのではないか。
 永遠など存在しないと言いながら、どこかで永遠を期待していたのではないか。

 いざ命の危険を前にすると、足がすくむ自分がいた。
 自らの命を犠牲にすることで、ユリウスを守れるのなら何の悔いもない。それは女王としての覚悟でもあり、母としての覚悟でもあったはずなのに。

「――っ!」
 私は決心を固めその熱を持つ手を振り払い、懐の刀に手をかけた。
 振り払った先の彼の手は酷く震えていた。
 私は堪えきれずに、呆然と立ち尽くし私を強く見つめるナジュムから目を逸らす。

「イフラス! バシーラとテラサを連れて遠くに離れてろ!」
 後ろにいるイフラスに耳打ちをした。
「えっ」
「早く!!」
「は、はい!」

 イフラスがバシーラとテラサが私達と距離を取ったのを確認すると、深く息を吸った。

「全滅させろ! ユリウスを殺したのはこの者たちだ!」

 マリクはその手があったか……! とでも言いたそうに顔を煌めかせ「承知いたしました」と刀に手をかけた。
 私も懐刀に再度手をかけると、ナジュムは複雑な表情を浮かべて刀に手をかける。

「やれ」

 私の声と同時にアビドは刀を引き抜き、すかさず目の前のエプト軍を斬りつけたのを合図に、私とナジュムとマリクはエプト軍に前進した。

「お前、まさか女王か――っ」

 私は幼い頃から武術にも秀でた優秀な王女だった。
 この国には王女が1人しかいないからと、自分の身を守れるように父は厳しい訓練を私につけた。
 もっとも、私は訓練が楽しかったから厳しいなどと感じたことはなかったが。

「誰か1人抜けろ!」
 情報を伝える為にエプト軍から抜けようとする1人を私は見逃さずに剣を交えた。
 ただ、向こうは長剣で武装している。私は小刀だけ。
「くっ」
 小さな傷が増えていく。
 実力は私の方が圧倒的に上だとしても、知恵を絞らなければ勝てない。

 片足で腹に蹴りを入れ倒れた所で、急所をすかさず刺した。
 そして、後ろから斬りかかろうとする者に即応戦する。

 テラサが丁寧に洗ってくれた白いワンピースには血痕が付き、土に煤けては所々破れていく。
 すると、エプト軍が不意に後ろから私の足を引っ掛けて、私は尻もちをついた。
 ――まずい斬られる……!
 素早く動いたとしても怪我は免れないだろう。

 ――なら、もう、いっそこのまま斬られてしまえば――

 そんな諦めが一瞬頭を過ぎった隙に刀を振り下ろすエプト軍が見えた。

「っセイル様!!」
 切羽詰まった声が私の元まで駆けてきて、私の前で振り下ろされるはずだったはずの刀を止めた。
「セイル様! 大丈夫ですか!」

「……っ」
 様々な想いが浮かび上がってしまう前に私は立ち上がってすかさず応戦した。
「ありがとう、ナジュム」

 残り2人のエプト軍となった時、「アビド様!!」悲痛なマリクの叫び声が耳を掠めた。
「……なに?」
 目の端で声の方を確認すれば、アビドの腹から酷く出血しているのが見えた。

「アビド!」

 ナジュムが私の目の前に居たエプト軍の首を掻き切ってくれて、私はすかさずアビドの元へ駆け寄った。

「アビド……! 大丈夫か!!」
 倒れているアビドを抱き起こし、頬を軽く叩いた。
「ああ、セイル様……」
 血に塗れた体に、痛みに顔を歪めるアビド。
「……痛いだろう、少し待て」
 ユージンを刺した時の感覚がフラッシュバックしたように思い出され、アビドを抱える手から震えが止まらなくなる。
「……セイル様、お願いがあります」
「なんだ!?」

 ――アビドは右手でぎこちなく私の左腕を掴むと、震える呼吸と共にこう言った。
「私めにとどめを刺してはくれませんか……」
「――っな! な、何を言っている!」
 アビドからの予想外の言葉に動揺を隠しきれずに声をあげてしまう。

「……酷い、痛みで……老体には、こたえるのです」
 アビドはいつもの様に軽く微笑むと「お願いですから」とまた痛みに顔を歪ませながら私の腕を強く掴んだ。
 その腕にはアビドかエプト軍かの血がべっとりと付いていた。

 ユージンやタリク達の首、炎の首都……民の声……私を絶望に突き落とした光景が脳裏に映し出され、ただ吸って吐くだけの呼吸をする事さえ困難になっていく。

 確かにアビドは重傷だが、普段ならば医師に治療させて数ヶ月安静にすれば治るものだ。
 しかしアビドは自らがこの先邪魔にならないよう、きっと嘘を言っているのだ。本来ならば助かる命なのに。

 落ち着け。大丈夫だ。大丈夫。大丈夫。私は、大丈夫だ。と自らに何度も言い聞かせ、呼吸を落ち着かせた。
 アビドの痛みに耐え震える身体が私の手から鮮明に伝わってきて、なにが正解かも分からなかった。


「…………わ、分かった」


 覚悟を決めた私はアビドを横たわらせた後、すかさず彼の刀を手に取る。

「エプト軍は全員片付けました……!」
 マリクの嬉々とした声が聞こえたと思ったら、「……セイル様?」とアビドの刀を持つ私を見てその表情は曇っていく。

 刀を振り下ろそうとした時、アビドがなにか言おうと口を開いているのに気づき、私は彼の口元に顔を近づけた。

「……ナジュム殿は、きっと最後までセイル様をお1人にすることは、ないでしょう。……この爺がいなくなった所で悲しまなさんな。あの世で、タハル様とミハーサ様と、気長に見守っておりますね。セイル様、これまで、よくお一人で頑張られましたね。アビドはとても誇らしく思いますよ」
 少しくらい未熟な私を恨んでくれていても良かったのに、アビドは最期まで穏やかな言葉を残していった。
 私は涙が止まらなかった。


「……ああ。アビド、今までありがとう。本当に……苦労を、かけたな」
 横たわるアビドの痛みに歪む表情は何度でも私の胸を突き刺した。
 涙がアビドの身体にこぼれ落ちないよう目を閉じ、思わず眉をひそめる。
 また私のせいだ。

 寸分の狂いも無いように、楽にさせてあげられるように、大きく、力の限り刀を振り下ろした。



 グシャッ



 膝から崩れ落ち泣き叫びたいのをぐっと堪えた。
 膝から崩れ落ちたいのも泣き叫びたいのも、きっとアビド自身だっただろうから。

 私はアビドの刀を彼の遺体のそばにそっと置いた。
 それを呆然と見つめるマリク。
「私が……もっと、アビド様に目を向けていれば――――!」
 ホロホロとその頬を伝った涙は罪のない涙だった。

「マリクお前のせいじゃない。私が至らなかったせいだ。お前は何も悪くない。よくやってくれた」
 イフラスとバシーラとテラサが私たちに駆け寄ってくる。
 そして、イフラスは涙を流すマリクをそっと抱き締めた。

 そして私は決めた。

「バシーラ」
「は、はい」
「確かお前はユリウスに帯同してエレムへ何度か行ったことがあるな」
 年に1度のユリウスのエレムへの滞在時に、私の女官も帯同させていた。
 それは私の様子が知りたいとのソロからの気持ちの悪い要望だったが、今となってそれが役に立つとは。

「……はい。3度ほどですが」
 私の質問の意図を理解していないバシーラは首を傾げ答えた。
「ソロに届けてほしいものがある。紙とインクはあるか」
「は、はい」
 首を傾げるバシーラから紙とインクを受け取ると、震える指で文字を認めた。


 ソロ

 あなたがいくら手を回したとて、もう私は死ぬ運命から逃げることは出来ないでしょう。
 どうか、エレムでユリウスが寂しい思いをしないように、
 あなたの既に居る子供2人との権力争いにユリウスが巻き込まれないように、お心配り、お願いします。
 そして私の在位は8年と短く、記録も燃やされ、無かったことにされる可能性があります。
 エプトに殺されれば墓を作ることさえ出来ないでしょう。
 エレムで私のことを記録してください。
 あなたの事だから、きっと大袈裟に書くだろうけど、そこはもう文句は言わないので、どうか、よろしくお願いします。
 バシーラはユリウスにつけてください。
 もし、ユリウスやバシーラに嫌な思いをさせるような事があれば、私は怨霊となって末代まで呪いますからね。
 指輪はあの時のお返しです。いつかのお礼です。
 あの時はありがとう。受け取ってください。
 ソロもどうか元気で。身体には気を付けて。よき王で。
 私の分までユリウスを愛してください。

 シェバの女王 セイル


 そう殴り書きをして、バシーラの手に握らせた。

「セイル様、これは……?」
 バシーラはまだ状況が飲み込めず混乱している様子だった。
「バシーラ。お前は今からこの文と指輪をソロに届けてほしい」
 私は右手にはめられた母からの贈り物の指輪を巾着に入れるとそれもバシーラに渡した。
「そして……これを、ユリウスに渡してほしい」
 10歳の誕生日の時に、父から贈られた首飾りを取るとそれもバシーラの手に握らせる。

「ユリウスを、頼む」
 そして、バシーラに子を頼む母として深く頭を下げた。
 混乱していた彼女はその言葉でやっと状況が理解出来たようだった。
「……っ。私の命に変えてまでもユリウス様をお守りいたします」
 バシーラは涙を流しながら私に跪いた。
 私はバシーラと同じ目線なるように、ゆっくりと屈んで「すまない、ユリウスを愛してやってくれ」と彼女の頭をややぎこちなく撫でて抱き締めた。


 その後イフラスやテラサと別れの言葉を交わしたあと、バシーラは東の国エレムへと向かった。

 アビドの遺体には私のマントをそっとかけて祈りの言葉を唱え、永遠の別れを告げた。

 そして、東の街へと入った。



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