徒然 物語

藤沢はなび

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小説化したもの(する予定) または本編で出せなかった話

届かなかった手紙

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自分の幸せくらい自分で生み出したいのに、まだその幸せをあなたに置いている事が情けなくなる時もあります。

幼い頃から私にとっての"あなた"はずっと一人だった事を、どうか覚えていてください。
世界の全てと言っても過言ではなかった。
本当に、私の全てでした。

神様が私を生きながらえさせるために与えた悲しき贈り物だとしても、私は喜んで騙されたでしょう。

これから先生きるか死ぬか分からないけど、自分の為にも色々変わると思います。
あなたに代わるものを見つける努力をしながら、忘れたいと言いながら、きっと忘れないように、私は物語をかいたのでしょう。


あなたに送れずにずっと手元にあった言葉。
一年前に偶然見つけたんです。


ーー大丈夫かな、ってここ最近何度も唱えています。
多分大丈夫なんだろうけど、頑固な意思が最悪の結果をうむんじゃないかってそんなことが頭を過ります。

大丈夫だと、そう、この手紙を読んでくれているあなたが、この手紙の前で呟いてくれている事を想像しながら耐えようと思いますーー


ーーこれが全てでしょう。
私はきっと神様だけに愛されていた。
偶然が奇跡を彩らせてくれた。それはあなたではなかった。
あの頃、愛されたかったのはただひとり、あなただったけれど、それを失った私はあの地獄に返ってしまうのだと思っていました。
元からずっと私はひとりで、元から私には何も無くて、ただずっと信じたかっただけで。

それでも言葉の呪いって恐ろしくて。
どんなに辛くても、苦しくても、一生を孤独に生きるとしても、私はそれでもずっと心にあなたがいます。
一生消えないあの頃のあなたの姿があります。

さようならと何度告げても消えてはくれない。
でも、そこに今のあなたはいない事に気が付きました。
過去に縋り付くほど醜いことはないと分かっていても、手放せない想いがずっとありました。

あなたは私をいつも正気にさせてくれました。
あなたがいたから、私は過酷な世界でも優しいまま生きていくことができた。
それは本当に、この世界において奇跡以上の価値があった。
あなたがいなければ、私は未来ではなく、過去のことばかりを憂いて泣く少女だったでしょう。
あなたの幸せを祈る日々は素晴らしく煌めいていて、悲しかった。でもとても楽しかった。
傷つくことも不幸も、全てが幸せだったあの奇妙な感情を知る人は、この世界でどれだけいるのでしょうか。
そんな人を見つけ、愛せたのだから、例え愛されなかったとしても、私はきっと幸福だったのでしょう。

長い、長すぎる人生の半分をあなたを愛した期間にあてたことを後悔しない。
凄く幸せだった。ありがとう。
これからもずっと、あなたの幸せを祈ってる。

そして、もう私はそれに別れを告げて、
道は交わらない、生きていたとしても決してもう二度と会わないこの人生を、私は選びます。
この奇跡に運命なんて無かった。
あなたが変わったように、私の心も揺れながら変わっていく。
言葉は嘘じゃなかった。紛れもない真実だった。でも、

心の底から愛してる。

初めて伝えたいと思った人はあなただけど、最後に伝えたい人はきっとあなたではないのでしょう。

でも分かって欲しい。
あなたがいたから。
私は泣きながらも人を素直に愛し、疑うことなく心を委ねることができる。
私のこの温もりの源はきっとあなたがいなければ、ずっと氷のままだった。
私を愛してくれなかったあなたを忘れて、私は幸せになるから、
あなたも全てを忘れてどうか幸せでいて。

本当に、本当に心の底から愛していました。



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