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母親

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 物心付いた時から、俺の周りには色んなデザインの家具や雑貨が溢れていた。

 もちろんそれらはインテリア好きの親父や、そして母さんが選びに選び抜いて集めていたもので、

 ――ねえ翔ちゃん、この椅子すっごくオシャレでしょ!

 お店に新しい商品が届くたび、母さんは嬉しそうによくそんなことを俺に言っていた。

 不思議なもので、母さんがそう言って紹介してくれる家具や雑貨はどれも輝いて見えて、その度に俺は幼いながらもインテリアの魅力に惹かれていったのだ。

 好きな家具が一つでもあれば、自然とその家には幸せが集まってくる。

 母さんはよくそんな言葉を口にしていて、そしてその言葉をモットーにするかのように、自分の好きな商品たちをいつも楽しそうにお客さんにも紹介していた。

 だから母さんが接客をすると、どんなお客さんもいつも笑顔で、そして気づけばこのお店のファンになってくれていた。

 きっとそんな母さん自身が、お客さんに一番の幸せを運んでいたんだと思う。

 だからこそ俺は、今もお店に立つ度に自分自身に向かって尋ねるのだ。

 このお店で出会った誰かにとって、自分もそんな幸せを届けるような存在になれているのだろうかと。
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