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幼なじみ
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放課後のチャイムが鳴るや否や、俺は白峰に待ち合わせ場所だけを伝えると先に教室を出た。
さすがに白峰と一緒に学校の中を歩くとなると目立ち過ぎるし、そんなことをすれば他クラスの生徒(主に男)からも敵意をガンガンに向けられると思ったからだ。
そもそもアイツが普段から他の生徒と仲良くしていれば変な気を遣わなくても済むのに……。
待ち合わせ場所に指定した最寄駅とは反対方向にあるコンビニの前に立ちながら、俺はついそんなことを愚痴ってしまう。
それこそ水無瀬さんのように普段から友だち付き合いが多い美少女であれば、多少妬まれることはあったとしても二人でいることにそこまで違和感はなかっただろう。
まあそれを白峰に期待するのは難しいか、なんてことを思っていたら今度は突然背中に声が掛かる。
「お待たせ」
「お、おう……」
凛とした声音に驚いて後ろを振り返れば、そこにはいつものように無表情でこちらを見つめる白峰が立っていた。
春風に黒髪を靡かせて立つその姿は美しく、不覚にも俺は一瞬だけ見惚れてしまう。
放課後にクラスメイトの女の子と二人っきりで待ち合わせ。
非常に些細なイベントではあるが、この場面だけを切り取ってみたら何だか俺も甘酸っぱい青春を送っているような気が――。
「わざわざ学校の外で待ち合わせするなんて非効率ね」
「……」
しないわな。うん、まったくしないわ!
ちょっと妄想の世界に浸りかけていたが、白峰から冷や水のような言葉をかけられてしまい俺はすぐさま冷静に戻る。……というよりこの子、見た目の割にほんと可愛げないですよね。
ついそんなことを心の中で思ってしまうがもちろん口に出して言えるわけもないので、俺は「まあ色々あってな……」ととりあえず苦笑いでこの場を誤魔化した。
その後俺たちは昨日と同じくデスロード……もとい通い慣れた住宅街の道を二人並んで歩いていた。
通り過ぎる人たちはみな穏やかそうな表情をしているのに、俺たち二人ときたらまるでお通夜の帰りのような雰囲気で終始無言だ。
このままだと心の酸欠状態がマジでヤバいので、ここは冗談の一つでも言って場を和ませようと思う。
「そういや白峰って昼飯はパスタじゃないんだな」
「怒るわよ」
「す、すいませんッ!」
予想以上に鋭い声音と視線が返ってきてしまい、俺は無意識に両手で左頬をガードした。
てっきりパスタのネタなら食いついてくれるかと思ったのだが、どうやら触れてはいけないネタだったらしい。
とりあえずビンタが飛んでこないことを確認して安堵した俺はそっと手を下ろした。そして相変わらずツンとした表情のままで隣を歩く白峰のその横顔を見て思ってしまう。
どうしてコイツはこうも極端に他人と関わることを拒絶するのだろうかと。
たしかにお店のお客さんでも素っ気ない人はいるが、そういう人たちはただシャイな性格なだけであって話す機会が増えれば仲良くなることの方が多い。
けれども白峰の場合は故意に敵意を剥き出しにしている感じがしてちょっと不自然なのだ。例えて言うなら、まるでハリネズミが周りに誰も寄せ付けないようにと針を出しているみたいに。
そんなことを考えて歩いていたらいつの間にか目の前には『コンシェルジュ』という見慣れた看板が見えてきた。
そういえば今日は店にアイツが……。
ガラス扉の取手を握りしめた直後、ふとそんなことを思った俺だったが、特に気にせずそのまま扉を開いた。
「いらっしゃ――って、なんや翔太やん」
おかえり、っと気安い感じで挨拶を続けてきたのは、レジに立っている一人の女の子だった。
「ただいま。親父は?」
「おじさんは今買い出し中。たぶんもうすぐ戻ってくるんとちゃう」
そう言ってから両腕を上げてうーんと伸びをする彼女。赤茶色に染まった髪を一つに括り、目鼻立ちがはっきりとしている顔には今日もバッチリとメイクがされている。
一見するとギャルの類に見えなくもないが、いや実際そうなのかもしれないが、彼女は隣の家に住んでいる同い年の幼なじみで名前を夏木茜という。
ちなみに親父と同じようにTシャツに黒のサロンを巻いているそのスタイルからわかるように、彼女もこの店で働いているスタッフなのだ。
茜といつものような会話を交わしてから店に入ると、俺は後ろを振り返ってガラス扉の向こうに立っている白峰を手招きした。すると直後――。
「なあ、その女の子誰なん?」
さすがに白峰と一緒に学校の中を歩くとなると目立ち過ぎるし、そんなことをすれば他クラスの生徒(主に男)からも敵意をガンガンに向けられると思ったからだ。
そもそもアイツが普段から他の生徒と仲良くしていれば変な気を遣わなくても済むのに……。
待ち合わせ場所に指定した最寄駅とは反対方向にあるコンビニの前に立ちながら、俺はついそんなことを愚痴ってしまう。
それこそ水無瀬さんのように普段から友だち付き合いが多い美少女であれば、多少妬まれることはあったとしても二人でいることにそこまで違和感はなかっただろう。
まあそれを白峰に期待するのは難しいか、なんてことを思っていたら今度は突然背中に声が掛かる。
「お待たせ」
「お、おう……」
凛とした声音に驚いて後ろを振り返れば、そこにはいつものように無表情でこちらを見つめる白峰が立っていた。
春風に黒髪を靡かせて立つその姿は美しく、不覚にも俺は一瞬だけ見惚れてしまう。
放課後にクラスメイトの女の子と二人っきりで待ち合わせ。
非常に些細なイベントではあるが、この場面だけを切り取ってみたら何だか俺も甘酸っぱい青春を送っているような気が――。
「わざわざ学校の外で待ち合わせするなんて非効率ね」
「……」
しないわな。うん、まったくしないわ!
ちょっと妄想の世界に浸りかけていたが、白峰から冷や水のような言葉をかけられてしまい俺はすぐさま冷静に戻る。……というよりこの子、見た目の割にほんと可愛げないですよね。
ついそんなことを心の中で思ってしまうがもちろん口に出して言えるわけもないので、俺は「まあ色々あってな……」ととりあえず苦笑いでこの場を誤魔化した。
その後俺たちは昨日と同じくデスロード……もとい通い慣れた住宅街の道を二人並んで歩いていた。
通り過ぎる人たちはみな穏やかそうな表情をしているのに、俺たち二人ときたらまるでお通夜の帰りのような雰囲気で終始無言だ。
このままだと心の酸欠状態がマジでヤバいので、ここは冗談の一つでも言って場を和ませようと思う。
「そういや白峰って昼飯はパスタじゃないんだな」
「怒るわよ」
「す、すいませんッ!」
予想以上に鋭い声音と視線が返ってきてしまい、俺は無意識に両手で左頬をガードした。
てっきりパスタのネタなら食いついてくれるかと思ったのだが、どうやら触れてはいけないネタだったらしい。
とりあえずビンタが飛んでこないことを確認して安堵した俺はそっと手を下ろした。そして相変わらずツンとした表情のままで隣を歩く白峰のその横顔を見て思ってしまう。
どうしてコイツはこうも極端に他人と関わることを拒絶するのだろうかと。
たしかにお店のお客さんでも素っ気ない人はいるが、そういう人たちはただシャイな性格なだけであって話す機会が増えれば仲良くなることの方が多い。
けれども白峰の場合は故意に敵意を剥き出しにしている感じがしてちょっと不自然なのだ。例えて言うなら、まるでハリネズミが周りに誰も寄せ付けないようにと針を出しているみたいに。
そんなことを考えて歩いていたらいつの間にか目の前には『コンシェルジュ』という見慣れた看板が見えてきた。
そういえば今日は店にアイツが……。
ガラス扉の取手を握りしめた直後、ふとそんなことを思った俺だったが、特に気にせずそのまま扉を開いた。
「いらっしゃ――って、なんや翔太やん」
おかえり、っと気安い感じで挨拶を続けてきたのは、レジに立っている一人の女の子だった。
「ただいま。親父は?」
「おじさんは今買い出し中。たぶんもうすぐ戻ってくるんとちゃう」
そう言ってから両腕を上げてうーんと伸びをする彼女。赤茶色に染まった髪を一つに括り、目鼻立ちがはっきりとしている顔には今日もバッチリとメイクがされている。
一見するとギャルの類に見えなくもないが、いや実際そうなのかもしれないが、彼女は隣の家に住んでいる同い年の幼なじみで名前を夏木茜という。
ちなみに親父と同じようにTシャツに黒のサロンを巻いているそのスタイルからわかるように、彼女もこの店で働いているスタッフなのだ。
茜といつものような会話を交わしてから店に入ると、俺は後ろを振り返ってガラス扉の向こうに立っている白峰を手招きした。すると直後――。
「なあ、その女の子誰なん?」
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