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第39話(フォルマルテの目線)vsキング③
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————フォルマルテの目線————
俺は3個体の亡霊に憑依する事を許可していた。
人の姿をしている個体は、力、速度、器用さに優れ、最もステータスバランスがとれている奴だ。
キングとの戦闘での役割は、両手に持たせた六角柱にて変幻自在に飛びまわりながら攻撃を仕掛けてくるセカンドブレードの相手をすること。
実際に期待どおりの成果をあげてくれていた。
2体目の憑依体は亀の姿をしている個体だ。
防御力に特化し、常に俺を守ってくれる頼もしい存在である。
そして3個体目の憑依体こそがキングを倒すための切り札的存在だ。
その姿は、直径1m程度の暗黒色の球体をしていた。
移動速度が極めて遅いが、全てを喰らいつくす強靭かつ獰猛な個体である。
この部屋に入った時、あるかもしれない戦闘に備え、この暗黒個体を解き放っていた。
◇
高くとられた天井には大きなプロペラファンがまわり、その稼働音が体育館ほどある大きさの要塞都市のインフラ施設内に反響していた。
壁に等間隔で設置しているブラケット照明が室内を明るく照らしている。
建物の奥には、全身を真っ白なスーツで固めた悪魔が立っており、その反対側の壁面には19種族の剣聖・安杏里とテスタが俺達を見ていた。
重たい空気が流れている中、俺が所属している組織のボスであるキングとの戦闘を開始していた。
キングへ特攻をした俺は、真っ向から振り下ろされてきた上段斬りを両手に装備していた籠手で受け止めた。
その凄まじい衝撃に、全身の骨がきしみ、前進は止められ、腰が落ちていく。
まるで、体が床へ埋まってしまったような感覚に陥る。
最高強度を誇ると言われているミスリル製の籠手で受けたものの、防御に特化した亀の憑依体を体内に潜行させていなければ、体を真二つに斬り裂かれていたかもしれないほどの威力だ。
ここまでの展開は、キングの方も予測の範囲だったようで、俺の背後から忍び寄ってきていた隠密属性を持っているサードブレードにて奇襲をしかけてきた。
その攻撃で俺を仕留めることができると思っていたようだが、体に潜航させていた亀の憑依体のおかげで致命傷をうけることはなかった。
仮面で表情を隠していても動揺する様子が読み取れる。
―――――――――予測外の事態に陥り、本能的に危険を感じたのだろう。反射的に俺から距離を空けるため、バックステップをとろうとしていた。
俺の仕掛けた罠に嵌ったな。
いろいろと計略を巡らせていたようだが、お前の方が地獄の扉を開いてしまったわけだ。
キングの背後の床の中には、暗黒個体の憑依体を忍ばせていたのだ。
格下の俺が唯一勝利できる方法は、時間をかけずに暗黒個体が待ち構えているその場所へ誘導し、お前を喰らわせること。
あらゆる行動を想定し、暗黒物質が待ち構えるポイントへ誘導するシュミレーションを何千とおりも行った。
これで倒すことが出来なかったら、全てを出しつくした俺は敗北するだろう。
そしてキングの方はというと、俺の戦闘力を甘く見積もっていた事は分かっていた。
死角を突くというサードブレードで決着がつくと思っており、そして19種族の剣聖との戦闘に備え、全ての手の内を見せていなかったのだろう。
俺との戦いに対して覚悟が足りなかったことが、お前の敗因だ。
反射的に俺から距離を置くためにバックステップをしてしまったキングは、背後の地面から暗黒個体がパックリと口を開いていることに気が付いていない。
実際に、仮面の男の視線は俺の動きを見逃さまいと注視していた。
勝利を確信していた。
次の瞬間。ありえない事が起きていた。
――――――――――自然落下の物理法則を無視して、キングが暗黒個体の憑依体を飛び越そうとしているのだ。
何が起きているんだ!
その動きは、あまりにも不自然過ぎるだろ!
物が下へ落ちるという重力に逆らっているぞ!
床から姿を現し、口を大きく開いていた暗黒個体の向こうへ着地するキングの姿がスローモーションのように見える。
何故そうなったのかは分からないが、俺の仕掛けた罠を回避しやがった!
仮面の男は、予期していなかった暗黒個体の存在にようやく気が付くと、驚いた様子で安全圏まで更に間合いを広げるため、後ろへ下がった。
重力に逆らう不思議な動きは一体何だったんだ。
まるで鳥のように宙を飛んでいたように見えた。
疑問が湯水のように湧き出てくる。
溢れ出てきていた疑念に答えてくれるかのごとく、奥で動向を静観していた悪魔からの声が聞こえてきた。
「今の動きに戸惑っているようだな。私から教えてやろう。その仮面の男は、『絶対距離』を発動させているのだよ。あらゆる物理攻撃から一定の距離をとる効果があるため、残念ながらフォルマルテ君からの攻撃は届くことは決してないだろう。その者が悪魔の力を得て手に入れ能力だ。彼には剣聖との戦いが控えている。さっさと退場してくれたまえ。」
『絶対距離』だと。
常に攻撃が当たる寸前で、強制的に距離を取られるという効果だということなのか。
人を騙すという悪魔の言う事など鵜呑みには出来ない。
だが、それが本当だとしたら、どう攻略したらいいか分からねぇ。
ゼロ距離ならば、俺からの攻撃が届くのだろうか。
悪魔の言葉に続き、キングが口を開いてきた。
「そう。これが『絶対距離』の効果だ。まさかフォルマルテを相手に発動させてしまうとはな。いや、悪魔の力を手に入れていなければ、お前の憑依体に私は殺されていただろう。お前を認めよう。ここからは出し惜しみ無しだ。全力で戦うことにしよう。」
キングから凄みのようなものが伝わってくる。
どうやら本気にさせてしまったらしい。
本能的に俺の勝ち筋が消滅してしまったように感じる。
だが、退くわけにはいかない。
危険を察知した憑依体からも、緊張のようなものが伝わってくる。
キングの元へ戻ったセカンドブレードがから解放された人型の憑依体が、俺を守るように正面に移動してきた。
その両手に六角柱が握られている。
更に体に潜行している亀の憑依体も、キングからの攻撃に備えるように体勢を整えていた。
暗黒個体の憑依体は、再び地面の中に隠れている。
離れた位置にいる仮面の男が、手に持っていた残像剣を大きく振ると、全長10m程度ありそうな巨大なブレードが出現した。
なんてデカい剣なんだ。
無いことはないと思っていたが、4本目のブレードも生み出すことが出来たのか。
あれから繰り出される一撃は危険だ。
おそらく、亀の防御力では凌ぎきれない。
キングが腰を少し落としながら俺を倒す宣言をしてきた。
「これが最後にフォースブレードだ。一撃必殺の攻撃にて終わりにしてやろう。」
俺は3個体の亡霊に憑依する事を許可していた。
人の姿をしている個体は、力、速度、器用さに優れ、最もステータスバランスがとれている奴だ。
キングとの戦闘での役割は、両手に持たせた六角柱にて変幻自在に飛びまわりながら攻撃を仕掛けてくるセカンドブレードの相手をすること。
実際に期待どおりの成果をあげてくれていた。
2体目の憑依体は亀の姿をしている個体だ。
防御力に特化し、常に俺を守ってくれる頼もしい存在である。
そして3個体目の憑依体こそがキングを倒すための切り札的存在だ。
その姿は、直径1m程度の暗黒色の球体をしていた。
移動速度が極めて遅いが、全てを喰らいつくす強靭かつ獰猛な個体である。
この部屋に入った時、あるかもしれない戦闘に備え、この暗黒個体を解き放っていた。
◇
高くとられた天井には大きなプロペラファンがまわり、その稼働音が体育館ほどある大きさの要塞都市のインフラ施設内に反響していた。
壁に等間隔で設置しているブラケット照明が室内を明るく照らしている。
建物の奥には、全身を真っ白なスーツで固めた悪魔が立っており、その反対側の壁面には19種族の剣聖・安杏里とテスタが俺達を見ていた。
重たい空気が流れている中、俺が所属している組織のボスであるキングとの戦闘を開始していた。
キングへ特攻をした俺は、真っ向から振り下ろされてきた上段斬りを両手に装備していた籠手で受け止めた。
その凄まじい衝撃に、全身の骨がきしみ、前進は止められ、腰が落ちていく。
まるで、体が床へ埋まってしまったような感覚に陥る。
最高強度を誇ると言われているミスリル製の籠手で受けたものの、防御に特化した亀の憑依体を体内に潜行させていなければ、体を真二つに斬り裂かれていたかもしれないほどの威力だ。
ここまでの展開は、キングの方も予測の範囲だったようで、俺の背後から忍び寄ってきていた隠密属性を持っているサードブレードにて奇襲をしかけてきた。
その攻撃で俺を仕留めることができると思っていたようだが、体に潜航させていた亀の憑依体のおかげで致命傷をうけることはなかった。
仮面で表情を隠していても動揺する様子が読み取れる。
―――――――――予測外の事態に陥り、本能的に危険を感じたのだろう。反射的に俺から距離を空けるため、バックステップをとろうとしていた。
俺の仕掛けた罠に嵌ったな。
いろいろと計略を巡らせていたようだが、お前の方が地獄の扉を開いてしまったわけだ。
キングの背後の床の中には、暗黒個体の憑依体を忍ばせていたのだ。
格下の俺が唯一勝利できる方法は、時間をかけずに暗黒個体が待ち構えているその場所へ誘導し、お前を喰らわせること。
あらゆる行動を想定し、暗黒物質が待ち構えるポイントへ誘導するシュミレーションを何千とおりも行った。
これで倒すことが出来なかったら、全てを出しつくした俺は敗北するだろう。
そしてキングの方はというと、俺の戦闘力を甘く見積もっていた事は分かっていた。
死角を突くというサードブレードで決着がつくと思っており、そして19種族の剣聖との戦闘に備え、全ての手の内を見せていなかったのだろう。
俺との戦いに対して覚悟が足りなかったことが、お前の敗因だ。
反射的に俺から距離を置くためにバックステップをしてしまったキングは、背後の地面から暗黒個体がパックリと口を開いていることに気が付いていない。
実際に、仮面の男の視線は俺の動きを見逃さまいと注視していた。
勝利を確信していた。
次の瞬間。ありえない事が起きていた。
――――――――――自然落下の物理法則を無視して、キングが暗黒個体の憑依体を飛び越そうとしているのだ。
何が起きているんだ!
その動きは、あまりにも不自然過ぎるだろ!
物が下へ落ちるという重力に逆らっているぞ!
床から姿を現し、口を大きく開いていた暗黒個体の向こうへ着地するキングの姿がスローモーションのように見える。
何故そうなったのかは分からないが、俺の仕掛けた罠を回避しやがった!
仮面の男は、予期していなかった暗黒個体の存在にようやく気が付くと、驚いた様子で安全圏まで更に間合いを広げるため、後ろへ下がった。
重力に逆らう不思議な動きは一体何だったんだ。
まるで鳥のように宙を飛んでいたように見えた。
疑問が湯水のように湧き出てくる。
溢れ出てきていた疑念に答えてくれるかのごとく、奥で動向を静観していた悪魔からの声が聞こえてきた。
「今の動きに戸惑っているようだな。私から教えてやろう。その仮面の男は、『絶対距離』を発動させているのだよ。あらゆる物理攻撃から一定の距離をとる効果があるため、残念ながらフォルマルテ君からの攻撃は届くことは決してないだろう。その者が悪魔の力を得て手に入れ能力だ。彼には剣聖との戦いが控えている。さっさと退場してくれたまえ。」
『絶対距離』だと。
常に攻撃が当たる寸前で、強制的に距離を取られるという効果だということなのか。
人を騙すという悪魔の言う事など鵜呑みには出来ない。
だが、それが本当だとしたら、どう攻略したらいいか分からねぇ。
ゼロ距離ならば、俺からの攻撃が届くのだろうか。
悪魔の言葉に続き、キングが口を開いてきた。
「そう。これが『絶対距離』の効果だ。まさかフォルマルテを相手に発動させてしまうとはな。いや、悪魔の力を手に入れていなければ、お前の憑依体に私は殺されていただろう。お前を認めよう。ここからは出し惜しみ無しだ。全力で戦うことにしよう。」
キングから凄みのようなものが伝わってくる。
どうやら本気にさせてしまったらしい。
本能的に俺の勝ち筋が消滅してしまったように感じる。
だが、退くわけにはいかない。
危険を察知した憑依体からも、緊張のようなものが伝わってくる。
キングの元へ戻ったセカンドブレードがから解放された人型の憑依体が、俺を守るように正面に移動してきた。
その両手に六角柱が握られている。
更に体に潜行している亀の憑依体も、キングからの攻撃に備えるように体勢を整えていた。
暗黒個体の憑依体は、再び地面の中に隠れている。
離れた位置にいる仮面の男が、手に持っていた残像剣を大きく振ると、全長10m程度ありそうな巨大なブレードが出現した。
なんてデカい剣なんだ。
無いことはないと思っていたが、4本目のブレードも生み出すことが出来たのか。
あれから繰り出される一撃は危険だ。
おそらく、亀の防御力では凌ぎきれない。
キングが腰を少し落としながら俺を倒す宣言をしてきた。
「これが最後にフォースブレードだ。一撃必殺の攻撃にて終わりにしてやろう。」
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