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第28話 あれの事ではないな。
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古代人が生み出した要塞都市は、万能の種族である21種族の者が管理をしており、千年の1度行われる種族間戦争で勝利した種族が支配をしていた。
その地下一階層は、巨大隕石落下のような不測の事態に陥った際、その避難場所として設計された都市であり、現在は100万人程度の者が暮らしている。
天井パネルにはリアルタイムに青空が映し出されており、実際の太陽光が降り注ぎ街全体を明るく照らしていた。
悪魔の加護を持つサマエルの分身体により召喚されてきたバエルは、リミッターを解除した状態から繰り出した『紫電一閃』により、跡形もなく粉砕した。
さすが可愛さ最強である剣聖だ。
弱点である灼熱にて焼き払わなければ倒すことが出来ない悪魔とされていたが、私に今までのような常識は通用しないことを知るがいい。
つまり大幹部の悪魔など、私にとってはレベル999の主人公の前に現れる村人Aのような存在なのだ。
現在そんな私に向かって、無限増殖をしていた本体を抹殺する前に生み出されていた子供バエル達の大群が、うねりをあげて押し寄せてきていた。
100万程度ではきかないくらいの個体数が、巨大な津波になって迫ってきている。
子供バエル達の足音が地響きのように聞こえ、プレッシャーをかけてくる。
才色兼備の美少女剣士をもってしても、この数を全て切り刻むためには相当の時間が必要になってくるだろう。
一日二日で出来るようなものではないぞ。
最後の一匹にトドメを刺すまでには、要塞都市に暮らしている人間は全滅するものと推測できる。
そこで、背中に張り付いているミランダに灼熱系の剣技を教えてほしいとお願いしてみた。
「ミランダにお願いがあります。あの子供バエル達を掃討するために灼熱系の剣技が必要となりました。今すぐにそのスキルを覚えたく思いますので、教えて頂けないでしょうか。」
「安杏里。灼熱系の剣技を習得するには厳しい修行が必要だ。いかに太陽神の娘でも、すぐに使えるようにはなれないぞ。」
「なるほど。ミランダからの意図を読み取りました。それでは、よろしくお願いします。」
「うむ。何をお願いされたのか全く分からないし、私の言っている意図を誤解して読み取っているようだな。」
「安心して下さい。ミランダの意図は99%の確率で誤解しておりません。」
「ほぉう。それはつまり残りの1%の方がきたわけだな。」
「だからミランダが言いたかったのは、あれの事で間違いないですよね。」
「うむ。おそらく安杏里が言っているあれの事ではないな。」
「ヒロインが追い詰められた時には、必ずヒーローが助けに入り、そして何故が形勢逆転してしまう流れがお約束ではないですか。」
「ようやく理解するこたが出来たのだが、あれというのはご都合主義の物語のことだったのか。」
「はい。それではミランダ様、清く気高いヒロインちゃんを助けて下さい。」
「全く気持ちのこもっていない『様』付けはむしろマイナス効果だ。それから21種族は『千年戦争』には参加していないので、手出しは出来ないと言っておいたはずだぞ。」
「スーパーヒロインに力を貸すための行為よりも大事な規定規則なんてこの世の中にあるのでしょうか。ヒロインを助けるためなら『そんな規則なんてブッ壊してやる!』って言うのが定番ではないですか。頑張れ、ミランダ!」
「それは努力無しにチートスキルを女神に貰い、無駄に喧嘩を売りまくるハーレム王の役目だな。安杏里はハーレム嬢の1人になりたいのか。」
その定型ルートとは、美少女が学校ではモブな生徒を装っている男にピンチを助けられるとそのモブ男を意識する流れとなり、最終的にはハーレム嬢の一人になるという意味不明な展開の事を言っているのだろう。
モブ男に惚れてしまうまでの流れは有りだとしても、何故私がハーレム嬢の一人にならないといけないのだ。
そもそもハーレム嬢なんて性奴隷みたいなものだろ。
「モブ男に助けてもらい、性奴隷になるなんて、まっぴらごめんですよ。」
「うむ。懸命な判断だ。安杏里。自力で数億個体いる子供バエルを何とかするしかないということだ。」
「了解です。自力にて子供バエルを全て斬り刻んで上げましょう。」
全個体を葬るまでには要塞都市は子供バエル達の餌食になってしまうのだろうが、全力は尽させて頂きます。
押し寄せてくる子供バエル達の津波から距離を置くために後方へジャンプし、上空から都市全体を見渡してみると子供バエル達は私へ目掛けて突進をしてきているのがよく分かる。
彼等からすると、さしずめ私は親の仇をというところなのかしら。
面倒ではあるが、一定の距離を確保しつつ斬撃で切り刻み、少しずつ数を減らしていくことにしましょう。
着地と同時に斬撃を繰り出すために神剣ソラスクラスに手をかけた時、背中に張り付いているミランダが再び話しかけてきた。
「安杏里。今しがた、私の同胞である要塞都市から連絡が入ったぞ。」
「このクソ忙しい時に何の話しでしょうか。全くもって迷惑な同胞さんですね。」
「うむ。子供バエルを焼き払うための援軍を要塞都市が送ってくれるそうだ。」
「なんてこった。ミランダよりも遥か使える同胞さんではないですか。先ほどは毒を吐いてしまった件ですが、私の代わりに謝罪しておいて下さい。」
「うむ。それでは安杏里に代わり、適当に謝罪しておこう。」
「ミランダに質問があるのですが、21種族は千年戦争に関与出来ないと言っておりましたが、大丈夫なのですか。」
「私が安杏里のサポートをしているように、要塞都市は都市内の防衛行為は認められているのだ。」
それを認めている者とは何者で、それは21種族よりも上位存在なのかしら。
今はそんな事を考えるよりも援軍が何なのかの方が重要だ。
着地ポイントに見知った機械人形の姿がある。
―――――――隠密の加護をもつ9種族の真里伊だ。
機械人形の緩そうな顔付きをしており、危機的状況に飛び込んだことを理解認識出来ていないようだ。
明らかに戸惑っている。
私の時もそうであったように、何の説明もないままに、『転移』してきたのかもしれない。
同時にミランダからの言葉を思い出していた。
そう。21種族である要塞都市が、子供バエルを焼き払うための援軍を送ると言っていたことを。
真里伊は『ホーミング爆撃』というSKILLを獲得していた。
つまり、そのスキルで数億個体の子供バエル達を掃討できるものと推測できる。
現状況下においては、真里伊と話しをする猶予はない。
とにかく、今すぐに『ホーミング爆撃』を乱射してもらうべきだろう。
着地の衝撃を吸収するように膝を曲げ、片手を地面に付くと、真横に並んだ状態となった真里伊と視線が交差した。
「真里伊。事態は飲み込めていますか。今すぐに正面から押し寄せてくる数億程度いる個体を掃討しなければなりません。あいつ等をあなたの『ホーミング爆撃』にて焼き払ってもらえないでしょうか。」
その地下一階層は、巨大隕石落下のような不測の事態に陥った際、その避難場所として設計された都市であり、現在は100万人程度の者が暮らしている。
天井パネルにはリアルタイムに青空が映し出されており、実際の太陽光が降り注ぎ街全体を明るく照らしていた。
悪魔の加護を持つサマエルの分身体により召喚されてきたバエルは、リミッターを解除した状態から繰り出した『紫電一閃』により、跡形もなく粉砕した。
さすが可愛さ最強である剣聖だ。
弱点である灼熱にて焼き払わなければ倒すことが出来ない悪魔とされていたが、私に今までのような常識は通用しないことを知るがいい。
つまり大幹部の悪魔など、私にとってはレベル999の主人公の前に現れる村人Aのような存在なのだ。
現在そんな私に向かって、無限増殖をしていた本体を抹殺する前に生み出されていた子供バエル達の大群が、うねりをあげて押し寄せてきていた。
100万程度ではきかないくらいの個体数が、巨大な津波になって迫ってきている。
子供バエル達の足音が地響きのように聞こえ、プレッシャーをかけてくる。
才色兼備の美少女剣士をもってしても、この数を全て切り刻むためには相当の時間が必要になってくるだろう。
一日二日で出来るようなものではないぞ。
最後の一匹にトドメを刺すまでには、要塞都市に暮らしている人間は全滅するものと推測できる。
そこで、背中に張り付いているミランダに灼熱系の剣技を教えてほしいとお願いしてみた。
「ミランダにお願いがあります。あの子供バエル達を掃討するために灼熱系の剣技が必要となりました。今すぐにそのスキルを覚えたく思いますので、教えて頂けないでしょうか。」
「安杏里。灼熱系の剣技を習得するには厳しい修行が必要だ。いかに太陽神の娘でも、すぐに使えるようにはなれないぞ。」
「なるほど。ミランダからの意図を読み取りました。それでは、よろしくお願いします。」
「うむ。何をお願いされたのか全く分からないし、私の言っている意図を誤解して読み取っているようだな。」
「安心して下さい。ミランダの意図は99%の確率で誤解しておりません。」
「ほぉう。それはつまり残りの1%の方がきたわけだな。」
「だからミランダが言いたかったのは、あれの事で間違いないですよね。」
「うむ。おそらく安杏里が言っているあれの事ではないな。」
「ヒロインが追い詰められた時には、必ずヒーローが助けに入り、そして何故が形勢逆転してしまう流れがお約束ではないですか。」
「ようやく理解するこたが出来たのだが、あれというのはご都合主義の物語のことだったのか。」
「はい。それではミランダ様、清く気高いヒロインちゃんを助けて下さい。」
「全く気持ちのこもっていない『様』付けはむしろマイナス効果だ。それから21種族は『千年戦争』には参加していないので、手出しは出来ないと言っておいたはずだぞ。」
「スーパーヒロインに力を貸すための行為よりも大事な規定規則なんてこの世の中にあるのでしょうか。ヒロインを助けるためなら『そんな規則なんてブッ壊してやる!』って言うのが定番ではないですか。頑張れ、ミランダ!」
「それは努力無しにチートスキルを女神に貰い、無駄に喧嘩を売りまくるハーレム王の役目だな。安杏里はハーレム嬢の1人になりたいのか。」
その定型ルートとは、美少女が学校ではモブな生徒を装っている男にピンチを助けられるとそのモブ男を意識する流れとなり、最終的にはハーレム嬢の一人になるという意味不明な展開の事を言っているのだろう。
モブ男に惚れてしまうまでの流れは有りだとしても、何故私がハーレム嬢の一人にならないといけないのだ。
そもそもハーレム嬢なんて性奴隷みたいなものだろ。
「モブ男に助けてもらい、性奴隷になるなんて、まっぴらごめんですよ。」
「うむ。懸命な判断だ。安杏里。自力で数億個体いる子供バエルを何とかするしかないということだ。」
「了解です。自力にて子供バエルを全て斬り刻んで上げましょう。」
全個体を葬るまでには要塞都市は子供バエル達の餌食になってしまうのだろうが、全力は尽させて頂きます。
押し寄せてくる子供バエル達の津波から距離を置くために後方へジャンプし、上空から都市全体を見渡してみると子供バエル達は私へ目掛けて突進をしてきているのがよく分かる。
彼等からすると、さしずめ私は親の仇をというところなのかしら。
面倒ではあるが、一定の距離を確保しつつ斬撃で切り刻み、少しずつ数を減らしていくことにしましょう。
着地と同時に斬撃を繰り出すために神剣ソラスクラスに手をかけた時、背中に張り付いているミランダが再び話しかけてきた。
「安杏里。今しがた、私の同胞である要塞都市から連絡が入ったぞ。」
「このクソ忙しい時に何の話しでしょうか。全くもって迷惑な同胞さんですね。」
「うむ。子供バエルを焼き払うための援軍を要塞都市が送ってくれるそうだ。」
「なんてこった。ミランダよりも遥か使える同胞さんではないですか。先ほどは毒を吐いてしまった件ですが、私の代わりに謝罪しておいて下さい。」
「うむ。それでは安杏里に代わり、適当に謝罪しておこう。」
「ミランダに質問があるのですが、21種族は千年戦争に関与出来ないと言っておりましたが、大丈夫なのですか。」
「私が安杏里のサポートをしているように、要塞都市は都市内の防衛行為は認められているのだ。」
それを認めている者とは何者で、それは21種族よりも上位存在なのかしら。
今はそんな事を考えるよりも援軍が何なのかの方が重要だ。
着地ポイントに見知った機械人形の姿がある。
―――――――隠密の加護をもつ9種族の真里伊だ。
機械人形の緩そうな顔付きをしており、危機的状況に飛び込んだことを理解認識出来ていないようだ。
明らかに戸惑っている。
私の時もそうであったように、何の説明もないままに、『転移』してきたのかもしれない。
同時にミランダからの言葉を思い出していた。
そう。21種族である要塞都市が、子供バエルを焼き払うための援軍を送ると言っていたことを。
真里伊は『ホーミング爆撃』というSKILLを獲得していた。
つまり、そのスキルで数億個体の子供バエル達を掃討できるものと推測できる。
現状況下においては、真里伊と話しをする猶予はない。
とにかく、今すぐに『ホーミング爆撃』を乱射してもらうべきだろう。
着地の衝撃を吸収するように膝を曲げ、片手を地面に付くと、真横に並んだ状態となった真里伊と視線が交差した。
「真里伊。事態は飲み込めていますか。今すぐに正面から押し寄せてくる数億程度いる個体を掃討しなければなりません。あいつ等をあなたの『ホーミング爆撃』にて焼き払ってもらえないでしょうか。」
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