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後日譚
後日譚126.事なかれ主義者はとりあえず突っ込んだ
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本館が新しく増築された、という事で部屋割りが若干変わった。
お嫁さんたちはみんな三階に移ってもらって、二階は子どもたちの部屋という事になっている。
ただ、まだ生後間もない子たちもいるので、子どもたち一人ひとりには部屋を与えていない。子どもたちには必要がないというのもあるけど、防犯やらお世話やらそっちの方が都合がいいからだった。
「これだけ部屋があっても足らないなんて、皆どのくらいする産む気なんだろうね」
「レモン?」
「いや、なんでもない」
朝のお祈りをした際に引っ付いてきたドライアドたちや、肩の上に乗ったレモンちゃんと一緒に増築された場所を見て回っていると、奥の方の部屋が騒がしい事に気付いた。ずらりと同じ部屋が並んでいる廊下を足早に歩き、そこへ向かって扉を開けると中は畳が敷き詰められた広間だった。
書斎やら談話室やらの正反対に位置するその部屋は、モデルは二部屋だったけど壁をぶち抜いて一部屋にしたそうだ。
広い畳の部屋には既に先客がいた。子どもたちをそれぞれ連れたお嫁さんたちと、子どもたち、それから当然のようにリヴァイさんたちもいた。
窓が開け放たれていて、ドライアドたちがわらわらと入ってきているけど良いのだろうか?
「私たちも遊ぶ~」
「れもーん!」
「……レヴィさん、どういう状況、これ?」
「運動を刺せようと育生を連れてきたら窓の外のドライアドたちが育生を食べ物で釣っていたのですわ。それを食べたがった育生が泣いてしまったから仕方なくドライアドたちを招き入れてこの部屋限定で出入り自由にする事にしたのですわ。何か問題はあったのですわ?」
「問題って言うか……好き勝手出入りするようになったら面倒な事にならない? 気付いたら使っていない部屋が植物が生い茂ってたりとか……」
「お昼の間だけで、私たちの誰かがいて、尚且つかってに物を置かない事を約束したから問題ないのですわ。それに、シズトにもメリットはあると思うのですわ?」
「メリット……?」
「外に出る度にドライアドたちに引っ付かれる事は少なくなるかもしれないのですわ」
「あー………………なるほど?」
ドライアドたちの事だし、それはそれ、これはこれって言う感じで明日以降も引っ付いて来そうだけどどうなんだろう?
赤ちゃんたちそれぞれの周りをぐるりと包囲しているドライアドたちを眺めながら少し疑問に思ったけど、明日になればどうせわかる事だからと考える事を止めて僕も育生たちと少し戯れる事にした。
まだまだお嫁さんたちは遊ぶみたいだったけど、新しく増築された場所が気になるのでお暇しようとすると慌てた様子でレモンちゃんがついて来て肩の上に収まった。
「育生たちはもういいの?」
「レモン!」
「そう。じゃ、探検しようか」
レモンちゃんを肩車した状態で、乳母の内の一人に空けてもらった扉をくぐると、後ろからペタペタと誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「パメラもするデスよ~」
「歌羽のこと見てなくて大丈夫?」
「皆が見てくれてるから大丈夫デス!」
室内履き用のスリッパを履いて追っかけてきたのは翼人族のパメラだった。小柄だけど大きな黒い翼がトレードマークの女性だ。
昨日は別館で暮らしているアンジェラやリーヴィアと一緒に「日が暮れる前に探検するデスよ!」と言って増築された場所を見て回ろうとしていたけど、日が暮れた後は別館で暮らしている人(特に子どもたち)は本館に立ち入り禁止だったのでリベンジ、と言った所だろうか?
「上か下か、どっちから見るデスか?」
「そうだねぇ。とりあえず上から行こうか」
窓の外の景色がよく見えるなぁ、なんて事を考えながら階段を上ると、廊下が左右に分かれていた。
真ん中には中庭があるけれど、窓から下を覗き込んでもドライアドたちがわちゃわちゃしているだけで特に何もない。早く何を植えるか決めないとドライアドたちが勝手に植え始めそうだ。
「パメラの部屋はこっちデスよー」
「いや、知ってるけど……どうやって決めたの?」
「…………なんか決まってたデス」
「…………そっか」
思い出そうとしたみたいだけど忘れたようだ。
パメラに引っ張られるがまま歩くと、すぐに着いた。ネームプレートを見る限り、ディアーヌさんとモニカの間の部屋のようだ。
「部屋が広くなったけど特に置く物がないデスよ」
躊躇なく自分の部屋の扉を開けて中に入れてくれたけど、彼女の言う通り部屋の中には寝具くらいしか家具は置かれてなかった。ただ――。
「まだここで寝て一日しか経ってないよね? どうしたらこんなに散らかせるん?」
部屋の中は遊び道具が散乱していた。以前の部屋だったらきっと足の踏み場もなかっただろうけど、部屋の広さが二倍になったのであちらこちらに遊んだであろう道具たちが床に落ちているだけだった。
ああ、『加工』の加護があったら遊び道具をしまう用の棚とかケースとか作ったのに、なんて事を思いながらとりあえず全部片づける事にした。
「パメラはアイテムバッグを持ってるだけだからね!」
「分かったデス!」
「新しいの出さない!」
「閉まった物を出しただけデス!」
……隣の部屋がモニカなのは、毎日整理整頓する事になる事を見越してだろうか?
なんて事を考えながら遊ぶパメラを窘めてせっせと片づけをするのだった。
お嫁さんたちはみんな三階に移ってもらって、二階は子どもたちの部屋という事になっている。
ただ、まだ生後間もない子たちもいるので、子どもたち一人ひとりには部屋を与えていない。子どもたちには必要がないというのもあるけど、防犯やらお世話やらそっちの方が都合がいいからだった。
「これだけ部屋があっても足らないなんて、皆どのくらいする産む気なんだろうね」
「レモン?」
「いや、なんでもない」
朝のお祈りをした際に引っ付いてきたドライアドたちや、肩の上に乗ったレモンちゃんと一緒に増築された場所を見て回っていると、奥の方の部屋が騒がしい事に気付いた。ずらりと同じ部屋が並んでいる廊下を足早に歩き、そこへ向かって扉を開けると中は畳が敷き詰められた広間だった。
書斎やら談話室やらの正反対に位置するその部屋は、モデルは二部屋だったけど壁をぶち抜いて一部屋にしたそうだ。
広い畳の部屋には既に先客がいた。子どもたちをそれぞれ連れたお嫁さんたちと、子どもたち、それから当然のようにリヴァイさんたちもいた。
窓が開け放たれていて、ドライアドたちがわらわらと入ってきているけど良いのだろうか?
「私たちも遊ぶ~」
「れもーん!」
「……レヴィさん、どういう状況、これ?」
「運動を刺せようと育生を連れてきたら窓の外のドライアドたちが育生を食べ物で釣っていたのですわ。それを食べたがった育生が泣いてしまったから仕方なくドライアドたちを招き入れてこの部屋限定で出入り自由にする事にしたのですわ。何か問題はあったのですわ?」
「問題って言うか……好き勝手出入りするようになったら面倒な事にならない? 気付いたら使っていない部屋が植物が生い茂ってたりとか……」
「お昼の間だけで、私たちの誰かがいて、尚且つかってに物を置かない事を約束したから問題ないのですわ。それに、シズトにもメリットはあると思うのですわ?」
「メリット……?」
「外に出る度にドライアドたちに引っ付かれる事は少なくなるかもしれないのですわ」
「あー………………なるほど?」
ドライアドたちの事だし、それはそれ、これはこれって言う感じで明日以降も引っ付いて来そうだけどどうなんだろう?
赤ちゃんたちそれぞれの周りをぐるりと包囲しているドライアドたちを眺めながら少し疑問に思ったけど、明日になればどうせわかる事だからと考える事を止めて僕も育生たちと少し戯れる事にした。
まだまだお嫁さんたちは遊ぶみたいだったけど、新しく増築された場所が気になるのでお暇しようとすると慌てた様子でレモンちゃんがついて来て肩の上に収まった。
「育生たちはもういいの?」
「レモン!」
「そう。じゃ、探検しようか」
レモンちゃんを肩車した状態で、乳母の内の一人に空けてもらった扉をくぐると、後ろからペタペタと誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「パメラもするデスよ~」
「歌羽のこと見てなくて大丈夫?」
「皆が見てくれてるから大丈夫デス!」
室内履き用のスリッパを履いて追っかけてきたのは翼人族のパメラだった。小柄だけど大きな黒い翼がトレードマークの女性だ。
昨日は別館で暮らしているアンジェラやリーヴィアと一緒に「日が暮れる前に探検するデスよ!」と言って増築された場所を見て回ろうとしていたけど、日が暮れた後は別館で暮らしている人(特に子どもたち)は本館に立ち入り禁止だったのでリベンジ、と言った所だろうか?
「上か下か、どっちから見るデスか?」
「そうだねぇ。とりあえず上から行こうか」
窓の外の景色がよく見えるなぁ、なんて事を考えながら階段を上ると、廊下が左右に分かれていた。
真ん中には中庭があるけれど、窓から下を覗き込んでもドライアドたちがわちゃわちゃしているだけで特に何もない。早く何を植えるか決めないとドライアドたちが勝手に植え始めそうだ。
「パメラの部屋はこっちデスよー」
「いや、知ってるけど……どうやって決めたの?」
「…………なんか決まってたデス」
「…………そっか」
思い出そうとしたみたいだけど忘れたようだ。
パメラに引っ張られるがまま歩くと、すぐに着いた。ネームプレートを見る限り、ディアーヌさんとモニカの間の部屋のようだ。
「部屋が広くなったけど特に置く物がないデスよ」
躊躇なく自分の部屋の扉を開けて中に入れてくれたけど、彼女の言う通り部屋の中には寝具くらいしか家具は置かれてなかった。ただ――。
「まだここで寝て一日しか経ってないよね? どうしたらこんなに散らかせるん?」
部屋の中は遊び道具が散乱していた。以前の部屋だったらきっと足の踏み場もなかっただろうけど、部屋の広さが二倍になったのであちらこちらに遊んだであろう道具たちが床に落ちているだけだった。
ああ、『加工』の加護があったら遊び道具をしまう用の棚とかケースとか作ったのに、なんて事を思いながらとりあえず全部片づける事にした。
「パメラはアイテムバッグを持ってるだけだからね!」
「分かったデス!」
「新しいの出さない!」
「閉まった物を出しただけデス!」
……隣の部屋がモニカなのは、毎日整理整頓する事になる事を見越してだろうか?
なんて事を考えながら遊ぶパメラを窘めてせっせと片づけをするのだった。
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