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後日譚
後日譚116.お嫁さんたちは交流を深めた
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オクタビアとシズトの配偶者たちの親交を深める交流は夕方頃まで続いた。
夕飯時にエルフのジューンとエミリーが席を立っても続いていたが、流石に食事の準備ができたと報せが来たら移動する事になった。
数時間話している間に、オクタビアが新参者だから敬語は使わなくていいと言うと、敬語が苦手な面々はため口で話すようになった。だが、レヴィアは癖が抜けないようだ。
「夕食後もお話するのですわ?」
「ぜひお願いします」
オクタビアもまた、敬語を使わなくてもいいと言われていたが、こっちの方が慣れているからという事で敬語を使っているようだ。
食事は特に大きな問題もなく進み、シズトはランチェッタとセシリア、それからジューンの三人と一緒に食堂から出て行った。
ノエルとパメラは既に部屋を去った後だったが、食堂に残った面々はシズトが風呂から上がるまでその場に残る事にしたようだ。
「お手伝いさせてください」
「どうぞ。では、お皿をこの『浮遊ワゴン』に載せてください」
「分かりました。それにしても、本当にいろんな魔道具があるんですね」
「私たちの仕事がなくなるんじゃないかと思うほどありますよ。食器洗いも魔道具で済ませられますし」
「そうなんですね」
オクタビアのトーンが少しだけ下がった事に気が付いたエミリーは浮遊ワゴンに食器を載せていきながらオクタビアに問いかける。
「自分の事は自分で、という事はもしかして食器を洗う練習もしていたんですか?」
「はい。残念ながら活用する機会はなさそうですけど」
なかなかお役に立てないです、と肩を落とすオクタビアになんと声掛けをすべきかエミリーは迷っている様だった。
彼女の代わりに口を開いたのはレヴィアだ。
「そうですわね。屋敷の外ならあるいはあるかもしれないのですけれど、その場合余計にオクタビア様が食器洗いをする機会はなさそうなのですわ。ただ、その分たくさんシズトや子どもたちとの時間ができるから生活を楽にする魔道具はもっと広まればいいと思うのですわ」
「……確かにそういう考え方もできますね」
オクタビアは食器を浮遊ワゴンに乗せ終わると「魔道具を使ってみたい」と言ったのでエミリーと一緒に食堂を出て厨房に向かった。
厨房に残った面々は一様に出て言った扉からレヴィアへと視線を移した。
各々言いたい事はあるのだろうが、最初に口を開いたのは魔道具『魔力マシマシ飴』を舐めていた赤髪の大柄な女性ラオだった。
「エンジェリアの姫君という割には随分とまあ大人しいというか、素直だが……演じてるってわけじゃねぇよな?」
「そうですわね。今の所思った事をそのまま話している可能性が高いのですわ。ラピスのように、何も考えないようにしている、という線もあるかと思ったのですけれど、ちゃんと思考は読み取れるから違うと思うのですわ~」
「以前の婚約者との事やこれまでの生活を聞いても、意図的にそういう風に育てられたんでしょうね。政略結婚の道具として、結婚相手に考え方や価値観が合わせられるように、って。人族至上主義とかエンジェリアの価値観だったら他国に嫁げないからわたくしが皇帝だったとしてもそうしたかもしれないわ」
ランチェッタが腕を組むと、大きな胸が腕によって押し上げられてさらに強調されているが周りはそれを気にした様子もない。
「シズトくんにとっては良い事なのかしら?」
ラオの妹のルウが首を傾げると、彼女の長い赤髪もそれに合わせて揺れ動いた。ラオと同様、寝間着として使っている胸元が大きく開いたタンクトップを着ているため、大きな谷間が露になっているがそれを見る者もこの部屋にはいなかった。
「んー、シズト次第な気がするのですわ~。相手に合わせて考え方や価値観が変わると言っても、それを相手が求めなかったら何も変わらない可能性もあるのですわ。シズトはエンジェリアの女帝として確固たる地位を得たら婚約を白紙にするつもりなのですわ。だから積極的に関わるつもりはないみたいですし、変わるように求める事もしないと思うのですわ」
「シズトもどちらかというと相手に合わせるタイプよね」
「そうか? 割と強情なところあるぞ」
「譲らない所はあるけれど、それ以外は柔軟に対応しようとしているようにわたくしからは見えるわ」
付き合いの長いラオはランチェッタとは考えが違う様で首を傾げているが、今重要なのはそこではない、とレヴィアは話を戻した。
「今回の婚約の件、エンジェリアの教育が裏目に出ないと良いのですけれど……こればっかりは二人の事ですわ。見守って相談があったら答えるくらいがいい気がするのですわ」
「レヴィちゃんは今回の婚約に積極的だと思っていたけれど違うの?」
「正直どっちでもいいのですけれど、邪神だった頃のチャム様の影響を最も受けていたエンジェリアや小国家群のイメージを変えない限り、シズトが布教を広めようとしても神様の形は変わらないかもしれないのですわ。もちろんそれは他の大陸でもいえる事ですけれど、シグニール大陸でチャム様を布教するにあたって今回の婚約は決して悪いものではないと思うのですわ。シズトの気持ちを置いておけば、ですけれど……」
「これ以上増やす事はやっぱり嫌なのかしら?」
「以前までより拒絶感が少ないから判断が難しい所ですわ。そこら辺もエルフの国のトップとして考え方が変わったのかもしれないですわ?」
「いやぁ、どっちかってーとあれは……と、戻ってくるみてぇだな」
魔力探知で後片付けを終えたエミリーとオクタビアが部屋に近づいてくる事に気付いた面々は、ここで終わりだ、と話をいったん切り上げるのだった。
夕飯時にエルフのジューンとエミリーが席を立っても続いていたが、流石に食事の準備ができたと報せが来たら移動する事になった。
数時間話している間に、オクタビアが新参者だから敬語は使わなくていいと言うと、敬語が苦手な面々はため口で話すようになった。だが、レヴィアは癖が抜けないようだ。
「夕食後もお話するのですわ?」
「ぜひお願いします」
オクタビアもまた、敬語を使わなくてもいいと言われていたが、こっちの方が慣れているからという事で敬語を使っているようだ。
食事は特に大きな問題もなく進み、シズトはランチェッタとセシリア、それからジューンの三人と一緒に食堂から出て行った。
ノエルとパメラは既に部屋を去った後だったが、食堂に残った面々はシズトが風呂から上がるまでその場に残る事にしたようだ。
「お手伝いさせてください」
「どうぞ。では、お皿をこの『浮遊ワゴン』に載せてください」
「分かりました。それにしても、本当にいろんな魔道具があるんですね」
「私たちの仕事がなくなるんじゃないかと思うほどありますよ。食器洗いも魔道具で済ませられますし」
「そうなんですね」
オクタビアのトーンが少しだけ下がった事に気が付いたエミリーは浮遊ワゴンに食器を載せていきながらオクタビアに問いかける。
「自分の事は自分で、という事はもしかして食器を洗う練習もしていたんですか?」
「はい。残念ながら活用する機会はなさそうですけど」
なかなかお役に立てないです、と肩を落とすオクタビアになんと声掛けをすべきかエミリーは迷っている様だった。
彼女の代わりに口を開いたのはレヴィアだ。
「そうですわね。屋敷の外ならあるいはあるかもしれないのですけれど、その場合余計にオクタビア様が食器洗いをする機会はなさそうなのですわ。ただ、その分たくさんシズトや子どもたちとの時間ができるから生活を楽にする魔道具はもっと広まればいいと思うのですわ」
「……確かにそういう考え方もできますね」
オクタビアは食器を浮遊ワゴンに乗せ終わると「魔道具を使ってみたい」と言ったのでエミリーと一緒に食堂を出て厨房に向かった。
厨房に残った面々は一様に出て言った扉からレヴィアへと視線を移した。
各々言いたい事はあるのだろうが、最初に口を開いたのは魔道具『魔力マシマシ飴』を舐めていた赤髪の大柄な女性ラオだった。
「エンジェリアの姫君という割には随分とまあ大人しいというか、素直だが……演じてるってわけじゃねぇよな?」
「そうですわね。今の所思った事をそのまま話している可能性が高いのですわ。ラピスのように、何も考えないようにしている、という線もあるかと思ったのですけれど、ちゃんと思考は読み取れるから違うと思うのですわ~」
「以前の婚約者との事やこれまでの生活を聞いても、意図的にそういう風に育てられたんでしょうね。政略結婚の道具として、結婚相手に考え方や価値観が合わせられるように、って。人族至上主義とかエンジェリアの価値観だったら他国に嫁げないからわたくしが皇帝だったとしてもそうしたかもしれないわ」
ランチェッタが腕を組むと、大きな胸が腕によって押し上げられてさらに強調されているが周りはそれを気にした様子もない。
「シズトくんにとっては良い事なのかしら?」
ラオの妹のルウが首を傾げると、彼女の長い赤髪もそれに合わせて揺れ動いた。ラオと同様、寝間着として使っている胸元が大きく開いたタンクトップを着ているため、大きな谷間が露になっているがそれを見る者もこの部屋にはいなかった。
「んー、シズト次第な気がするのですわ~。相手に合わせて考え方や価値観が変わると言っても、それを相手が求めなかったら何も変わらない可能性もあるのですわ。シズトはエンジェリアの女帝として確固たる地位を得たら婚約を白紙にするつもりなのですわ。だから積極的に関わるつもりはないみたいですし、変わるように求める事もしないと思うのですわ」
「シズトもどちらかというと相手に合わせるタイプよね」
「そうか? 割と強情なところあるぞ」
「譲らない所はあるけれど、それ以外は柔軟に対応しようとしているようにわたくしからは見えるわ」
付き合いの長いラオはランチェッタとは考えが違う様で首を傾げているが、今重要なのはそこではない、とレヴィアは話を戻した。
「今回の婚約の件、エンジェリアの教育が裏目に出ないと良いのですけれど……こればっかりは二人の事ですわ。見守って相談があったら答えるくらいがいい気がするのですわ」
「レヴィちゃんは今回の婚約に積極的だと思っていたけれど違うの?」
「正直どっちでもいいのですけれど、邪神だった頃のチャム様の影響を最も受けていたエンジェリアや小国家群のイメージを変えない限り、シズトが布教を広めようとしても神様の形は変わらないかもしれないのですわ。もちろんそれは他の大陸でもいえる事ですけれど、シグニール大陸でチャム様を布教するにあたって今回の婚約は決して悪いものではないと思うのですわ。シズトの気持ちを置いておけば、ですけれど……」
「これ以上増やす事はやっぱり嫌なのかしら?」
「以前までより拒絶感が少ないから判断が難しい所ですわ。そこら辺もエルフの国のトップとして考え方が変わったのかもしれないですわ?」
「いやぁ、どっちかってーとあれは……と、戻ってくるみてぇだな」
魔力探知で後片付けを終えたエミリーとオクタビアが部屋に近づいてくる事に気付いた面々は、ここで終わりだ、と話をいったん切り上げるのだった。
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