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後日譚
後日譚96.事なかれ主義者は練習するつもり
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「あれ、ご飯は?」
「まずは話を聞く事が先なのですわ」
「お話が終わったらぁ、すぐに準備しますねぇ」
ですよね……。
大人しく座って聞かれた事を答えるしかないようだ。
ただ、今回の事に関しては僕にも言い分はある。
「ちゃんと加護を使って天気を変えるよ、ってみんなに知らせたよね? 町の子たちも大きな混乱はなかったように見えたけど?」
「そうですわね。だいぶ落ち着いたと思うのですわ」
「落ち着いた?」
「シズトが向かった方向で巨大な竜巻が発生したリ、雷が落ちたりしたら私たちじゃなくても心配するのですわ」
「奴隷である町の子たちは特にそうよね」
ランチェッタさんに同意されたレヴィさんは頷いて「大きな子たちは世界樹の番人がついているって事を理解しているから大丈夫だったみたいですけれど、それでも仕事が捗らなかったと報告が来ているのですわ」と紙を数枚取り出して教えてくれた。
どうやら町の子たちの働きぶりの報告書のようだ。
「まあ、やっちまったもんは仕方ねぇよ。そもそもやらかすだろうって事は分かってただろ? それをぐちぐちいうより、結果をまずは聞いた方が良いんじゃねぇか?」
やらかす前提で考えられていたのは心外だけれど、ラオさんの言う通りだと思う。
なんて事を思いながらうんうんと頷いていると、ギロリとラオさんの燃えるような赤い目で睨まれた。
「今度からはアタシもついて行くからな」
「はい」
まあ、育児で大変なラオさんがついて来れるかは不明だけれど、そこら辺は幸いな事に同じ立場のお嫁さんがたくさんいるしカバーしてもらうつもりなのだろう。
「それで、結局どんな感じだったのかしら?」
ルウさんの問いかけに「雪遊びはいつでもできるよ」と答えるとそういう事じゃない、と言われた。
「凧あげとかも楽しめそうだよ」
「凧あげが何かわからないけれど、そういう事が知りたいわけじゃないのよ」
だよね、知ってる。
でも、子どもたちと遊ぶ際の選択肢として知っておいた方が良いんじゃないかな、と思ったから先に伝えただけだ。
ちょっと居住まいを正して、真面目な雰囲気を作ると、壁際の方で何やら話をしていたパメラやシンシーラたちも静かになった。
「まずは魔力消費の事だけど……たぶん、不毛の大地だから結構な魔力を持ってかれたんだと思う。ここじゃなかったら少なくてすみそう」
「それは……いい事なのですわ?」
「難しい所だねぇ。珍しい加護だし、いろんなところで求められて慌ただしくなるくらいだったら消費魔力が多くてあまり多様出来ない、って事にしておいた方が良いかも?」
「まあ、そこら辺はシズトが隠したいならしばらくは隠せるんじゃねぇか? 実験の際に他国の間諜はエルフたちが追跡を許してねぇだろうし。こっから分かったのはさっき言われてた竜巻と雷、それから黒雲を発生させたくらいだからな」
「そっか。……でも、加護を広めるんだったら実演して見せた方が分かりやすいんだよね」
しばらくの間、沈黙が食堂を支配した。この件については一先ず保留、という事になりそうだ。
「他にどんな事ができたのかしら? 内容によってはガレオールでも協力してもらう事があるかもしれないのだけれど……」
「ランチェッタさんに事前に聞かれてた風を吹かす事は問題なくできたよ。あとは嵐を退ける事は……そもそも嵐が近づいてくるような場所じゃないから試せなかったけど、竜巻をどっかにやったり、留まっていた黒雲を散らしたりもできたからある程度できるんじゃないかなぁ。頼まれてた事とは全然関係ない事だけど、みぞれもあられもひょうも思いのままに降らせる事が出来たよ。流石に槍とかは降って来なかったけど」
あくまで気象に関する事だけを叶える加護のようだ。
本当に槍を降らせるというのであれば、竜巻か何かで飛ばさないと無理そう。
「必要な魔力量は、ガレオールとかで試してみない事には分からないけど、少なくとも不毛の大地でした実験よりは少なくなるんじゃないかなぁ」
「そう。…………他国に対してどうするかの話し合い次第では、ガレオールでも実験をしてみましょう」
「そうだね。海だったら迷惑は掛からないもんね」
「………………そうね」
ランチェッタさんの返事に不自然な間があったけれど、何かあっただろうか?
…………ああ、魚人の人たちが海の中にいるわ。
関わりがほとんどないからつい忘れがちになるけど、実験をするならそこら辺の調整とかが必要になるのかもしれない。
「あとは戦闘にも使えるか、って事だけど……ジュリウス曰く、雷も竜巻も、強烈な突風も防げるらしいから一対一とかの状況だと危ないかもしれない」
「ジュリウス基準じゃそりゃそうだろ」
「ついて来てくれた世界樹の番人たちも雷の余波とか竜巻とか防いでくれてたよ?」
「お前の周りの世界樹の番人は、精鋭部隊なのを忘れるなよ?」
「加護を使っている所を見ていないし、相性もあるから一概には言えないけど、少なくとも私は相手にしたくないかなぁ」
ラオさんとルウさんの反応を見る限り、戦闘でもある程度使えるのかもしれない。
過信は禁物だし、そもそも戦いにはならないように動いて行くつもりだけれど、避けられない戦いもあるだろうから覚えておこう。
「あ、でも個人戦じゃなくて集団戦とかだったら結構使えると思うよ。事前に戦う場所が分かっていたら数日前とかから祈願しておけばいいし。ただ、離れた場所や時間でも加護で影響を与える事ができるって分かっちゃうと、どんな自然災害もまじないの加護のせいじゃないか、って疑われる可能性が出ちゃうかもしれないって事だったけど」
「…………証拠がない限りは相手にする必要はないけれど、そういうデマを流布される可能性はあるわね」
「信仰に悪影響が出てしまうかもしれないですわ」
「やっぱそうだよね……」
「それは加護を使っていく時点で変わんねぇだろ」
「そうね。長続きする雨はまじないの加護のせいだ、って言われるかもしれないわね」
「使っても使わなくてもデマが流れるなら、必要な時は出し惜しみせずに使おうかな」
必要な時なんて来ないで欲しいけど。
ただ、厄介事は向こうからやってくる事が殆どだからいつか来るかもしれない。
その時に備えて、まじないの加護の練度を上げておこう。
「まずは話を聞く事が先なのですわ」
「お話が終わったらぁ、すぐに準備しますねぇ」
ですよね……。
大人しく座って聞かれた事を答えるしかないようだ。
ただ、今回の事に関しては僕にも言い分はある。
「ちゃんと加護を使って天気を変えるよ、ってみんなに知らせたよね? 町の子たちも大きな混乱はなかったように見えたけど?」
「そうですわね。だいぶ落ち着いたと思うのですわ」
「落ち着いた?」
「シズトが向かった方向で巨大な竜巻が発生したリ、雷が落ちたりしたら私たちじゃなくても心配するのですわ」
「奴隷である町の子たちは特にそうよね」
ランチェッタさんに同意されたレヴィさんは頷いて「大きな子たちは世界樹の番人がついているって事を理解しているから大丈夫だったみたいですけれど、それでも仕事が捗らなかったと報告が来ているのですわ」と紙を数枚取り出して教えてくれた。
どうやら町の子たちの働きぶりの報告書のようだ。
「まあ、やっちまったもんは仕方ねぇよ。そもそもやらかすだろうって事は分かってただろ? それをぐちぐちいうより、結果をまずは聞いた方が良いんじゃねぇか?」
やらかす前提で考えられていたのは心外だけれど、ラオさんの言う通りだと思う。
なんて事を思いながらうんうんと頷いていると、ギロリとラオさんの燃えるような赤い目で睨まれた。
「今度からはアタシもついて行くからな」
「はい」
まあ、育児で大変なラオさんがついて来れるかは不明だけれど、そこら辺は幸いな事に同じ立場のお嫁さんがたくさんいるしカバーしてもらうつもりなのだろう。
「それで、結局どんな感じだったのかしら?」
ルウさんの問いかけに「雪遊びはいつでもできるよ」と答えるとそういう事じゃない、と言われた。
「凧あげとかも楽しめそうだよ」
「凧あげが何かわからないけれど、そういう事が知りたいわけじゃないのよ」
だよね、知ってる。
でも、子どもたちと遊ぶ際の選択肢として知っておいた方が良いんじゃないかな、と思ったから先に伝えただけだ。
ちょっと居住まいを正して、真面目な雰囲気を作ると、壁際の方で何やら話をしていたパメラやシンシーラたちも静かになった。
「まずは魔力消費の事だけど……たぶん、不毛の大地だから結構な魔力を持ってかれたんだと思う。ここじゃなかったら少なくてすみそう」
「それは……いい事なのですわ?」
「難しい所だねぇ。珍しい加護だし、いろんなところで求められて慌ただしくなるくらいだったら消費魔力が多くてあまり多様出来ない、って事にしておいた方が良いかも?」
「まあ、そこら辺はシズトが隠したいならしばらくは隠せるんじゃねぇか? 実験の際に他国の間諜はエルフたちが追跡を許してねぇだろうし。こっから分かったのはさっき言われてた竜巻と雷、それから黒雲を発生させたくらいだからな」
「そっか。……でも、加護を広めるんだったら実演して見せた方が分かりやすいんだよね」
しばらくの間、沈黙が食堂を支配した。この件については一先ず保留、という事になりそうだ。
「他にどんな事ができたのかしら? 内容によってはガレオールでも協力してもらう事があるかもしれないのだけれど……」
「ランチェッタさんに事前に聞かれてた風を吹かす事は問題なくできたよ。あとは嵐を退ける事は……そもそも嵐が近づいてくるような場所じゃないから試せなかったけど、竜巻をどっかにやったり、留まっていた黒雲を散らしたりもできたからある程度できるんじゃないかなぁ。頼まれてた事とは全然関係ない事だけど、みぞれもあられもひょうも思いのままに降らせる事が出来たよ。流石に槍とかは降って来なかったけど」
あくまで気象に関する事だけを叶える加護のようだ。
本当に槍を降らせるというのであれば、竜巻か何かで飛ばさないと無理そう。
「必要な魔力量は、ガレオールとかで試してみない事には分からないけど、少なくとも不毛の大地でした実験よりは少なくなるんじゃないかなぁ」
「そう。…………他国に対してどうするかの話し合い次第では、ガレオールでも実験をしてみましょう」
「そうだね。海だったら迷惑は掛からないもんね」
「………………そうね」
ランチェッタさんの返事に不自然な間があったけれど、何かあっただろうか?
…………ああ、魚人の人たちが海の中にいるわ。
関わりがほとんどないからつい忘れがちになるけど、実験をするならそこら辺の調整とかが必要になるのかもしれない。
「あとは戦闘にも使えるか、って事だけど……ジュリウス曰く、雷も竜巻も、強烈な突風も防げるらしいから一対一とかの状況だと危ないかもしれない」
「ジュリウス基準じゃそりゃそうだろ」
「ついて来てくれた世界樹の番人たちも雷の余波とか竜巻とか防いでくれてたよ?」
「お前の周りの世界樹の番人は、精鋭部隊なのを忘れるなよ?」
「加護を使っている所を見ていないし、相性もあるから一概には言えないけど、少なくとも私は相手にしたくないかなぁ」
ラオさんとルウさんの反応を見る限り、戦闘でもある程度使えるのかもしれない。
過信は禁物だし、そもそも戦いにはならないように動いて行くつもりだけれど、避けられない戦いもあるだろうから覚えておこう。
「あ、でも個人戦じゃなくて集団戦とかだったら結構使えると思うよ。事前に戦う場所が分かっていたら数日前とかから祈願しておけばいいし。ただ、離れた場所や時間でも加護で影響を与える事ができるって分かっちゃうと、どんな自然災害もまじないの加護のせいじゃないか、って疑われる可能性が出ちゃうかもしれないって事だったけど」
「…………証拠がない限りは相手にする必要はないけれど、そういうデマを流布される可能性はあるわね」
「信仰に悪影響が出てしまうかもしれないですわ」
「やっぱそうだよね……」
「それは加護を使っていく時点で変わんねぇだろ」
「そうね。長続きする雨はまじないの加護のせいだ、って言われるかもしれないわね」
「使っても使わなくてもデマが流れるなら、必要な時は出し惜しみせずに使おうかな」
必要な時なんて来ないで欲しいけど。
ただ、厄介事は向こうからやってくる事が殆どだからいつか来るかもしれない。
その時に備えて、まじないの加護の練度を上げておこう。
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