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後日譚
後日譚93.事なかれ主義者は引き返した
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龍斗が生まれたり、チャム様から加護を授かったりと色々あった日だったけれど、それはそれとしていつも通り夫婦の営みはあった。
最近は妊娠していないお嫁さんたちを中心にローテーションが回されていたけれど、今日は急遽ジューンさんに変更になった。できやすい日かもしれないから、という事らしい。
「…………子どもができるおまじないとかもらうのもありだったなぁ」
「チャム様から授かった加護の事ですかぁ?」
横で布団にくるまっていたジューンさんが、ゴロンと寝返りを打って僕を見てきた。
する事をした後のジューンさんは寝間着を着てくれるので安心してそちらの方を見れる。
至近距離にジューンさんの顔があると、やっぱりエルフは容姿端麗なんだなぁ、と思うけれど、それは今は置いといて彼女の問いかけに答える。
「うん。そうすればすぐにできるだろうし、頻度も減るかなって」
「頻度は減らないと思いますよぉ? ほらぁ、ホムラちゃんたちも子どもを作るのが目的でしているわけじゃないでですよねぇ?」
「…………やっぱりそうかな? まあ、頻度が減らなかったとしても、そういう加護があったら子どもを作らなきゃっていうプレッシャーが少しは減るんじゃないかな?」
「そうかもしれませんねぇ」
ディアーヌさんとセシリアさんは侍女だから主が妊娠中は避妊をする、といって教会にお祈りに行っているので特に思う所はないとは思う。
ただ、ジューンさんは大地の神様に毎日足繁くお祈りに行っているのも知っているし、食事の合間にエルフの間で子どもができやすくなると言われている物を作っては食べたり飲んだりしている事も知っている。
頻度が増えているのに彼女だけ妊娠しないのは、僕が人族で彼女がエルフだからだろう。
「ただぁ、まだ始めたばかりですしぃ、わざわざ加護の力を借りなくてもいいと思いますぅ」
まあ、エルフである彼女の感覚で言うと子どもを作ろうとし始めたのはつい最近の事なんだろう。
ジューンさんが本格的に悩み始めたらレヴィさんが気づくと思うし、それまでは気にしないようにしておこうかな。
翌朝、ご飯を食べ終えて三柱と一緒にチャム様にもお祈りを済ませたらレモンちゃんとその他数名のドライアドを引っ付けたまま馬車に乗り込んだ。
ジュリウスと、世界樹の番人である仮面をつけた面々は馬車をぐるりと囲うように布陣している。
先頭には金色の髪が目立つ人族の男性が立っていた。
「陽太、しっかり働いてよ~」
「わーってるよ!」
これから向かうのはアンデッド系の魔物の巣窟である不毛の大地だ。
ファマリアも不毛の大地にあるんだけど、魔道具『セイクリッド・サンクチュアリ』のおかげでその事をつい忘れてしまう。
ただ、一歩結界の外に出るとゾンビやらスケルトン、ゴースト等の魔物がうようよいる。
その露払い役として陽太を雇った。
彼のパーティーメンバーである姫花は出産のサポートで忙しくしているし、明は僕の子どもの教師役になる事を目標に知識をどん欲に溜め込んでいるようだ。
一人余ってしまった陽太は、彼の護衛役兼監視役でもあるラックさんと一緒に即席でパーティーを組んでダンジョン探索をしていたらしい。
ただ、パーティー内の揉め事やら、安定した収入を得られない事などから僕に仕事を斡旋してくれと自分を売り込んできたのだ。
正直あまり関わりたくはないけれど、勇者として召喚された明を含めた三人は、現地の同じ加護を持つ人よりも加護の力が強力になりやすいらしい。
今後の事を考えて、手駒として抱えておくのはありだろう、というのがランチェッタさんの考えだった。
どうしても折り合いが悪い、となったらランチェッタさんの所かドラゴニアが責任もって引き取ってくれるそうなので、とりあえずお試しで雇う事にした。
陽太の準備が整った、という事で馬車が進み始めた。
町の住人たちに見送られながらメインストリートを南下し続けて、いくつかの門をくぐり、ファマリアの外に出た。
「さて、それじゃあ人通りが少ない方に……って、レモンちゃん? どうしたの?」
「れもー…………ん」
「きつい~」
「だるい~」
「かえりたい~」
僕に引っ付いていたドライアドたちが力なく離れていく。
レモンちゃんもぐでっとしていて、肩の上から落ちそうだ。
慌てて馬車を停めてジュリウスを呼ぶと、彼は「失念してました」と言って馬車を方向転換させて街の中に入れた。
町の中心に近づくにつれてぐったりとしていたドライアドたちが徐々に動き始め、町の中でも緑が増え始めている区画まで来ると元通りになった。
その様子を窓の外から確認したジュリウスは「やはりそうでしたか」と頷いた。
「不毛の大地は草木も生えない場所ですから、精霊と植物に近い存在であるドライアドたちにとってはつらい場所なのでしょう」
「そうなの? でも、町の外縁区でも見かけるって聞いたけど……」
「それはある程度生きたドライアドなのでしょうね。今回シズト様に引っ付いていた子たちはドライアドたちの中でも幼い者たちだったからそれが顕著に出たんでしょう」
なるほど。
今後はドライアドたちにもしっかりと行き先を伝えてから出発するようにしよう。
そう思いながらレモンちゃんたちを馬車から下ろした。
最近は妊娠していないお嫁さんたちを中心にローテーションが回されていたけれど、今日は急遽ジューンさんに変更になった。できやすい日かもしれないから、という事らしい。
「…………子どもができるおまじないとかもらうのもありだったなぁ」
「チャム様から授かった加護の事ですかぁ?」
横で布団にくるまっていたジューンさんが、ゴロンと寝返りを打って僕を見てきた。
する事をした後のジューンさんは寝間着を着てくれるので安心してそちらの方を見れる。
至近距離にジューンさんの顔があると、やっぱりエルフは容姿端麗なんだなぁ、と思うけれど、それは今は置いといて彼女の問いかけに答える。
「うん。そうすればすぐにできるだろうし、頻度も減るかなって」
「頻度は減らないと思いますよぉ? ほらぁ、ホムラちゃんたちも子どもを作るのが目的でしているわけじゃないでですよねぇ?」
「…………やっぱりそうかな? まあ、頻度が減らなかったとしても、そういう加護があったら子どもを作らなきゃっていうプレッシャーが少しは減るんじゃないかな?」
「そうかもしれませんねぇ」
ディアーヌさんとセシリアさんは侍女だから主が妊娠中は避妊をする、といって教会にお祈りに行っているので特に思う所はないとは思う。
ただ、ジューンさんは大地の神様に毎日足繁くお祈りに行っているのも知っているし、食事の合間にエルフの間で子どもができやすくなると言われている物を作っては食べたり飲んだりしている事も知っている。
頻度が増えているのに彼女だけ妊娠しないのは、僕が人族で彼女がエルフだからだろう。
「ただぁ、まだ始めたばかりですしぃ、わざわざ加護の力を借りなくてもいいと思いますぅ」
まあ、エルフである彼女の感覚で言うと子どもを作ろうとし始めたのはつい最近の事なんだろう。
ジューンさんが本格的に悩み始めたらレヴィさんが気づくと思うし、それまでは気にしないようにしておこうかな。
翌朝、ご飯を食べ終えて三柱と一緒にチャム様にもお祈りを済ませたらレモンちゃんとその他数名のドライアドを引っ付けたまま馬車に乗り込んだ。
ジュリウスと、世界樹の番人である仮面をつけた面々は馬車をぐるりと囲うように布陣している。
先頭には金色の髪が目立つ人族の男性が立っていた。
「陽太、しっかり働いてよ~」
「わーってるよ!」
これから向かうのはアンデッド系の魔物の巣窟である不毛の大地だ。
ファマリアも不毛の大地にあるんだけど、魔道具『セイクリッド・サンクチュアリ』のおかげでその事をつい忘れてしまう。
ただ、一歩結界の外に出るとゾンビやらスケルトン、ゴースト等の魔物がうようよいる。
その露払い役として陽太を雇った。
彼のパーティーメンバーである姫花は出産のサポートで忙しくしているし、明は僕の子どもの教師役になる事を目標に知識をどん欲に溜め込んでいるようだ。
一人余ってしまった陽太は、彼の護衛役兼監視役でもあるラックさんと一緒に即席でパーティーを組んでダンジョン探索をしていたらしい。
ただ、パーティー内の揉め事やら、安定した収入を得られない事などから僕に仕事を斡旋してくれと自分を売り込んできたのだ。
正直あまり関わりたくはないけれど、勇者として召喚された明を含めた三人は、現地の同じ加護を持つ人よりも加護の力が強力になりやすいらしい。
今後の事を考えて、手駒として抱えておくのはありだろう、というのがランチェッタさんの考えだった。
どうしても折り合いが悪い、となったらランチェッタさんの所かドラゴニアが責任もって引き取ってくれるそうなので、とりあえずお試しで雇う事にした。
陽太の準備が整った、という事で馬車が進み始めた。
町の住人たちに見送られながらメインストリートを南下し続けて、いくつかの門をくぐり、ファマリアの外に出た。
「さて、それじゃあ人通りが少ない方に……って、レモンちゃん? どうしたの?」
「れもー…………ん」
「きつい~」
「だるい~」
「かえりたい~」
僕に引っ付いていたドライアドたちが力なく離れていく。
レモンちゃんもぐでっとしていて、肩の上から落ちそうだ。
慌てて馬車を停めてジュリウスを呼ぶと、彼は「失念してました」と言って馬車を方向転換させて街の中に入れた。
町の中心に近づくにつれてぐったりとしていたドライアドたちが徐々に動き始め、町の中でも緑が増え始めている区画まで来ると元通りになった。
その様子を窓の外から確認したジュリウスは「やはりそうでしたか」と頷いた。
「不毛の大地は草木も生えない場所ですから、精霊と植物に近い存在であるドライアドたちにとってはつらい場所なのでしょう」
「そうなの? でも、町の外縁区でも見かけるって聞いたけど……」
「それはある程度生きたドライアドなのでしょうね。今回シズト様に引っ付いていた子たちはドライアドたちの中でも幼い者たちだったからそれが顕著に出たんでしょう」
なるほど。
今後はドライアドたちにもしっかりと行き先を伝えてから出発するようにしよう。
そう思いながらレモンちゃんたちを馬車から下ろした。
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