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後日譚
後日譚83.事なかれ主義者は言葉を飲み込んだ
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ミスティア大陸の方々との会談は迎賓館の一室で行われた。料理大会の後だったので、食事とかはしないらしい。
「お久しぶりです、シズト様。アビゲイル・バンフィールドです。夫のタカノリがいつもお世話になっております」
そう言いながらぺこりと頭を下げたのはアビゲイルさんだ。
人族の女性で、人形のように整った顔立ちをしている。
二十代前半くらいにしか見えないけど、彼女にも子どもはいる。
……いや、こっちの世界だと二十代前半でも子どもがいるのは不思議ではないのか。成人年齢が十五歳だし。
「お久しぶりです、アビゲイルさん。お元気そうで何よりです」
「シズト様のおかげです」
「僕は大した事はしてないですよ」
ちょっとタカノリさんに仕事を手伝ってもらっているだけだ。
むしろタカノリさんにミスティア大陸の転移門の設置の可否とか丸投げしちゃってるから随分と助けられている。
タカノリさんや身内のエルフたち以外の人からの話を聞いてみたいと思っていたところだけど、今回はアビゲイルさんもまた他国の使者としてここにやってきているのでほどほどにしておこう。
視線を彼女からダークエルフの女性を見ると、その女性はゆっくりとした動作でお辞儀をした。
「ノルマノン国の公爵家の娘ジャンヌ・マルトノですわ。あの有名な邪神を討伐せし英雄様にお会いできるなんて光栄の極みです。気軽にジャンヌとお呼びください」
妖艶に微笑んだ彼女はエルフとは異なり、女性らしい体つきをした人だった。
長身……というわけではないのか? 分からないけれど、僕と同じくらいの背丈で、腰回りはきゅっと細いのに胸とお尻が大きかった。
流石にランチェッタさんやレヴィさんほどではないけれど、ついつい視線が行くくらいには大きい。
ドレスもその体のラインを強調するようなものだし、胸元は大きく開いているタイプなのでどうしても視線がそこに行きそうになってしまう。
そういうのは目線で分かるってラオさんたちが前教えてくれたので気を付けないと。
視線をさらに横に移動させると小柄な女性がぺこりと頭を下げた。
「ルンベルク国ロンメル公爵の娘、エルメンガルト・ロンメルです! エルガルとお呼びください!」
彼女の元気いっぱいの声は外にも聞こえたんじゃないだろうか、と思うくらい大きな声だった。
人族の少女のような体型の彼女は、ドワーフ族の女性で成人済みだそうだ。いわゆる合法ロリ、的なあれだ。
他の女性陣と比べても身に着けている宝飾品が多い。それらに視線を向けているのに気づいたエルメンガルト様はにぃっと歯を見せて笑った。
「流石シズト様、お目が高いです! こちらの指輪は宝石職人が丹精を込めた逸品で――」
「エルガル様、まだ自己紹介が終わっていない方がいらっしゃるのでお話は後程でお願いできますか?」
「これは失礼しました!」
アビゲイルさんに注意されたエルメンガルト様はこれまた元気いっぱいな声で謝罪をすると、スンッと静かになった。
「最後は私ですね。ギャンバラから来ましたレベッカ・ガルムステットです。シズト様は我が国のゲームに興味がおありの様でしたのでいくつか持参いたしました。また後程お話しできたらと思います」
遊戯と賭けで有名な国の女公爵さんは、真面目そうな見た目の人だった。
スーツとか着たら似合いそうな女性で、丸眼鏡をかけているランチェッタさんとは別の意味で眼鏡が似合っていた。可愛い系ではなくカッコいい系、的な?
今回の使者たちの軽い自己紹介が終わった。
ランチェッタさんとレヴィさんも僕に視線を向けてきた。大丈夫、分かってます。
「本日はお越しいただきありがとうございます。音無静人です。音無は家名なので静人とお呼びください。……えっと、どうぞおかけください」
緊張して頭が真っ白になっても大丈夫なように最初の挨拶は必要最低限にしておいたけど、普通に覚えていた。
僕が姿勢に気をつけながら椅子に腰かけると、他の人たちも練習していたのかと思うほど、ほぼ同時に席に着いた。
さて、どうしたものか、と考えながら同じ円卓の席についているランチェッタさんの様子が気になって視線を向けると、目が合った彼女はそのまま目線を僕の頭の上に向けた。
「あ! えっと、この子は僕の子じゃなくてドライアドのレモンちゃんです」
「レモン!」
「大人しくしているので気にしないでください」
「レモン……」
「……大樹海に現れると言われているものと一部分だけ似ていますが、やはり違いますね」
大人しくなったレモンちゃんを見ながら最初に発言したのはジャンヌさんだ。ジャンヌと聞くとジャンヌダルクのイメージが強いから家名がイメージに引きずられないように気を付けないと。
「大樹海にもドライアドと似た何かが出るんですか?」
「はい。大樹海と接している国々では似たり寄ったりの話が散見されるので恐らく実在する何かはいるんだと思います。それが何なのか、いろいろ推測はされていますが今は精霊もしくは魔物の一種ではないかという考えが主流です」
「なるほど。ドライアドが似ているってどこら辺が似ているんですか?」
「そうですね。主に頭のてっぺんに花が咲いている、という所ですね。大きさが違いすぎるので別の物だと思いますが、他の大陸で似たような存在がいると聞いていたので一度見て見たかったんです」
「…………なるほど。ちなみに、大きさはどのくらいなんですか?」
「そうですね。話によって差はありますが、平均すると大体私たちと同じくらいだと思います。あと、頭の上に咲いている怪しげな花よりも、肌の色が緑色なのが特徴的ですね」
「…………なるほど」
それもドライアドです、と言いそうになったけど、どういう存在として伝わっているか分からない以上、ここでは言わない方が良いだろう。
そう考えて出かかった言葉を飲み込んだ。
「お久しぶりです、シズト様。アビゲイル・バンフィールドです。夫のタカノリがいつもお世話になっております」
そう言いながらぺこりと頭を下げたのはアビゲイルさんだ。
人族の女性で、人形のように整った顔立ちをしている。
二十代前半くらいにしか見えないけど、彼女にも子どもはいる。
……いや、こっちの世界だと二十代前半でも子どもがいるのは不思議ではないのか。成人年齢が十五歳だし。
「お久しぶりです、アビゲイルさん。お元気そうで何よりです」
「シズト様のおかげです」
「僕は大した事はしてないですよ」
ちょっとタカノリさんに仕事を手伝ってもらっているだけだ。
むしろタカノリさんにミスティア大陸の転移門の設置の可否とか丸投げしちゃってるから随分と助けられている。
タカノリさんや身内のエルフたち以外の人からの話を聞いてみたいと思っていたところだけど、今回はアビゲイルさんもまた他国の使者としてここにやってきているのでほどほどにしておこう。
視線を彼女からダークエルフの女性を見ると、その女性はゆっくりとした動作でお辞儀をした。
「ノルマノン国の公爵家の娘ジャンヌ・マルトノですわ。あの有名な邪神を討伐せし英雄様にお会いできるなんて光栄の極みです。気軽にジャンヌとお呼びください」
妖艶に微笑んだ彼女はエルフとは異なり、女性らしい体つきをした人だった。
長身……というわけではないのか? 分からないけれど、僕と同じくらいの背丈で、腰回りはきゅっと細いのに胸とお尻が大きかった。
流石にランチェッタさんやレヴィさんほどではないけれど、ついつい視線が行くくらいには大きい。
ドレスもその体のラインを強調するようなものだし、胸元は大きく開いているタイプなのでどうしても視線がそこに行きそうになってしまう。
そういうのは目線で分かるってラオさんたちが前教えてくれたので気を付けないと。
視線をさらに横に移動させると小柄な女性がぺこりと頭を下げた。
「ルンベルク国ロンメル公爵の娘、エルメンガルト・ロンメルです! エルガルとお呼びください!」
彼女の元気いっぱいの声は外にも聞こえたんじゃないだろうか、と思うくらい大きな声だった。
人族の少女のような体型の彼女は、ドワーフ族の女性で成人済みだそうだ。いわゆる合法ロリ、的なあれだ。
他の女性陣と比べても身に着けている宝飾品が多い。それらに視線を向けているのに気づいたエルメンガルト様はにぃっと歯を見せて笑った。
「流石シズト様、お目が高いです! こちらの指輪は宝石職人が丹精を込めた逸品で――」
「エルガル様、まだ自己紹介が終わっていない方がいらっしゃるのでお話は後程でお願いできますか?」
「これは失礼しました!」
アビゲイルさんに注意されたエルメンガルト様はこれまた元気いっぱいな声で謝罪をすると、スンッと静かになった。
「最後は私ですね。ギャンバラから来ましたレベッカ・ガルムステットです。シズト様は我が国のゲームに興味がおありの様でしたのでいくつか持参いたしました。また後程お話しできたらと思います」
遊戯と賭けで有名な国の女公爵さんは、真面目そうな見た目の人だった。
スーツとか着たら似合いそうな女性で、丸眼鏡をかけているランチェッタさんとは別の意味で眼鏡が似合っていた。可愛い系ではなくカッコいい系、的な?
今回の使者たちの軽い自己紹介が終わった。
ランチェッタさんとレヴィさんも僕に視線を向けてきた。大丈夫、分かってます。
「本日はお越しいただきありがとうございます。音無静人です。音無は家名なので静人とお呼びください。……えっと、どうぞおかけください」
緊張して頭が真っ白になっても大丈夫なように最初の挨拶は必要最低限にしておいたけど、普通に覚えていた。
僕が姿勢に気をつけながら椅子に腰かけると、他の人たちも練習していたのかと思うほど、ほぼ同時に席に着いた。
さて、どうしたものか、と考えながら同じ円卓の席についているランチェッタさんの様子が気になって視線を向けると、目が合った彼女はそのまま目線を僕の頭の上に向けた。
「あ! えっと、この子は僕の子じゃなくてドライアドのレモンちゃんです」
「レモン!」
「大人しくしているので気にしないでください」
「レモン……」
「……大樹海に現れると言われているものと一部分だけ似ていますが、やはり違いますね」
大人しくなったレモンちゃんを見ながら最初に発言したのはジャンヌさんだ。ジャンヌと聞くとジャンヌダルクのイメージが強いから家名がイメージに引きずられないように気を付けないと。
「大樹海にもドライアドと似た何かが出るんですか?」
「はい。大樹海と接している国々では似たり寄ったりの話が散見されるので恐らく実在する何かはいるんだと思います。それが何なのか、いろいろ推測はされていますが今は精霊もしくは魔物の一種ではないかという考えが主流です」
「なるほど。ドライアドが似ているってどこら辺が似ているんですか?」
「そうですね。主に頭のてっぺんに花が咲いている、という所ですね。大きさが違いすぎるので別の物だと思いますが、他の大陸で似たような存在がいると聞いていたので一度見て見たかったんです」
「…………なるほど。ちなみに、大きさはどのくらいなんですか?」
「そうですね。話によって差はありますが、平均すると大体私たちと同じくらいだと思います。あと、頭の上に咲いている怪しげな花よりも、肌の色が緑色なのが特徴的ですね」
「…………なるほど」
それもドライアドです、と言いそうになったけど、どういう存在として伝わっているか分からない以上、ここでは言わない方が良いだろう。
そう考えて出かかった言葉を飲み込んだ。
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